英国「GQ」によるランドローバー・ディフェンダーの試乗レポートを日本語で紹介します。


Defender

ヒンバ族はナミビア北西部に位置するカオコランドにおいて、伝統的な生活を延々と受け継いでいる。ヒンバ族はヘレロ族の直系の子孫であり、過酷な環境の中、半遊牧民として牛やヤギを食料として生活している。

ヒンバ族はこれまで、民族移動や大規模な干魃、ドイツによる占領と大量虐殺、ゲリラ戦などを乗り越えてきた。彼らの住む山岳地帯は岩だらけで水も乏しいため、基本的に農地に向いていない。そこに繋がる道路は十分に整備されておらず、移動手段は徒歩しか存在しなかった。

道と呼ぶにはあまりに荒れ果てた場所にヒンバ族の若者が立っていた。そこは地元住民には「ヴァン・ジルの道」と呼ばれている。そこはいかに本格4WDであろうと到底走破することなどできなさそうな道だ。そんな道を新型ランドローバー・ディフェンダーが進んでいく姿を見て、若者はかなり驚いている様子だった。

サスペンションを破壊するほど巨大な岩石を物ともせず、ただ黙々と進んでいくディフェンダーの姿を見つめる彼はディフェンダーに畏敬の念を表しているようだった。我々の中にヒンバ語を話せる人などいなかったし、その若者も英語など話せなかったのだが、彼の言いたいことはすぐに分かった。

乗せてくれないか?
どうぞどうぞ。

rear

ヴァン・ジルの道はオカングワティからマリエンフルス・バレーに続く唯一の道であり、道には砂利や石が大量に存在する。そのせいでかなりゆっくり運転せざるをえなかったのだが、それでも歩くよりはましだ。それに、こんな場所で車を運転する機会など、これを逃せばもうないだろう。

かつてナミビアという国は存在せず、南西アフリカと呼ばれていた。ナミビアが建国されたのは1990年のことで、今や歴史的な車となったディフェンダーの車名もこの年に誕生した。そんな車をテストする場所として、ここ以上の場所などあるだろうか。

しかし、ディフェンダーの原型となる車が実際に発表されたのは1948年のアムステルダムモーターショーで、ランドローバーの伝統はその時代から続いている。何でもできてどこまでも行けるランドローバーの本格四駆は、2016年にソリハル工場での製造が終了するまで、実に68年間にわたって製造が続けられてきた。

そうして、ランドローバーのひとつの歴史が終わったのだが、果たして新型ディフェンダーはより良い時代の到来を意味するのだろうか。実際に乗ってみると、そんな表現では足りないくらい完成度の高い車に仕上がっているように感じた。

ランドローバーでデザインディレクターを務めるジェリー・マガバーン氏は以下のように語っていた。
世界中が新型ディフェンダーの登場を心待ちにしていました。新型モデルの登場まで時間がかかってしまいましたが、新型ディフェンダーも記憶に残る車に仕上がっていると考えています。

実際、彼の言う通りだった。今回試乗したのはロングホイールベース版のディフェンダー110で、OTAソフトウェア更新対応の先進的なインフォテインメントシステムとヒンバ族もびっくりの全天候対応の高い走破性を兼ね備えていた。この車の実力は開発時に行われた62,000もの試験で実証されている。

ディフェンダーであれば、たとえ世界から隔絶された場所であろうと、この地球上に行けない場所などないと実感することができる。