インド「CarTrade」によるタタ・ネクソンEVの試乗レポートを日本語で紹介します。
化石燃料は100年以上にわたって自動車産業を支え続けてきた。我々の移動には化石燃料が不可欠だ。しかし、それに代わる新しい形として、バッテリー式の電気自動車が登場している。
今回の主題であるタタ・ネクソンEVもそうだ。ネクソンEVはインドの自動車メーカーであるタタが社運を賭けて開発した電気自動車だ。果たして、タタは新時代の移動手段の開発に成功したのだろうか。
外観は通常のネクソンと大きく変わらないのだが、EVらしさも少しはある。ヘッドランプはDRL付きの専用デザインとなり、前後バンパーやショルダーラインには青いラインが入っている。フロントグリルはブラックアウトされた1本桟の専用品で、その下には三芒星形のアクセントが入っている。
そもそもネクソンのデザインは個性的なのだが、電気自動車としての主張は少ないので、ネクソンファミリーの中でも浮いてはいない。
エクステリア同様、インテリアに関しても化石燃料仕様のネクソンとほとんど同じなのだが、EV化に合わせていくつか変更点もある。内装色は白とグレーを基調としており、電気自動車らしく青の差し色が入っている。シフトレバーはなく、代わりにセレクターダイヤルが装備されている。これは慣れないとなかなか使いづらい。
ネクソンEVのエルゴノミクスは基本的に標準のネクソンと同じなので扱いやすい。EVだからといって無闇に変更せず、慣れ親しんだ操作を行えるのは素晴らしいことだ。基本的に操作系はあるべき場所にまとまっているのだが、START/STOPボタンを押しても無音なのは不思議な感覚だ。車の電源がついているのか確認するためにはメーターパネルを確認する必要がある。
試乗したのは最上級グレードの「XZ+ Lux」で、オートエアコンや運転席ハイトアジャスター、冷却機能付きグローブボックス、7インチタッチスクリーンインフォテインメントシステムなどが標準装備されている。Apple CarPlayやAndroid Autoにも対応しており、ジオフェンシングや遠隔エアコン操作、SOSアラートなど、コネクテッド機能は35種類用意されている。充電状況や充電履歴、航続距離、最寄りの充電施設なども遠隔で確認することができる。
ネクソンEVにはタタの新電動パワートレイン「ジプトロン」が採用されている。モーターは最高出力129PS、最大トルク25.0kgf·mを発揮し、30.2kWhの液冷式リチウムイオンバッテリーを搭載する。加速性能は良好で、0-100km/h加速は9.9秒を記録し、航続距離はARAI基準で312kmだ。バッテリーはIP67という基準に適合しており、安全性が保証されている。
電気自動車なので最大トルクが発進直後から発揮される。おかげでちょっとした追い越しが非常に楽にこなせる。ほとんどアクセルを踏み込まずに加速できるのも魅力的だ。走行モードは標準モードとスポーツモードの2種類があり、スポーツモードではスロットルレスポンスがシャープになり、回生ブレーキもより強くなる。
車重は標準車より120kg重く、乗り味も硬くなっている。ただ、十分にしなやかなので悪路でも落ち着いている。ステアリングの重さも適度で、スピードを上げるほど重くなっていき、運転を楽しむこともできる。ただ、速度を上げてコーナーを攻めようとすると前輪にトルクがかかりすぎてアンダーステアを呈してしまう。アクセルを踏み込むと前輪が空転することもあるので、運転スタイルによってはすぐにタイヤが減ってしまうかもしれない。
15Aの家庭用電源に繋ぎ、3.3kWのAC充電器を利用して充電した場合、フル充電までかかる時間は8時間となる。急速充電器を利用した場合、80%までわずか60分で充電することができる。タタは22都市の主要ディーラーに急速充電器を設置する予定だ。