米国「Car and Driver」によるフォルクスワーゲン・アトラス クロススポーツ(2020年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。


Atlas Cross

フォルクスワーゲンは2019年に81,508台のアトラスを売り上げている。この成功の陰には、米国市場の嗜好に合わせた車を作るために2011年に開設されたテネシー工場の存在がある。そしてフォルクスワーゲンは大型SUVの販売をさらに拡大するため、2列5人乗り仕様のアトラス クロススポーツを発表した。

スポーツという名前が付いているだけあって、ベース車のアトラスにあるミニバンっぽさ、すなわち3列目シートがなくなっている。それに加え、クロススポーツではルーフライン後端の傾斜が緩やかになり、リアハッチはアウディ Q8のように非常にスポーティーになっている。

3列目シートがなくなったため、2列目の空間も拡大している。分割可倒式リアシートは通常のアトラス以上に後ろにスライドできるようになり、レッグルームは76mm増加している。ひょっとしたら、後席で脚を組める(クロスできる)からクロススポーツという名前になったのかもしれない。

ルーフライン以外に、フロントグリルおよびLEDヘッドランプ、LEDテールランプの形状は異なるものの、それ以外は基本的に標準のアトラスと変わらない。全長は50mm短縮しているのだが、ホイールベースは2,979mmのままだ。

interior

ベースグレードには2.0L 直列4気筒ターボエンジンが搭載される。このエンジンはオプション設定される3.6L V6エンジンのように音に迫力があるわけではないのだが、最大トルクは35.7kgf·mと強力だし、最高出力も238PSとV6の280PSと比べても大きく見劣りはしない。

従来、4WDはV6のみに設定されていたのだが、クロススポーツではどちらのエンジンにも1,900ドルのオプションとして設定される。フォルクスワーゲンによると、標準のアトラスにも近いうちに4気筒の4WD仕様が追加され、また前後デザインもクロススポーツと共通になる予定らしい。

4WDであっても、2.0Lモデルの加速性能は十分に高い。ただし、8速ATは1速がショートなので発進加速は少しもたついてしまう。6気筒のほうが4気筒よりも滑らかなのだが、その差はそれほど大きくない。わざわざ1,600ドル払ってV6を選ぶ理由になるのは牽引重量の差だろう。V6モデルの最大牽引重量が2,268kgなのに対し、2Lモデルの最大牽引重量はわずか907kgだ。

クロススポーツの走りは標準のアトラスとまったく変わらない。大きめの段差を踏むとフロントサスペンションからはっきりと衝撃が伝わってくるのも変わらないし、細かい違いはあるものの、メーターパネルのデザインも共通だ。シートも同じだし、硬いプラスチックも、ずらりと並んだ操作系も共通だ。差別化のため、クロススポーツには専用の内装色も追加されている。

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ブラインドスポットモニタリングや衝突警報、エマージェンシーブレーキは標準装備となる。また、クロススポーツには新たに、道路標識認識機能やダイナミッククルーズコントロール(停止・再発進対応)も装備されている。

4気筒エンジンを搭載する2WDのベースグレードは31,565ドルで、無印のアトラスよりも1,000ドル安い。上級グレードの「SEL Premium」の2.0L車は48,965ドルとなる。V6エンジンは下級グレードの「S」および「SE」には設定されず、最上級グレードでV6を選択すると5万ドルを超えてしまう。

フォルクスワーゲンは競合車としてフォード・エッジやジープ・グランドチェロキー、ホンダ・パスポートを見据えているようだ。他にも日産 ムラーノシボレー・ブレイザーとも競合するだろう。同価格帯には高級ブランドのSUVもあるのだが、ボディサイズは小さくなってしまう。

このクラスの中ではホンダ・パスポートが最も優秀で、それはクロススポーツが登場しても変わらないだろう。しかし、クロススポーツの見た目やリアシートの広さが気に入ったなら、クロススポーツを検討するのも悪くはないだろう。