米国「MOTOR TREND」によるGMC アカディア(2020年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。


GMC Acadia

GMCのオーナーにどの車に乗っているのか尋ねると、多くの人が「デナリ」と答える。デナリは車名ではなくグレードの名前なのだが、それほどデナリには人気がある。モデルによっては最上級グレード「デナリ」の販売割合が50%を超えるものもあり、ブランド力の高さが伺える。しかし今回はデナリではないモデルとして、GMC アカディアの「AT4」というグレードに試乗した。

AT4はオフロード装備を充実させたグレードだ。価格は中級グレード「SLT」と高級志向の「デナリ」の中間だ。AT4の特徴的な装備としては、17インチグロスブラックホイール(20インチもオプションで選択可能)、オールテレーンタイヤ、専用フロントグリル、グロスブラックルーフレール、新設計ツインクラッチ4WDシステムなどがある。

今回はワイオミング州ジャクソンホール郊外で試乗を行った。試乗コースは主に標高の高い場所を走る幹線道路で、標高1,800mmを超えるダート路面も走行した。アカディアAT4には最高出力314PS、最大トルク37.5kgf·mを発揮する3.6L V6エンジンが搭載され、新設計9速ATが組み合わせられる。シフトセレクターはマイナーチェンジを期に従来のレバー式からボタン式に変更され、センターコンソールにスペースが生まれている。

アカディアAT4は標高の高い場所であってもスロットルレスポンスがかなり良く、発進加速は速いし、パワーバンドでの加速も滑らかだった。

rear

以前にも9速ATの車に乗ったことはあるのだが、アカディアのATは低速ギアをしっかり選択し、アクセルを踏み込むとすぐにシフトダウンしてくれる。競合車と比べて圧倒的な加速性能があるわけではないのだが、高速道路での合流などはストレスなく行うことができるだろう。

唯一残念だったのがマニュアル変速をしないと現在のギアがどこにも表示されない点だ。しかも、マニュアル変速はセンターコンソールのボタンを操作して行うので、かなりやりづらい。ボタンの場所はマニュアル変速が必要となるような走行状況では見づらい場所にあるし、それどころか押すためには身体を傾けなければならない。

今回はスネーク川周辺の未舗装路も走行してみたのだが、走行中には小川や泥道も通った。その際には4WDの山道モード(スロットルレスポンスが向上し、トラクションコントロールやトランスミッションのセッティングも変わる)も使ってみたのだが、ダート路面では低速ギアをしっかり選んでくれるスポーツモードのほうが楽しかった。このモードだとタイヤが空転することもあるのだが、それもまた楽しい。

未舗装路を走ったのはあくまで少しだけなのだが、それでも本格的なオフロードカーを求めているならアカディアを選ぶべきではないだろう。最低地上高はわずか183mmだし、サスペンションストロークもそれほど長くはない。ローレンジギアもないので、ソフトウェアに頼りきりになってしまう。

interior

アカディアを購入するような人がわざわざ走行モードを細かく設定しながら運転するとは思えないのだが、それでも個人的にはもう少し走行モードをもう少し細かく設定できたら嬉しいと感じた。特に滑りやすい路面での電子制御の介入を抑えてくれるモードがあったら嬉しい。

AT4に装備される255/65R17のオールテレーンタイヤ(コンチネンタル TerrainContact)は泥道や岩場でのグリップ性能が非常に高く、おかげでトラクションコントロールのセッティングで何を選んでも、悪路を問題なく進んでいくことができた。

今回のマイナーチェンジではアカディアの全グレードでリアサスペンションのチューニングが変更されており、操作性とリアの快適性が向上している。他にもヘッドアップディスプレイや新設計インフォテインメントシステムも装備され、低グレードには2.0L 4気筒ターボエンジン(最高出力233PS、最大トルク35.7kgf·m)も新規設定されている。

アカディアには下から「SL」、「SLE」、「SLT」、「AT4」、「デナリ」の5グレードが設定される。AT4の価格は43,395ドルで、最大牽引重量は1,814kg、燃料タンク容量は83L(FF車は72L)となる。