カナダ「Driving」によるリンカーン・ナビゲーターの試乗レポートを日本語で紹介します。


Navigator

リンカーン・ナビゲーターが発売された1998年当時、競合車は少なかった。レンジローバーはあったのだが、それ以外に高級フルサイズSUVなどほとんどなかった。

しかし、1998年以降、状況は大きく変わった。ガソリン価格はもはや1Lあたり47.9セントではないし、他のメーカーも高級SUVがドル箱であることに気付き、キャデラック・エスカレードやGMC ユーコン デナリ、そして最近ではレクサス LX470やインフィニティ QX56も登場した。

そして、2006年には新型ナビゲーターが登場した。パワートレインは改良されているとはいえキャリーオーバーなので、中身まで完全刷新されたわけではない。しかし、外装は完全に新しくなり、乗り心地やハンドリングも改善している。

コストパフォーマンスも向上している。オプションはわずか3つしかない。内装をより豪華にするパッケージ(300ドル)と、リアシートDVDエンターテインメントシステム(2,100ドル)、音声認識機能付きDVDシステム(2,300ドル)で全てだ。ベース価格は3,000ドル安くなって73,199ドルとなったのだが、装備内容は増えているため、実質7,000ドルの値下げとなっているそうだ。

まず目について分かる変更点はフロントグリルだ。リンカーンは「エッグクレート」と呼んでいるのだが、実際はおろし金のように見える。フォード・カナダでSUVマーケティングを担当するリック・ジェミン氏によると、このグリルは1960年代のリンカーンの伝統に則っており、大胆ながらも過剰ではないデザインを目指したそうだ。

rear

そのグリルの上のフード部分は「パワードーム」と呼ばれ、中央部分が隆起しているのだが、そこに機能的な意味はない。しかも、そこそこ身長のある私がシート位置を最高にして運転しても、特に駐車時にはこのドームが視界の邪魔になってしまう。

それ以外の外装の大きな変更点として、電動サイドステップが追加されている。ステップはドアが開くのに連動して下がってくる。ドアを閉めるとステップがしっかり隠れるようになっている。

内装はしっかり高級感が増している。基本レイアウトは従来型に近いのだが、新型ではより洗練されている。コンソールやドアパネル上部には本物の木が使われている。木目パネルはダークエボニーとメープルから選択できるのだが、他にアルミパネルも設定されるので、若い顧客も満足できるだろう。

メーター部分は完全新設計となっているのだが、ごちゃごちゃしていて見づらく、燃費などの情報をひと目で確認するのは難しい。レザーシート(ヒーターおよびクーラー付き)はボルボのデザイナーが開発に関与したおかげで従来よりも快適になっている。

エンジンは従来同様、5.4L V8が搭載され、最高出力304PS、最大トルク50.5kgf·mを発揮する。トランスミッションも従来型と共通の6速ATなのだが、ギア比は見直されており、変速フィールや加速性能は向上している。パフォーマンスは許容範囲内なのだが、409PS/57.7kgf·mの6.2L V8エンジンを搭載するエスカレードと比べると見劣りする。

interior

今回はノースカロライナ州のブルーリッジ・パークウェイを通り、グレート・スモーキー山脈沿いを新型ナビゲーターで走った。登り坂に関しては特に問題もなく、トランスミッションもシームレスに変速してくれた。コーナーでもボディサイズの割には安定しており、ロールも抑えられていた。

フレームが強化され、リアサスペンションが刷新されたおかげで、乗り心地は従来型よりも明らかに改善していた。静粛性も向上しており、オーディオをオフにすると(せっかく600Wの14スピーカーシステムが付いているのでもったいないのだが)かなり静かだ。風切り音やエンジン音を抑えるために遮音材や吸音材が追加され、ガラスは厚くなり、ドアミラーの形状も変更されている。

安全装備も充実しており、ABS、EBD、パニックブレーキアシスト、トラクションコントロール、スタビリティコントロールは標準装備となる。他に、運転席・助手席エアバッグや前席サイドエアバッグ、サイドカーテンエアバッグも装備される。

新型ナビゲーターはリンカーン史上最高の高級フルサイズSUVに仕上がっている。着実な進化を遂げたナビゲーターはきっと成功することだろう。