米国「MOTOR TREND」によるトヨタ・センチュリー(1992年式)の試乗レポートを日本語で紹介します。


Century

1964年、トヨタは2.6LのV8エンジンを搭載する4ドア高級セダン、クラウンエイトを発売した。クラウンエイトは海外(アメリカ等)製の高級セダンに対抗する日本車として誕生した。日産もそれに対抗し、1965年には皇室での使用も考慮して開発されたプレジデントが誕生した。そして1967年、トヨタはプレジデントに対抗するべく、センチュリーを発売した。

初代センチュリーはクラウンエイトがベースとなっており、当初は3.0LのV8エンジンを搭載していた。その後、1973年には排気量が3.4Lに、そして登場から15年目となる1982年には4.0Lに拡大された。初代センチュリーはここからさらに15年間販売が続けられ、1997年にようやくV12エンジンを搭載する2代目モデルへとバトンを渡した。

アメリカ国内にあるセンチュリーなどせいぜい20台くらいだろうし、その数少ないオーナーの中に他人に運転することを許すような人間などそうそういないだろう。ところが、今回はなんと、1992年式の初代センチュリーを1日貸してくれるオーナーに巡り会うことができた。

右ハンドル車であることは別として、ロサンゼルスでセンチュリーを運転するにあたって最大の障壁となるのはフェンダーミラーだ。東京の道路は狭く、昔の日本ではフェンダーミラーが一般的だった。センチュリーを運転するためには、右ハンドルだけでなく、フェンダーミラーにも慣れなければならない。

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ハンドルやミラーの位置の違いを無視すれば、センチュリーの乗り心地や操作性は1972年頃のリンカーンに近い。しかし、リンカーンとは違い、センチュリーは運転するための車ではない。あくまで後部座席の乗員のための車だ。なので、私はセンチュリーのオーナー本人ではなく、その妻から聞いた話を引用することにしよう。

センチュリーは不思議な車ですよ。見た目は穏やかなんですが、かなり目立ちます。周りの車はみんな減速して見つめてくるんです。きっとそれだけ特別な車なんだと思います。

センチュリーに乗ってもうひとつ驚いたのが、どの機能もまったく壊れていなかったという点だ。時計も、燃料計も、照明も、エアコンのスイング機構も、すべて問題なく動いていた。27年前の車でこれほど不具合のない車が他にあったら教えてほしいくらいだ。

あまりにしっかり動いていたので、実力を試したくなってしまった。さすがに無茶な運転はしなかったのだが、かといって適当にお茶を濁すつもりもなかった。さすがに、この年式のセンチュリーはサスペンションもかなりヘタっているだろうし、部品も手に入れづらいので、その点は頭に入れつつも、センチュリーをテストコースへと持ち込んだ。

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初代センチュリーには3種類のホイールベース(2,860mm, 3,010mm, 3,510mm)が存在する。今回運転したのは中間のモデルだ。車重は1,922kgで、当時としてはかなり重い車だったのだが、今の基準で考えるとごく普通だ。

0-100km/h加速は12.6秒を記録した。これは1974年式のフォード・マスタングIIと同じくらいの数字だ。0-400m加速は18.9秒(116km/h)を記録した。はっきり言ってしまうと、遅い。

しかし、そんなことを誰が気にするだろうか。高速道路程度の巡航で遅さを感じることはなかった。遅いというよりはむしろ、ストイックという感想を抱いた。変速も遅いのだが、滑らかだった。かなり穏やかな気持ちで乗ることができる。

100km/hからの制動距離は41.5mだった。タイヤを新品に換えればもっと短くなるだろう。8の字走行のラップタイムは31秒フラットと決して優秀な数字ではなかった。

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ただし、これはあくまで個人所有の昔の車なので、個体差なども考慮しなければならない。今回運転した個体はフロントショックアブソーバーがかなりヤレていたのでかなり跳ねたし、ロールも酷かった。

ブレーキも劣化していたし、そもそもABSすら付いていなかったのでそんなに飛ばせなかったのだが、タイヤを鳴かせることはできた。コーナリング時の挙動はかなり素直だった。右ハンドルだったので妙な感覚はあったのだが、センチュリーで飛ばすのもなかなか面白い経験だった。

なので、タイムを伸ばすためにもう一度チャレンジしようとしてみたのだが、冷静に考えてみよう。そんなものに誰が興味を持つだろうか。


1992 Toyota Century First Test: How Does It Hold Up Today?