Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。
世界中の既存の自動車メーカーが極めて厳しい状況に立たされていることは誰もが知るところだ。電動化したミリバンドの世界において、中国企業に対抗していくのは非常に困難だ。
中国はアフリカの広範囲を支配しているため、バッテリーの製造に必要な材料を容易に入手することができる。しかも、中国には10億人以上の人がおり、中国人はメンタルヘルスの問題で週に3日休むこともない。
中国勢力の攻勢から逃れる唯一の方法は、高級志向へのシフトだと考えられている。中国人はコバルトやリチウムの鉱山は所有していても、欧米人や日本人、韓国人が持つデザインセンスやクラフトマンシップは(現時点では)持っていない。
中国に対抗するためには、ベリリウムとミルラで車を作り、内装はルビーと孔雀の羽根で装飾する必要がある。あちこちの空港のターミナルで目にする不快なブランドのようになる必要がある。ラルフローレン、トム フォード、プラダ。中国人はこういったブランドには対抗できない。
しかし、こういった手法はマセラティやフェラーリやロールス・ロイスなら有効なのだろうが(そして実際ジャガーはこの手法にすべてを賭けている)、ヴォクスホールなどのブランドにこの手は通用しないだろう。たとえクジラの皮とパンダの毛皮が使われていたとしても、コルサに50万ポンドを払おうとする人など存在しない。
つい最近まで、フォードやホンダ、フィアット、プジョーなどの大衆ブランドは破滅する運命にあると確信していた。しかしそんなある日、私のもとにルノー 5がやってきた。そしてまだ希望が残っていると知った。
過去の名車が復刻された例は他にもある。ミニもそうだし、フィアット 500もそうだ。どちらも大成功している。しかしルノーは、1970年代の名車を、電気自動車というまったく新しい形で復活させた。

私のマネージャーは過去25年間、私に貸し出された試乗車に興味を持ったことは一度もなかった。ところが、今回ばかりは興奮しながら過去の思い出を語った。昔は毎年、友人と一緒にルノー 5に乗ってアルプスにスキー旅行に出かけていたそうだ。当時は誰もがそうだった。
実際、新型ルノー 5で街を走ると、ある年代以上の人たちは誰もが大興奮していた。もし私が乗っていたのが中国車のBYD ドルフィンだったら、そんなことは決して起こらない。
ルノー 5は見た目が良く、多くの人々を魅了する車だ。ここで重大な疑問が生じる。この車は「良い車」なのだろうか。結論から言うと、答えはイエスだ。
まず価格が安い。価格は22,995ポンドなのだが、そこからさらに3,750ポンドの補助金が引かれる。政府は食料品に補助金を出す余裕はないらしいのだが、どういうわけか電気自動車にはたっぷりの補助金が出る。ただしテスラは例外で、イギリス政府はイーロン・マスクが嫌いらしく、テスラには補助金が出ない。
だからといって、ルノー 5が安物のレプリカというわけではない。パリの露天で1ユーロで買えるエッフェル塔の模型とは違う。質感も非常に高く、特に走りはフォルクスワーゲンに近い。
そもそも私は電動車が好きではないので、電気自動車を買うつもりもない。しかし、ルノー 5は他の電気自動車とは違う。私がこれまで運転してきた電気自動車はどれも、アクセルを踏んだ瞬間だけむち打ちするほどの加速を見せ、そこから先は虚無だった。しかしこの車は本物のエンジンを積んだ車のように走る。
静粛性は高く、路面が悪いところを走っても壊れそうな感じはしない。この点は昔のルノー 5とは全く違う。それに、昔の5はゼリー職人が作っているのかと思うほどフニャフニャだったのだが、新型は違う。決して硬いわけではないのだが、ふらつくようなこともない。至って普通の、常識的な車だ。

良いところは他にもある。最近の車らしく、この車にもヒステリックに鳴り響く多種多様な警報装置が付いているのだが、新型5には2回押すとすべての警報をオフにできるスイッチが付いている。内装も魅力的で、デザインには活気があるし、エアコンはタッチスクリーンではなく物理スイッチで操作することができる。
そろそろ航続距離や電動システムの詳細について説明するべきなのだろう。なのでちゃんと言及しておくと、この車にはある程度の容量のバッテリーが搭載され、車重はそれなりにあり、ブレーキペダルとブレーキは物理的には繋がっていない。他には双方向充電とやらにも対応しているらしい。よく分からないが、2つの方向から(おそらく同時に)充電することができるのだろう。しかしそんなことよりも、個人的には車に近付いたときにヘッドライトが挨拶の演出をしてくれる機能のほうが重要だ。
この車の本当の意味での唯一の欠点は、ガソリンエンジンを搭載する仕様が存在しないことだ(高性能なアルピーヌ版も電気自動車だ)。他に後部座席が狭いという欠点もあるのだが、これには解決策がある。というのも、ルノーが5の試乗車を回収しに来たとき、同じモーターを搭載した内装も全く同じ別仕様の車を代わりに置いていった。その見た目は昔のルノー 4を復刻したものだった。
昔のルノー 4は5ほど見た目が良くなかった。なので、新型のルノー 4では見た目の悪さを改善するために手が加えられているのだが、そのせいで個性も失ってしまっている。ただ、ボディサイズは5より大きく、室内も広いので、その点は魅力的かもしれない。
リサもルノー 4を気に入ったようだった。もっとも、彼女は車選びのセンスがあるわけではない。かつてアウディ Q5を気に入って乗っていたことからもそれは明白だ。それはともかく、1970年代に彼女の父親がダブリンでルノー 4に乗っていたこともあり、父を思い出させる新型ルノー 4にべったりだった。
同じように成功できる車はあるだろうか。シトロエンはきっと2CVの電気自動車版を開発しようとしているのだろうし、500にさんざん助けられたフィアットはパンダのミリバンド仕様を開発するべきだろう。現代版アルファ ロメオ・スパイダーなどが出たら人気が出るに違いない。
これらが成功したら、中国企業は自身が傘下に収めた欧州ブランドを使って反撃しようとするはずだ。しかし、オチはなんとなく読める。中国製のオースチン・アレグロEVが満を持して登場、とか、モーリス・マリーナがついに復活、とか。


この話題における,当の欧州人の感覚が知れたのは面白かったです
まあそれはいずれにせよ,あのジェレミーが電気自動車を気に入ったのは意外でした.ちょっと気になる一台ですね
auto2014
が
しました