Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのジェームズ・メイがに英「The Sunday Times」に寄稿した、自身の愛車であるテスラ・モデルS 100D ロングレンジのレビューを紹介します。


Model S

私はテスラ信者ではない。私は愛車であるモデルS 100D ロングレンジを気に入っているし、電気自動車にはたくさんの魅力がある。静かでランニングコストが安く、非常に先進的で、魔法でも使っているのかと思うことさえある。ただ、欠点が見えなくなるほど盲目的に好きなわけではない。

もう一台の愛車であるトヨタ MIRAIと比べると作りが悪く、「新しさ」だけを売りにした車のように感じることもある。モデルSはイギリスで乗るには大きすぎるし(そういう意味ではモデル3のほうが合っていたのだろう)、ボディカラーの選択肢は今の基準で考えても少なすぎる。

それでも私がモデルSを選んだのは、現在販売されている電気自動車の中で最も航続距離が長いからだ。ガソリン車を選ぶとき、その基準は千差万別なのだが、電気自動車を買う理由は、それが電気自動車だからに他ならない。そして、電気自動車では航続距離こそが悩みの種となる。

しかし、そこまで航続距離を気にする必要などあるのだろうか。テスラ信者いわく、ほとんどの人はそれほど長距離を運転しないので、むしろ夜間に自宅で充電することで維持費を削減できるうえに、ガソリンスタンドに行く必要もなくなるという。もし長距離移動をすることになっても、トイレに行ったりチーズバーガーを食べたりしている間に、テスラの優秀なスーパーチャージャーで十分量の充電をすることができるそうだ。これは一見正論のように思えるのだが、実際は違う。

この理屈だと、充電が必要になる地点にスーパーチャージャーがなければならないのだが、そんな都合のいい状況はほぼありえない。イギリスにスーパーチャージャーはほとんどなく、必要な場所に設置されているとも限らない。それ以外の公共の充電設備は充電速度が遅いし、どちらにしても数が少ない。

持ち家があって通勤に車を使う人であれば、電気自動車を選択するのが合理的だ。しかし、国中を移動する百科事典の営業マンはどうだろうか。そんな人が電気自動車を買ったら、移動が最短経路ではなくなり、常にスーパーチャージャーを意識して道を選ばなければならなくなってしまう。

例えば、ウェールズでテスラに乗るのはかなり大変だ。私のテスラの場合、普通の家庭用コンセントでしか充電できない状況になってしまったら、満充電まで2日かかる。

航続距離の短い電気自動車の場合、どこでも短時間で充電できるなら大きな問題は起こらないのだが、少なくとも現時点ではそれは不可能だ。そのため我々は航続距離の長い電気自動車を求める。しかし実際のところ、問題となるのは航続距離ではない。送電網の容量や発電源でもない。重要なのは充電技術とインフラだ。

ガソリン車にもかつて同じような問題があった。需要と供給がうまく釣り合わなければこの問題は解決できない。電気自動車への移行が自動車業界にとって前進であることは間違いない。しかし、既に電気自動車を普及させられる時代になったと考えるのは早計だ。電気自動車に乗っていると、β版のテストユーザーになったような気分になる。