英国「Top Gear」によるアストンマーティン DB5(007劇用車)の試乗レポートを日本語で紹介します。


DB5

クラシックカーといえば巨大な木製ステアリングで、握ればすべてを直に感じることができる。最近の車のステアリングはリムが太く、油圧式ないしは電動式のアシストが入っている。クラシックカーのステアリングは現代の車とは違う、本物の”フィール”がある。

アストンマーティン DB5は正真正銘のクラシックカーだ。DB5は真に美しい。私がDB5を運転したのは今回で2度目だ。最初に運転したときは雨が降っていて、ラウンドアバウトを走るたびに戦慄を覚えた。

今回私が運転したのは、イアン・フレミング原作のあのスパイ映画でショーン・コネリーが実際に運転した個体だ。ジェームズ・ボンドのDB5といえば、イジェクターシートや防弾ガラス、マシンガンが装備されており、ミニカーも大ヒットしている。ボンド世代にとってこの車は憧れであり、劇用車としては最も有名な車と言ってもいいだろう。

そう、私はまさにその劇用車を運転しようとしている。私は緊張しながらも木製のリムに手をかけた。

作中ではDB5に関する設定が深く練り込まれている。原作者のフレミングはベントレー派らしく、作中でもボンドはよくベントレーを運転しているのだが、原作の『ゴールドフィンガー』ではアストンマーティン DB3に乗り換えている。

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映画版ではプロデューサーのカビー・ブロッコリがジャガーに対してEタイプの提供を依頼したのだが、ジャガーはこの要求を蹴ったそうだ。なんて馬鹿なことをしたのだろう。しかしアストンマーティンは広告塔になると判断し、プロダクションへの車の提供を決定した。

アストンマーティンからは2台のDB5が提供された。そのうち1台は美術監督のケン・アダムの手によって独創的なガジェットが追加され、もう1台は素のままで遠景撮影やスタントなどに使われた。

改造された1台は後に特別装備が外され、アメリカのコレクターに売却されたのだが、このコレクターは自分でボンド仕様に戻した。この個体はその後、フロリダ州で不動産業を営むアンソニー・パグリーズに売却され、空港の格納庫に保管されていたのだが、1997年に盗まれて以降、行方不明となってしまった。

もう1台の素のDB5も結局はプロモーション目的でボンド仕様に改造されたのだが、アストンマーティンの要求によってこちらも装備が外されてしまった。こちらの個体は1969年にアメリカのDJ、ジェリー・リーに12,000ドルで売却され、やはりボンド仕様に戻されている。この個体はしばらく公の場に姿を現すことはなかった。

その後、ジェリー・リーは慈善団体に寄付を行うため、DB5の売却を決意した。このDB5は2010年10月に開催されるオークションの目玉となる。この車の歴史を考えると、かなりの価値になるのも当然だろう。

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実際に乗ってみるとかなりしっかりしており、ドアも安心感のある音を立てて閉まる。46年前の車らしく、シートも良い感じに年季が入っている。キーをひねると直列6気筒4.0Lエンジンに命が吹き込まれ、すぐにアイドリング状態に安定する。

回転数が3,000rpmを超えると素晴らしい音を響かせる。トランスミッションも優秀だ。コーナーではやや不安定になるのだが、それでも車の今の状態をはっきりと感じ取ることができる。

なにより、この車は『ゴールドフィンガー』でショーン・コネリーが実際に運転した個体だ。彼はメルセデスとカーチェイスを繰り広げ、行き止まりへと辿り着く。その後、オッドジョブの殺人シルクハットによってティリーは殺されてしまう。

ボンドのDB5には当時まだ存在していなかったカーナビのようなものも装備されており、他にもアームレストにはたくさんボタンがあって、それを操作するとさまざまなギミックが作動する。そしてシフトレバーの赤いボタンを押せばイジェクターシートが作動する。

そう、これこそがそのボンドカーだ。私はその車を運転することができた。