Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、トヨタ・ランドクルーザー コマーシャル(ランドクルーザー250 バン)のレビューです。


Land Cruiser

これは車のレビュー記事なのだが、最初にマッシュポテトについて語らせてほしい。私のレシピを真似すれば美味しいマッシュポテトが作れるはずだ。似た作り方をしている人も多いだろう。まずジャガイモを柔らかくなるまで塩茹でする。次に塊がなくなるまで手でジャガイモをほぐす。そして牛乳とバターを加えて皿に盛り付け、グレイビーソースをかける。これは間違いないレシピだ。実際、このレシピ通り作ったマッシュポテトで不味いと文句を言われたことはない。

ただし、レストランでこのマッシュポテトを出すことはできない。それなりの値段で提供するためには、複雑な作り方をしてシェフの手腕を見せつけなければならない。しかし、どうやったらマッシュポテトを複雑化できるのだろうか。

普通のジャガイモは使えない。ユーコンゴールドやラ・ラットなどのよくわからない品種を選び、我々が普段使うような調理器具も避ける。普通のマッシャーの代わりに布を使ったりタミという謎の調理器具を使う。誰も「タミ」を知らないので、これを使うことで凄い料理であるかのように演出することができる。

うっかり先走ってしまったが、この調理器具を使う前から違いを出す必要がある。まずジャガイモの皮を剥き、その皮を40分間煮る。その後、この皮の泥が溶けた湯を使ってジャガイモを70℃で30分間煮る。それから誰も聞いたことのない謎の調理器具を使ってマッシュし、250gのバターと成分無調整牛乳1カップを加える。こうして、140ポンドの値札の付いたマッシュポテトが完成する。

こんな話をしたのは、自動車業界でも同じようなことが起きているからだ。ごく平凡な車に高い値札を付けるため、実際のところ誰も必要としていないような大量の装備が追加されている。

interior

ここで今回の主題であるトヨタ・ランドクルーザーの話に移ろう。以前に同じ車をレビューしたことがあるのだが、そのときはあまり高く評価しなかった。ランドクルーザーは昔ながらの車軸懸架とラダーフレーム構造という昔ながらのレシピで作られた堅牢な車だ。しかしトヨタはそんなランドクルーザーをユーコンゴールドのレザーで装飾し、製造現場にはタミを取り入れた。その結果、ダイヤモンドで飾り付けたサンダルのような車ができた。前回乗ったランドクルーザーの価格は7万5000ポンドだった。馬鹿げている。

ところが先週、トヨタは私のもとに約2万5000ポンド安い仕様を届けてきた。それはランドクルーザーコマーシャルというモデルで、リアシートすら付いていない。座席の後ろには鉄製の網が装備され、その先には広大な空っぽの空間が広がっている。カーペットすら存在しない。羊の死体だろうが躊躇なく置くことができる(実際置いた)。

リアの窓は鉄板で覆われており、まさにバンそのものだった。最初はそれが魅力的に思えたのだが、斜めの合流で後側方がまったく確認できなかったため考えを改めた。バンに乗っている人は合流の際どうしているのだろうか。全員事故死していてもおかしくないと思うのだが。

オフロード性能はどうだろうか。私にはこれまで世界各地を旅してきた経験があるのだが、ランドクルーザーで行けない地形など思いつかない。私の知る限りのすべてのオフロード用装備が揃っている。デフロック、副変速機、ヒルディセントコントロール。それに、タイヤは本物のオフロード用だ。トヨタの伝説的な信頼性も考慮すると、ジャングルや砂漠で遭難したときに選ぶならランドクルーザーに違いない。

舗装路では話が変わってくる。2.8Lのディーゼルエンジンは滑稽なほどやかましく、そのうえ非力だ。最高出力はわずか204PSで、最高速度は164km/hだ。30年前のレンジローバーより遅い。ボディとシャシは別体で、中世の牛車と同じサスペンションを使っているため、乗り心地には落ち着きがなく、不快感を覚えることも多々ある。体幹を鍛えるのには良いかもしれないが、決して快適とは言えない。

luggage

以前に試乗した革張りの5人乗り上級グレードも同じ問題を抱えていた。この問題があったので私はランドクルーザーを好きになれなかった。けれど、オフロード仕様のバンだと考えればこういった特性も受け入れることができる。コーナーは無理やり曲げて、坂はアクセル全開で登っていく。揺れようが唸ろうが当然だ。これは働く車なのだから。劇場に乗り付けるための車などではない。ヘストン・ブルメンタールのマッシュポテトではなく、私のマッシュポテトなのだ。

とはいえ、改善の余地もある。このようなブルーカラー向けの車にパワーシートなど必要ないはずだ。それに、自動車史上最も過保護な安全装備を付ける必要がどうしてあるのだろうか。

以前にも書いたことがあるが、トヨタの車はメーター内に「姿勢を正して運転してください」といった馬鹿げたメッセージを表示することがある。「ドライバーが目を閉じていることを検知しました」という表示が出ることもあるのだが、それが事実だとしたら文字で警告を表示することに何の意味があるのだろうか。警報音を鳴らすべきではないだろうか。一方、トヨタ車は音量を上下するだけでも音で知らせてくれるのだが、そんな音を鳴らさなくても音量が大きくなったかどうかは聞けば分かる。もっと面白いのは「ドライバーの顔を検知できません」というメッセージだ。それを見て私はどうすればいいのだろうか。足元に生首が落ちていないか確認したほうがいいのだろうか。

こういった安全装備はどれも必要のないものだし、まして質実剛健な仕事用のバンになど必要なはずがない。こんな装備などなくしてしまったほうがいい。同様に、電動のレザーシートやパワーテールゲートをはじめとした諸々の「贅沢品」も排除するべきだ。そうして価格を4万ポンド未満に抑えられれば、この車の魅力は大きく増すことだろう。

私は何年も前にカリフラワーチーズを作ったことがある。カリフラワーを茹でてチーズをかけ、それを焼いた。ところがそれを盛り付ける直前、友人のA.A.ギルがひとつまみのナツメグを振りかけた。たとえナツメグが好きでも(私は嫌いだが)これは余計だ。カリフラワーチーズが食べたいとき、食べたいのはカリフラワーとチーズだけだ。他には何もいらない。そこに何かを加えてしまえば、食べたかったものの風味を損なってしまううえに、材料費も余計にかかってしまう。だからトヨタよ、私の助言を聞いてほしい。ナツメグなんて捨ててしまえ。


The Clarkson Review: Toyota Land Cruiser Commercial — nearly quite something