オーストラリア「CarAdvice」によるボルボ XC60 T5の試乗レポートを日本語で紹介します。
※内容は2015年当時のものです。

ベルギーで製造されるXC60はあらゆる面で優れたSUVだ。新型XC60 T5はボルボ変革の旗印なのかもしれない。エクステリアは非常に洗練されており、搭載される4気筒2.0L EcoBoostエンジンは力強く、コーナリング性能もFF車としては優れている。都市圏に住む上位中産階級家庭にぴったりの車だ。
エンジンは最高出力240PS、最大トルク32.6kgf·mを発揮し、フォードの6速パワーシフト(デュアルクラッチトランスミッション)が組み合わせられる。十分に力強いので周りを見ていないドライバーも楽々追い越して心穏やかに運転することができる。昔の典型的ボルボオーナーが身に着けていた帽子やスカーフを吹き飛ばすくらいの加速性能はある。
0-100km/h加速は8.1秒で、かなりトルクがあるので扱いやすく、高速道路をリラックスして流すことができる。XC60でこんなことをしたい人がいるかは分からないが、アクセルを踏み込めばフロントが持ち上がるくらいの加速も見せてくれる。
エンジンは非常に優秀なのだが、トランスミッションには問題もある。信号での発進時にはちょっとしたもたつき(DCTではよく起こる)があり、2速へのシフトアップが遅いのでアクセルを踏み込むとトルクステア(制御不能なほど酷いわけではない)も生じる。ただ、初期加速以外では基本的に不満を感じることはないだろう。
ステアリングは中立域付近で緩さを感じるものの基本的にしっかりしており、特に低速コーナーでは扱いやすく、ロールやアンダーステアも抑えられているので、挙動も読みやすい。1.7トンのSUVなのでこれ以上を期待するべきではないだろう。ただ、XC60は(最近のボルボは他のモデルもそうなのだが)あまり小回りが利かないので頻繁にUターンするような環境にある人はよく確認したほうがいいだろう。
実用性はかなり高い。ちょっとした問題はあるものの、ほとんど完璧に近い。ボルボの車内にはIKEAのような親しみやすさがある。ただ、ステアリングの左にあるプッシュスタートスイッチを押してから右膝の上にあるパーキングブレーキボタンを押すという操作過程はあまり直感的ではないし、マルチメディアのインターフェースもやや複雑だ。このあたりは少し慣れが必要になる。
それ以外は、パワーテールゲートも、キーレスエントリーも、バイキセノンヘッドランプも、DRLも、すべて実用的で一度使ったら手放せなくなる装備だ。ただ、先進安全装備があまり充実していない点は気になった。ブラインドスポットモニタリングやレーダークルーズコントロールはいずれもオプション設定となる。テーマを変更できる液晶表示のメーターはガジェット的な面白さがある。
前席は広く、パワーシートも装備される(シートヒーターはオプションとなる)。ただ、リアシートは足元がそれほど広くなく、乗り心地もボルボとしては硬めだ。特にR-DESIGNは快適性を重視するなら避けるべきだろう。リアシートはジープ・グランドチェロキーやアウディ Q5のほうが広いのだが、XC60は快適装備が充実しており、Bピラーにはちょうど顔に当たる位置にエアコン吹出口が設置されている。
一風変わった点として、XC60のリアシート座面には内蔵式のチャイルドシートが装備されている。これはかなりの優れもので、他メーカーが追随しないのが不思議なくらいだ。インテリア全体として見ても、非常にスタイリッシュで、シンプルながらも魅力的な内装に仕上がっている。個人的には試乗車のブラック内装よりもホワイト系の内装のほうが好みだ。
XC60 T5には2種類存在し、今回試乗したEcoBoost仕様のほか、ボルボ内製のDrive-Eエンジンと8速ATを組み合わせた仕様も新たに登場している。このエンジンを選択すれば上述のDCT特有の問題も解決するだろう。また、ファミリーユースを重視するなら4WDのD5を検討する価値もあるだろう。
T5 Kineticの価格は57,890豪ドルで、5,000ドル追加すると今回試乗したT5 Luxuryを選択できる。準高級ブランドの車としてはコストパフォーマンスが高いのだが、V60クロスカントリーも気になるところだ。
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