インド「OVERDRIVE」によるブフォーリ・ラホーヤの試乗レポートを日本語で紹介します。


La Joya

1930年代から1940年代、そして1950年代頃にかけて製造されたクラシックカーには芸術的な美しさすらある。流麗なラインを描くボディはかなりコストがかかっており、ディテールまでしっかりデザインされている。

しかし言うまでもなく、このような車を作るのは決して簡単ではない。材料や機材にはお金がかかるし、それだけでなく時間もかかる。しかも、今の時代、安全性や経済性がデザインよりも重視されている。1960年代に入ると大量生産に適した折り紙風のデザインが主流となり、大胆な曲面を描くような車は希少になってきている。

しかし、このような車が絶滅してしまったわけではない。1909年創業のイギリスの自動車メーカー、モーガンは当時の製造手法を頑なに守っている。第二次世界大戦以降、モーガンは見た目はヴィンテージながらも最新式のパワートレインを搭載する車を作り続けている。

モーガンのシャシは木製で、見た目はクラシックカーのように堂々としているのだが、その中に積まれているエンジンは非常に現代的だ。しかし、このような車の需要は限られており、しかもクラシックカー愛好家の中には最新エンジンを嫌うような純粋主義者も多い。けれど、モーガンは変わらず車を作り続けている。

もっとも、今回の主題はモーガンではなく、ほとんど知られていない自動車メーカー、ブフォーリだ。

ブフォーリはオーストラリア系レバノン人のアンソニー・クーリ、ジョージ・クーリ、ジェリー・クーリの3兄弟により1986年に創業した。ブフォーリは1930年代のアメリカンクーペにインスパイアされたメーカーで、モーガン同様、クラシックな見た目の車に現代的なパワートレインを搭載し、少量生産を行った。

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ちなみに、ブフォーリ (BUFORI) の名前はBeautiful(美しい)、Unique(唯一無二の)、Fantastic(幻想的な)、Original(独創的な)、Romantic(ロマンティックな)、Irresistible(圧倒的な)の頭文字を取ったものだ。

ブフォーリはマレーシア王室の興味を引き、王室からの経済支援を受けて1998年に本部をマレーシアに移転した。ブフォーリはマレーシアで、単にクラシックなだけでなく、贅の限りを尽くした車を製造している。そのため、ラホーヤの価格は最も安価なモデルであっても税抜25万ドルもする。

ブフォーリはインド国内の富裕層増加に目を付け、高級クーペの「ラホーヤ」をインドで発売することとなった。ラホーヤとはスペイン語で「宝石」のことで、実際、インド市場で販売される車の中でも特に印象的なモデルだ。ただし、年間販売目標はわずか10台なので、実際に見かける機会はほとんどないだろう。

見た目はヴィンテージなのだが、ボディには最新のカーボンファイバーとケブラーの複合素材が使われているため、ボディは軽量かつ高剛性で曲げにも強い。万が一の事故時にはクラッシャブルゾーンに衝撃を集約させることができ、このクラッシャブルゾーンは簡単に交換することができるので、修理費用も抑えられる。

一見すると、インテリアには外装ほどのインパクトはない。しかし、シートはレカロがブフォーリ用に設計した専用品で、17ウェイの調整が可能で、ロールス・ロイスも目ではない。ただし、ボタンが多いのでどれを押せば何が調節できるのかを理解するためには時間がかかる。

シートの快適さのおかげで、ヒュンダイのようなダッシュボードのこともそれほど気にならない。ダッシュボードのデザインはあまり美しくないし、グリップの太いステアリングやシフトレバーはクラシックな雰囲気を壊している。メーター類は上品なアナログ表示なのだが、ギラギラした木目は上品とは言い難い。

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後付感のないもっと上品なデザインにもできたとは思う。もっとエレガントなギアスティックや光沢の少ない木目パネルを装備するべきだろう。それに、オーディオは自分でカスタマイズできるのだが、エアコンの吹出口はどうしようもない。

インド仕様のラホーヤには250PSのヒュンダイ製3.3L V6エンジンが搭載される。今回試乗したのはインド仕様車ではなく、同じくヒュンダイ製の2.7L V6エンジン(172PS)を搭載するモデルだった。このエンジンはそれほど高性能ではないのだが、200km/hくらいまでであれば快適に運転できる。パワーウェイトレシオがかなり優れているため、0-100km/h加速は8秒を切る。3.3L車の性能はさらに良いはずだ。

エンジンはリアのシートすぐ後ろに搭載されるのだが、遮音がしっかりしているため、車内にエンジン音はそれほど伝わってこない。ただし、グローブボックス内のスイッチを押せばエンジンカバーが開き、V6エンジンの音を楽しむことができる。

ラホーヤはうまく考えられた設計になっており、後ろからのエンジンへのアクセス性が良く、ボルトを6個外すだけで簡単にエンジンを取り外すことができる。5速ATのセッティングもエンジンの性能にしっかり合わせてある。

ラホーヤにはスチールスペースフレームシャシが採用されているため、軽量かつ高剛性で、腐食もしにくい。ホイールはBBS製の17インチで、コンチネンタル製の225/45R17スポーツタイヤを履く。サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式で、調整可能なショックアブソーバーやスタビライザーも付いている。ブレーキは四輪ディスクでABSおよびEBDも装備される。

ラホーヤはロールがしっかり抑えられており、高速で飛ばしてもかなり安定していたので、自信を持って運転することができた。見た目から受ける印象よりも軽く感じられ、非常に運転しやすかった。ステアリングも正確で、低速域、高速域問わず安心して操作することができる。

ラホーヤはあらゆる部分がカスタマイズ可能で、内外装の色だけでなく、ダッシュボードに使われる木材の選択も可能だ。つまり、自分だけのラホーヤを作り上げることができる。ただし、この車を手に入れるためにはとてつもない大金が必要だ。