米国「Car and Driver」によるフォード・マスタングV6の試乗レポートを日本語で紹介します。
※内容は2005年当時のものです。
女性はマスタングが好きだ。V6マスタングの55%は女性が運転している。女性はV8のパフォーマンスは求めず、より燃費が良くて価格も安いV6を選んでいる。それゆえに男性ばかりの我々自動車評論家は長らくV6モデルの試乗を避けてきた。
2005年に登場した新型マスタングのV6エンジンは排気量が増加している。新しいV6エンジンは4.0LのSOHCで、エクスプローラーやマウンテニア、レンジャーにも搭載されているトラック向けのエンジンだ。最高出力は213PS、最大トルクは33.2kgf·mで、旧型マスタングに搭載されていた3.8Lユニットと比べると、それぞれ17PS/2.1kgf·m向上している。
エンジン性能の差はそれほど大きくないのだが、オプションのATはギアが1段増えて5速ATとなっている。シフトレバーはハマー H2用シフトレバーの小型版のような形となっている。ただ、マスタングのシフトレバーはH2よりもずっとしっかりしており、ちゃんと安心感がある。
エンジン性能の上昇とギア数の増加により、直線加速性能は想像以上に向上していた。0-100km/h加速は6.9秒、0-400m加速は15.3秒(146km/h)を記録した。昔のマスタング(1994年モデルのMT車)が0-100km/h加速8.3秒、0-400m加速16.5秒だったことを考えると、かなりの進歩と言えるだろう。それどころか、旧型V8モデルと比べても、0-100km/h加速の差は0.6秒、0-400m加速の差は0.2秒しかない。
数字も驚異的だったのだが、ATの変速も優秀で、フル加速時には適切にシフトアップしてくれる。ただし、運転中は大音量でラジオを聞いていたほうがいい。なにせ、エンジン音はトラクターよりも少し静かな程度だからだ。
残念ながら、V6モデルにはP215/65R16のBFグッドリッチ Traction T/Aが装着されている。このタイヤはそれほど高性能ではなく、110km/hからの制動距離は57.6mで、スキッドパッドテストでは0.79Gを記録した。
フロントブレーキはV8モデルよりも0.9インチ小さい11.5インチで、サスペンションもV6モデルはややソフトなセッティングになっているのだが、V8モデル(制動距離51.8m、スキッドパッドテスト0.89G)との性能差はタイヤの性能差による部分が大きい。
マスタングのメーターに表示される燃費計はまったくもって当てにならない。普通、燃費計には具体的な数字が表示されるのだが、マスタングの場合、「燃費が良い」と「燃費が悪い」という2種類の指標しか表示されない。アクセルを床に踏み込めば「燃費が悪い」になるし、逆もまた然りだ。ひょっとしてドライバーを馬鹿にしているのだろうか。
とはいえ、V6マスタングの価格は19,410ドルと非常に安く、装備内容がほとんど同じシボレー・コバルトとの価格差はわずか数千ドルだ。今回試乗したのは585ドル高い「Premium」モデルで、こちらには運転席パワーシートや6連奏CDチェンジャー、専用ホイールが装備される。他にABSやトラクションコントロール、内装アップグレードパッケージ、追加エアバッグも装備されており、総額は22,890ドルだった。
V6のマスタングは非常に商品力が高い。レトロな見た目は魅力的だし、パフォーマンスも十分に高く、価格はリーズナブルだ。ステアリングはやたらに軽いし、リアサスペンションがリジッドアクスルなので振動も気になるし、計器は読みづらいのだが、V8のマスタングGTより5,600ドルも安いので、これくらいの問題点は許容できるだろう。
女性はV6マスタングの性能向上には興味を持たないかもしれないが、新しいV6マスタングは男性陣も満足できる仕上がりとなっている。