Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのリチャード・ハモンドが英「Top Gear」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、BMW 3.0 CSLの試乗レポートです。


3.0 CSL

これは改造車好きのための車だ。派手な装飾やスポイラーが好きな人にはBMW 3.0 CSL「バットモービル」がぴったりだ。フロントフェンダーには空気穴も装備されている。しかし、この車の真の見どころはそこではない。

見た目はまるで12歳の少年の落書きのようなのだが、中身は至って真剣だ。鼻メガネをかけた道化師かと思いきや、その中身は大物政治家だ。

その派手な見た目には(ストライプは別として)それぞれにちゃんと理由がある。エアロパーツのおかげで200km/hで90kgのダウンフォースを発生する。ウイングを設計したのはフォードから引き抜かれた技術者だ。この車は宿敵フォード・カプリに勝利するために開発されている。要するにこれはホモロゲーションモデルであり、1,039台しか製造されていない。

モノコック構造は薄い鋼板で作られており、ボンネットはアルミ製となっている。ただし、トランクリッドはリアウイング装着のためにスチール製となっている。他にも軽量化のため、カーペットやパワーステアリング、パワーウインドウ、遮音材は省略されている。

要するにこれは道化師などではない。これが3.0 CSLのひとつ目の見どころだ。

もうひとつの見どころが走りだ。車の生い立ちから、生々しくて激しく、そして刺々しい走りを想像するのだが、実際は違う。この車はかなり楽しい。

rear

外装パーツはあまりに大きく、車内からでも確認できる。これも楽しいポイントなのだが、それ以上に驚きなのが乗り心地だ。ベース車がアウトバーンのクルーザーなだけあって、この究極モデルでもその本質は残っており、乗り味は滑らかで洗練されている。

3.0 CSLの最終モデルは排気量が3.0Lから3.2Lまで増加しており、心地良い音とともに伸びやかに加速していく。まるでタービンのようだ。

しかし、完璧というわけではない。コーナーでは少し不安定で、ロールも発生する。もっとも、36年前の車なのでショックアブソーバーがヘタっているのは間違いないだろう。けれど、これが新車として工場から出荷された1973年当時も、エリーゼのような足だったとは思えない。ちなみに新車価格は6,399ポンドで、当時はイギリスの住宅価格平均が10,990ポンドだった。

とはいえ、現代の基準で考えても決して遅くはない。0-100km/hは6.8秒で、最高速度は219km/hだ。それでも、やはり昔ながらの高級クーペ的な雰囲気を感じる。ターボはないし、ギアは4段しかないし、駆動輪は後輪だけだ。ただ、乗り心地が良く変速も滑らかなので快適性は高い。

BMW 3.0 CSLは伝説的な車でありながらも日常的に乗り回すこともできる。もっとも、かなり希少で高価な車なので、相当肝が据わっていなければそんなことはできない。


Richard Hammond drives the BMW 3.0 CSL ‘Batmobile’