米国「Car and Driver」によるキャデラック CTS スポーツワゴン(2010年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。

※内容は2009年当時のものです。


CTS Sport Wagon

アメリカ中でSUVが人気となっている現状を見て、疑問を呈さずにはいられない。どうして完成されたステーションワゴンの重心をあえて高くする必要があるのだろうか。けれどそんな不満など誰にも伝わらず、アメリカ中にフォード・エクスプローラーやその類が溢れかえっている。

ステーションワゴンは魅力的な車だ。重心が高くないので、セダンと比べても運動性能はほとんど変わらないし、それでいてセダンよりも荷物をたくさん載せることができる。にもかかわらず、どういうわけかステーションワゴンはアメリカ人に嫌われがちだ。退屈さの象徴のような存在になっている。

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そんな状況を受け、メーカーは「ワゴン」という名称自体を避けるようになり、代わりに「アバント」、「ツーリング」、「エステート」、「スポーツツアラー」などといった名前を付けるようになっている。しかし、キャデラックはそんな時流に乗ることなく、「CTSスポーツワゴン」を発売した。ひょっとしたら「スポーツ」という単語が次の単語の印象を掻き消すことを期待したのかもしれない。

標準のCTSと違うのはBピラーより後ろだ。車重は1,911kgで、セダンと比べると100kg以上重い。車重増加の理由は、そもそものボディ体積の拡大や補強、電動テールゲートによるものだが、さらに試乗車にはガラスルーフも装備されていた。車重増加は明らかなマイナス点ではあるのだが、重量配分はむしろ改善している。前後重量配分はセダン53.3:46.7に対し、ワゴンは51.4:48.6となる。おかげで後輪の駆動力はしっかりと伝わる。

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試乗車には最高出力308PSの3.6L 24バルブ 直噴V6エンジンが搭載されており、車重の増加は気にならなかった。0-100km/hも7.0秒と決して遅くはないのだが、セダンは6秒だ。キャデラックによると、加速性能の低下には車重増加のほかに重い大径(19インチ)ホイールを装備していたことも関係しているそうだ。また、経済性を向上するためにトルクコンバーターにも手が入っており、こちらも加速性能低下に関係しているかもしれない。

CTSの優秀なハンドリング、ブレーキ、ステアリングはワゴンでも損なわれていない。荷室容量はセダン396Lに対して708L(リアシートを倒した状態では1500L)と大幅に向上しており、荷室にはEクラスワゴンのようなカーペット用のアタッチメントも付いている。

メルセデスとは違い、CTSスポーツワゴンのスタイリングはよりスポーティーだ。個人的にはセダンより恰好良いとすら感じる。価格は40,655ドルからで、セダンよりも3,100ドル高い。試乗車はフル装備で価格は54,635ドルだった。これでもアウディやBMW、メルセデスの競合車と比べると割安だ。しかし、いかにCTSスポーツワゴンが優秀な車であったとしても、SUVに魅入られた大衆を振り向かせるのは難しいだろう。


2010 Cadillac CTS Sport Wagon 3.6