Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。
今回紹介するのは、シュコダ・カミックの試乗レポートです。
今回の主題はシュコダ・カミックなのだが、その話に入る前にイギリス政府が生み出したスマートモーターウェイという悲劇について語りたいと思う。この政策は38人もの人間を殺した。これは悪名高き殺人鬼、ピーター・サトクリフのおよそ3倍だ。
もともと、スマートモーターウェイ計画は渋滞問題を解決するための方策であると語られていたのだが、私は最初から、これが渋滞を利用して金を巻き上げるための政策でしかないということを察知していた。
スマートモーターウェイは渋滞時に路側帯を車線として利用することのできる道路のことで、環境にも良いと言われていた。今の時代、「環境に優しい」というお題目があればすべてが正義であり、ゆえに誰にも反対されることなく導入が決定した。もし政府が「殺人は環境に優しい」と発表すれば、全国民がバットを持って隣家へと押し入ることだろう。
もし追加の車線を新規で整備しようとしたら、政府は建設業者の言い値をそのまま支払うだろう。政府は税金をいくら使おうが自分のお金ではないので痛くも痒くもないし、建設業者もそれを理解しているので、1kmあたりの整備費用が兆単位にもなりかねない。
しかし、路側帯は整備するまでもなく最初から存在する。それを活用すればいいじゃないか。確かに、スマートモーターウェイを走行中にもし車が故障したら避難する場所がなくなってしまうかもしれない。しかし今やブリティッシュ・レイランドなど存在しないのだから、車が壊れることはない。パンクすらも起こりえない。
4分間の実証実験を行っても問題が生じなかったので、政府はスマートモーターウェイを全国に整備することを決定した。整備のために高速道路では工事が開始され、存在しない作業員を保護するために大々的な車線規制と大量の速度取締機の設置が行われた。
しかしどうして工事が必要なのだろうか。しかも、整備には2年以上が費やされた。本来なら「路側帯も走行できます」という看板を建てるだけでいいはずだ。これにはちゃんと理由がある。スマートモーターウェイの現実を見てみることにしよう。
スマートモーターウェイ
路側帯が車線として利用されるとき、特に意味もなく制限速度が80km/hまで、場合によってはなんと65km/hまで下がる。制限速度の変更を知らせるためには数百メートルごとに標識を設置しなければならない。道路の幅が広がれば当然ながら車と車との距離は広がるのだから、より速く運転することができるはずだ。だとしたら、どうして路側帯使用時に制限速度が下がるのだろうか。まったくもって非合理的だ。
聞くところによると、路側帯を車線として利用するとドライバーが混乱してしまうため、制限速度が下げられているらしい。しかし、この理屈は明らかに馬鹿げている。
ドライバーは人間だ。人間はロケットを月まで飛ばすこともできるし、戦闘機で曲技飛行をすることもできる。テレビを見ながら編み物をすることもできるし、運河を作り出すことも、核融合を引き起こすこともできる。私のような不器用な中年でもツインエンジンのホバークラフトをパワースライドさせることができる。
現代の車はブレーキの性能もタイヤの性能も非常に高いのだから、まともな人間がまともに整備された高速道路を運転する場合、140km/h出してもまだ余裕があるだろう。それは政府も理解しているはずだ。
イギリスの高速道路は世界から見てもかなり安全だ。そう考えると、政府がスマートモーターウェイを整備した本当の目的は、制限速度標識が設置される門柱に速度取締機も設置し、ドライバーから金を巻き上げることなのだろう。
さらに厄介なことに、世の中にはまともに運転できない人間も存在するため、安全に停車できるスペースの存在しないスマートモーターウェイではプジョーが大型トラックに押し潰される事故が多発した。政府はスピード違反車を取り締まるカメラばかり重視した結果、停止している車を感知するカメラをほとんど設置しなかった。
スマートモーターウェイは大量のモニターを使って24時間体制で監視され、道路上で何らかの問題が発生すれば大量に設置された標識に即座に情報が表示されるはずだった。
ところが現実的に十分な監視などできていない。事実、故障車の発見までには平均で17分かかっており、救急隊がそこに到着するまでにはさらに17分かかる。救急隊が到着する頃にはプジョーは既に木っ端微塵になっている。
政府がドライバーから金を巻き上げようとした結果、38人もの死者が発生してしまった。
おっといけない。政府の金策について長々と書いていたら、シュコダ・カミックについて書けるスペースがほとんどなくなってしまった。
コストパフォーマンスの高い車を求めているなら、私が試乗した21,980ポンドのカミックをおすすめできる。他の数多ある小型SUVと基本的には何も変わらないのだが、運転席のドア部分には仕込み傘が装備されており、荷室にはLEDの懐中電灯も用意されている。方向指示器の光り方も特徴的だし、ドアを開けると保護用のプロテクターが飛び出してくるので狭い場所に駐車しても安心だ。
それ以外は他のSUVと同じだ。特にセアトおよびフォルクスワーゲンのSUVとはバッジ以外はまったく同一だ。しかし、セアトにもフォルクスワーゲンにも特殊なウインカーや傘は装備されていない。なので、どうしても特別なウインカーや仕込み傘が欲しいなら、シュコダを購入するべきだろう。
中でもLED懐中電灯は優れものだ。もしスマートモーターウェイで夜中に動けなくなってしまったとしても、これを活用したら命を守ることができるかもしれない。
ここまで渋滞が多いということは、
イギリス自体が過密地域ということ
なのでしょうね。
auto2014
が
しました