米国「Autotrader」によるシボレー・マリブRS(2019年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。

Malibu RS

シボレーの中型セダン、マリブに初めてスポーティーグレードの「RS」が登場した。RSといえば長らくカマロの代名詞だった。カマロRSはV8エンジンを搭載するカマロSSのような見た目を持ちながらも、V8モデルよりも低価格で購入することができる。

同様に、マリブRSもあくまで見た目優先のグレードだ。マリブは2019年モデルとしてマイナーチェンジが行われ、RSはその際に追加された。マリブRSには専用19インチホイールやブラックグリル、リアスポイラー、デュアルエグゾーストが装備される。RSの見た目は上質感があり、このようなスポーティーグレードにありがちな後付感もない。

残念ながら、見た目以外でマリブRSの特徴はあまりない。実際に運転してみても中間グレードの「LS」との違いは分からない。それが必ずしも悪いわけではないのだが、せめて内装くらいはエクステリアに合わせた独自性を出しても良かったのかもしれない。残念ながらシートもダッシュボードも普通のマリブと変わらない。

とはいえ、価格設定は適切だ。わずか24,995ドルで購入できるため、車格を考えれば十分に安いし、スポーティーグレードであると考えればなおさらだ。見た目だけのスポーティーモデルなのは事実なのだが、性能よりも見た目を重視する顧客にとってはぴったりな車だろう。

rear

マリブRSの走りは決して悪くはないのだが、かといって何か特別感があるわけでもない。試乗車は1.5L 4気筒ターボエンジンに新設計のCVTが組み合わせられていた。優秀なCVTだとCVT車を運転しているということを忘れてしまうのだが、マリブのCVTは加速時にCVTらしさを感じる。

CVTが嫌われる最大の理由である不快な唸りはあるのだが、それでも性能はそこそこあるので、音こそ不快ながらも加速はリニアだ。エンジンの応答性も高く、高速道路での追い越しも不満なくこなせる。燃費性能も高く、今回は平均燃費15km(ただし大半は高速走行)を記録した。

マリブRSにも2.0L 4気筒ターボエンジン搭載モデルがあればいいのだが、残念ながらこのエンジンは最上級グレードの「Premier」にしか設定されない。このエンジンであれば見た目に見合った性能を発揮してくれるだろうし、本物のスポーツセダンと言ってもいいかもしれない。マリブの上級グレードとして、贅沢仕様とスポーツ仕様の2種類があれば選択肢も広がるだろう。

快適性に関しては良い点と悪い点がある。サスペンションは優秀で、乗り心地は十分良好なのだが、シートの座り心地はそれほど良くない。衝撃がシート越しにそのまま伝わってきてしまう。とはいえ、長距離移動では快適だし、ちょっとした悪路なら問題なく走れるのだが、競合車と比べると快適性はごく平凡だ。

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ここで気になるのが、マリブRSが誰向けの車なのかという疑問だ。上述した通り、本物の高性能車は求めない(燃費性能を犠牲にするつもりはない)が、高性能風の見た目を求める人ということになるのだろう。しかし、そんな人達が160馬力のCVT車で満足するのだろうか。

RSグレードはシボレー・クルーズにも設定されている。こちらもマリブ同様に、性能は平凡で見た目だけ特別仕様になったモデルだ。シボレーがマリブにRSを設定したのは、きっとクルーズRSの販売が好調だからなのだろう。ただ個人的には、RSはやはりカマロのための名前であってほしかった。


2019 Chevrolet Malibu RS: First Drive Review