米国「MOTOR TREND」によるリンカーン・コルセア(2020年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。
リンカーン・コルセアは高級コンパクトSUVであり、価格も高級車相応となっている。コルセアの価格はアウディ Q3やボルボ XC40よりは高いのだが、レンジローバーイヴォークよりは安い。ただ、ここのところリンカーンはフォードに少し手を加えた程度のモデルを販売してきたため、リンカーンというブランド自体が損なわれてきている。
しかし、最近ではリンカーンが変わりはじめている。魅力的な新製品も登場している。とはいえ、損なわれたブランドイメージを取り戻すのには時間がかかる。しかし我々はそういったイメージに囚われず、客観的にこの新型SUVが価格に見合った車なのか検証していきたい。
我々は2種類のコルセアに試乗した。1台は2.0T AWDで、価格は39,140ドルからなのだが、試乗車はオプション込みで54,375ドルだった。もう1台の2.3T AWDは標準価格45,825ドルなのだが、試乗車は60,110ドルだった。
コルセアはリンカーンのSUVの中では最も小さなモデルで、車格はフォード・エスケープと同等であり、リンカーン MKCの後継車となる。
コルセアは新型エスケープと共通のFFプラットフォームを採用しているのだが、しっかりと差別化が図られている。実際、見た目はまったく違うので、混同することはないだろう。全長、全幅ともにコルセアのほうが大きく、全高はコルセアのほうが低い。価格差を納得させるくらいの違いは十分にある。
コルセアに設定される2種類の4気筒ターボエンジンは高性能だ。ベースエンジンの2.0L 4気筒ターボ(エスケープの上級エンジンと共通)は最高出力253PS、最大トルク38.7kgf·mを発揮する。2.3Lターボエンジンは最高出力284PS、最大トルク42.9kgf·mを発揮する。いずれもトランスミッションは8速ATで、変速はボタン操作で行う。
2.0Lエンジンでも十分に力強く、2.3L車はかなり速い。ただし、体感速度に反して、数字として出てくる加速性能にはそれほど差がない。0-100km/h加速は2.0Lが7.3秒、2.3Lが6.5秒だ。ちなみに、イヴォークのP300とP250はそれぞれ8.1秒、9.0秒で、231PSの2.0Lターボエンジンを搭載するQ3は8.5秒だ。つまり、加速性能ではコルセアが優位だ。
コーナリング性能は競合車と比べると見劣りする部分もあるのだが、シャシの軽さやステアリングのダイレクトさ、そして力強いエンジンを十分に活かして、非常に滑らかに走らせることができる。
ステアリングが軽く、敏捷性が高いので、ワインディングでの運転を楽しむこともできる。ある程度ロールはあるし、姿勢変化時に跳ねがちになることもあるのだが、十分に制御できるレベルだ。ATがなかなかシフトダウンしてくれない点は問題なのだが、その走りはマツダ・ミアータ(日本名: ロードスター)に近いと言ってもいいかもしれない。
コルセアは快適性も高い。コルセアにはエスケープよりも高性能なサスペンションが採用されており、オプションで連続制御ダンピングシステムも設定される。他にも、非常に優秀なレーンキープステアリングアシストが用意されている。
4WDは2.3L車に標準設定で、2.0L車ではオプションとなる。この4WDシステムは必要に応じて後輪に駆動力の100%を送ることも可能だ。基本的に後輪優先で駆動力を送る設定となっており、ダートコースではまるでラリーカーのような走りを見せてくれた。
内装はリンカーンの上級SUVの流れを受け継いでおり、贅沢で上質な空間に仕上がっている。ソフトな素材や上質なレザーもふんだんに使われていたのだが、試乗車がオプション満載の個体だったことは考慮に入れておいてほしい。
センターコンソールとセンターパネルが分離されたデザインは独特で、ボタンが整然と並んだ操作系も使いやすい。ステアリングスイッチの数も抑えられているので使いやすい。レイアウトは非常に合理的で、目視せずともしっかり操作できる。30ウェイパワーシートの操作はメルセデスのようにドア部分のスイッチで行う。
リアシートも広大で、レッグルーム、ヘッドルームともに十分確保されており、後席用のエアコン吹出口やUSBポート(2個)、12V電源(1個)も用意されている。質感は後部座席も前席同様に上質だし、REVELオーディオシステムの音も素晴らしい。荷室には床下収納スペースも用意されており、リアシートを格納するボタンもある。5人乗りのSUVが欲しいなら、これより大きなリンカーン・ノーチラスよりコルセアを選んだほうがいいかもしれない。
コルセアはきっと若いキャリアウーマンに受けるだろう。見た目が良く、運転席からの見晴らしも良いし、オーディオも優秀で、実用性、経済性、快適性が高く、それでいて走りはスポーティーだ。
コルセアはリンカーンブランド再興に向けた大きな一歩になるだろう。この価格に納得すれば、上質で優秀な高級クロスオーバーを手に入れることができる。オーディオには迫力があるし、内装はレクサス並みに完成度が高く、リアのデザインはかなり凝っていて目を引く。
アウディやボルボならこれよりも安く手に入れることができるし、5,000ドル高い値段を払えばイヴォークを購入することもできるのだが、コルセアはイヴォークよりも完成度が高い。コルセアは高価なのだが、それに見合った実力を持っている。
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