米国「Motor1」によるトヨタ RAV4プライム(RAV4 PHV)の試乗レポートを日本語で紹介します。


RAV4 Prime

RAV4には7種類のグレードが存在し、質素な「LE」から本格派のTRDまで選択肢は豊富にある。しかも、新たにRAV4プライムが追加されたことでグレード選びがさらに悩ましくなった。

新しいハイブリッドのRAV4に試乗し、その完成度の高さに驚いてしまった。見た目も走りも良く、万能な車だ。しかもプラグインハイブリッドのプライムはシステム出力306PSで、バッテリーのみで68km走行でき、価格は38,000ドルからと十分納得できる。そもそも優秀なRAV4がプラグインハイブリッドとなったことでさらに魅力的になっている。

スペック的にRAV4プライムと通常のRAV4ハイブリッドは似ている。いずれも共通の2.5L 4気筒エンジンと2基(前輪用と後輪用)のモーターを搭載している。しかし、プライムには18.1kWhのリチウムイオンバッテリーが搭載され、標準ハイブリッドの1.6kWhとは雲泥の差だ。これによってシステム出力は222PSから306PSまで大幅に向上しており、事実相当に速い。

アクセルをわずかに踏むだけで前後のモーターから即座にトルクが発揮され、その後エンジンの力が後押しする。スポーツモード(ハイブリッド走行)では0-100km/h加速5.7秒を記録している。驚くべきことに、RAV4プライムはトヨタの現行車の中ではスープラ(0-100km/h加速3.9秒)に次いで2番目に速い。バッテリーのみで走行したい場合はEVモードも選択できるのだが、こちらはそれほど速くはなく、0-100km/h加速は9.2秒かかる。

ただし、RAV4には大容量のバッテリーが搭載されており、2.5Lエンジンも軽くはないので、RAV4プライムはそれなりに重い。試乗した「SE」は1,921kgで、より装備の充実した「XSE」は1,950kgを超える。ちなみに、2WDのフォード・エスケープ プラグインハイブリッドは1,762kgだ。

もっとも、車重はそれほどハンドリングに悪影響を及ぼしていない。コーナリング性能は標準のRAV4とほとんど変わらず、そこそこの性能だ。ロールはある程度あるし、乗り心地も多少悪いのだが、ステアリングの重さは適度だし、タイトコーナーでのサスペンションの応答性も高い。重量増に対処するため、ステアリングやサスペンションは微調整されているらしいのだが、明らかに感じ取れる違いはなかった。

RAV4プライムの加速性能はかなり高いのだが、この車の魅力はそれだけではない。大容量バッテリーのおかげで最高135km/hまでバッテリー単独で走行することができる。ガソリン車換算で38.3km/Lという燃費を実現しており、航続距離は966kmだ。ちなみに、エスケープ プラグインハイブリッドの燃費は換算42.5km/Lなのだが、モーターのみだと60kmしか走行できない。

rear

基本的にEVモードだと普通の電気自動車を運転しているような感覚だ。加速は滑らかで静粛性も高く、車内に聞こえてくるのはわずかな風切り音やタイヤノイズだけだ。

通常のRAV4同様、プライムにも4種類の走行モード(エコ、ノーマル、スポーツ、トレイル)が存在する。さらに、HV/EVオートモードを選択するとハイブリッドモードとEVモードが自動で切り替わり、チャージホールドボタンを押すとドライバーがEVとHVを任意で選択できる。また、停車中にこのボタンを長押しするとエンジンがバッテリーの充電を開始する。

オートモードでもハイブリッドモードとEVモードの切り替えはシームレスだ。エンジンの始動は滑らかで静かだし、エンジンが動いているのか分からないことも多々ある。7インチディスプレイには駆動状況が表示されるため、どのモードなのかは常に知ることができる。他にも航続距離や走行距離、燃費などが表示される。

バッテリーのみで走れる68kmを走りきってしまった場合、3種類の充電方法がある。3.3kWの充電器を通常の家庭用120V電源に繋いで充電することもできるが、この場合は充電完了まで12時間かかる。240V電源に繋いだ場合は4時間半で充電することができる。さらに早く充電したい場合、オプションの6.6kW充電器(3,765ドルのプレミアムパッケージに含まれる)を使用すれば240V電源での充電時間が2時間半まで短縮する。

試乗車には標準の3.3kW充電器が装備されていた。0.79ドル/kWhの充電ステーションで2時間近く充電したところ、航続距離は21km増加し、費用は2.57ドル(駐車料金3ドルを除く)だった。21kmは少ないと感じる人もいるだろうが、それだけでもマイアミ中心部からサウス・ビーチまで行くことができる。

見た目はRAV4プライムと通常のRAV4でほとんど変わらない。テールゲートには赤い「PRIME」のロゴがあり、ホイールデザインも専用となっているほか、縦長のLEDフォグランプも装備される。しかし、もともとのRAV4自体デザインが魅力的なので、変更点が少ないことはむしろ喜ぶべきだろう。

センターコンソールの走行モードボタンを除いて、内装にもRAV4プライムと標準のRAV4に違いはほとんどない。試乗車のSEはファブリックシートを装備しており(XSEはフェイクレザー)、ステアリングやシフトレバーにはレザーが採用され、ドアパネルやセンターコンソールにはソフトな素材が使われている。通常のRAV4同様、居心地は良い。快適で広いし、静粛性も高い。プラグインハイブリッドなので標準車以上に静かだ。

interior

SEには8インチのセンターディスプレイが標準装備される。Apple CarPlay, Android Auto, Amazon Alexaに標準で対応しており、Wi-Fi機能もある。XSEはディスプレイサイズが9インチとなるのだが、実用上はそれほど大きな違いはないだろう。

8インチディスプレイはホーム画面が整理されており、グラフィックも鮮明でタッチに対する応答性も良好だ。Qi規格のワイヤレス充電器はXSEのみに装備される。SEだとオプションでも選択できない。

SEで装備できる唯一のオプションは1,665ドルのウェザー&ムーンルーフパッケージだけだ。このパッケージオプションにはステアリングヒーター、雨滴感知式ワイパー、リアシートヒーター、そしてムーンルーフが含まれる。XSEにはオプションが豊富に用意され、1,625ドルのオーディオパッケージ(JBLオーディオシステム)や3,765ドルのプレミアムパッケージ(6.6kW充電器、ヘッドアップディスプレイ、ハンズフリーテールゲート)も選択できる。

ただし、オプションを装備しすぎるとかなり高くなってしまう。ベースグレードのSEは38,100ドルなのだが、試乗車は39,765ドルの仕様だった。また、XSEは41,425ドルなのだが、オプションを満載にすると47,000ドルを超えてしまう。

RAV4プライムは7,500ドルの税控除対象車なので、実質的には額面より割安に購入することができる。この点も考慮すると、RAV4プライムを買わない理由が見つからない。ただし、トヨタによるとRAV4プライムの初年度生産台数はわずか5,000台らしいので、欲しいなら急いだほうがいいだろう。

RAV4を購入して間違いはないだろう。RAV4は非常に万能なクロスオーバーSUVだ。中でもRAV4プライムは特に魅力的だ。最も高性能で、最も航続距離が長く、充電時間もそれほど長くはない。ベースグレードでも装備は充実しているし、走りも非常に優秀だ。RAV4プライムは自信を持っておすすめできる車だ。


2021 Toyota RAV4 Prime First Drive Review: Plug And Play