英国「Auto Express」によるトヨタ C-HRとプジョー 3008の比較試乗レポートを日本語で紹介します。


C-HR vs 3008

トヨタ C-HRはコンパクトSUVの中でも評価の高いモデルなのだが、トヨタは奢ることなく改良を続けている。2020年にはインフォテインメントシステムが刷新され、従来設定されていた1.2Lガソリンターボエンジンに代わってカローラと共通の2.0Lハイブリッドシステムが搭載された。今回は改良型C-HRとその競合車であるプジョー 3008を比較した。

比較するといっても、そもそも2台の方向性は違っている。スポーティーな見た目のC-HRにはハイブリッドしか設定されないのだが、一方で3008は昔ながらのガソリンとディーゼルを搭載しており、内装は非常に独創的だ。

コンパクトSUVの顧客は車に万能性を求めるため、今回は実用性、走行性能、快適性、装備内容、経済性など包括的に比較していきたい。


トヨタ C-HR

C-HR

C-HRの2.0Lハイブリッドは単に1.8Lハイブリッドの排気量を上げただけのパワートレインではない。熱効率が最大限まで高められており、さらにバッテリー技術の向上も燃費性能の向上に一役買っている。C-HRの燃費は驚異的で、3008の1.6Lガソリンと比較した場合、今回の実燃費は3008がわずか11.0km/Lであったのに対し、C-HRは15.6km/Lを記録した。

燃費だけがC-HRの強みではない。乗り心地やハンドリングも3008よりC-HRのほうが圧倒的に優れている。TNGAプラットフォームを採用するC-HRはフロントサスペンションがマクファーソンストラット式で、リアサスペンションは3008に採用されるトーションビーム式よりも複雑な構造のダブルウィッシュボーン式を採用している。

この差は実際に運転してもはっきりと分かる。C-HRの乗り心地は非常に滑らかだ。低速域では路面の衝撃を見事にいなしてくれるため、街中で乗り回すのに最適だ。ハイブリッドなので低速域ではモーターだけで走行できるため、低速走行時の静粛性も非常に高い。

2.0Lエンジンは1.8Lエンジンと比べるとエンジン稼働時の音はうるさいのだが、それでも3008の1.6Lエンジンと比べると静かだ。高速域ではサスペンションの本領が発揮され、コーナー途中の凹凸にもしっかりと対処し、安定してコーナーを抜けることができる。

C-HRはコンパクトSUVの中でも特にハンドリング性能が高く、ステアリングの重さも適切だし、グリップ性能や加速性能も優れている。0-100km/h加速は8.1秒で数値的には3008と同じなのだが、C-HRにはモーターが搭載されているので低速域からの瞬発力が高く、一方で3008は高速域からの加速が優れている。

C-HRにはCVTが採用されるため、ギア固定での加速テストは行えなかった。50-80km/h加速はC-HRが3.1秒を記録し、3008は2.8秒を記録した。50-110km/h加速も3008のほうが速く、プジョーが7.3秒、トヨタが7.7秒だった。加速性能は2台それほど変わらないのだが、C-HRのほうが走行安定性や快適性、静粛性が高いので、全体的に走りはC-HRのほうが優れている。

今回の改良でC-HRはApple CarPlayとAndroid Autoにも対応している。おかげで使いづらい純正ナビを使わなくてもいいのだが、純正システムが使いづらいのは3008も同様だ。C-HRの内装の質感は競合車に劣っており、安っぽい部分もあるのだが、作り自体はしっかりしている。

今回試乗した「Dynamic」には18インチアルミホイールやブラインドスポットアシスト、LEDライト、シートヒーター、キーレスエントリー、メタリック塗装が標準装備されていた。


プジョー 3008

3008

3008にはPSAグループのEMP2プラットフォームが採用されており、フロントサスペンションはマクファーソンストラット式、リアサスペンションはトーションビーム式を採用する。C-HRよりも低コストでシンプルな設計だ。

それでも、3008の快適性は高く、ちょっとした衝撃ならしっかりと吸収してくれるし、高速域での大きなアンジュレーションにも問題なく対処してくれる。ただ、大きな衝撃には弱く、その衝撃によって車のバランスも崩れてしまう。ソフトなセッティングとなっているためコーナーではある程度ロールが発生してしまうのだが、その割にコーナー途中の衝撃にはC-HRよりも弱い。

プジョーの特徴でもあるi-Cockpitを採用するため、ステアリングが小さく、おかげで細かな操舵が難しい。快適性がC-HRに劣るにもかかわらず、かといって運転が楽しいわけでもなく、直線道路以外ではあまり運転したいとは思えない。

1.6Lガソリンターボモデルの加速性能は十分に高く、0-100km/h加速はC-HRと同じ8.1秒を記録した。中間加速性能は総じてC-HRよりも優れており、50-80km/h加速は2.8秒(C-HRは3.1秒)、80-110km/h加速は4.4秒(C-HRは4.6秒)を記録した。

3008の1.6Lエンジンはそれなりに静かなのだが、3008の中で選ぶなら他のエンジンをお勧めしたい。1.6Lエンジンはスポーツモードにするとスピーカーから不愉快なフェイクの排気音が流れるのだが、走り自体はほとんど変わらない。そもそもこのエンジン自体がそれほど回して楽しいものではないので、どうせ楽しくないならより静かで経済的なトヨタのハイブリッドを選んだほうがいいだろう。

3008に採用される8速ATは鈍いのだが、それでも飛ばさなければ十分に滑らかだし、トヨタのCVTよりは静かだ。それでも、全体的に見ればC-HRのパワートレインのほうが静粛性も滑らかさも優れている。

3008の最大の魅力はインテリアだ。一部に安っぽいプラスチックも使われてはいるのだが、基本的に手の触れる部分は高級車のように上質で、特にドアからダッシュボードにわたって使われている素材はかなり素晴らしい。

運転席前方のメーターパネル部分には12.3インチのデジタルディスプレイが装備され、ダッシュボード中央には8インチのタッチスクリーンナビが装備される。Android AutoとApple CarPlayにも対応しており、リアカメラやクルーズコントロールも標準装備される。

インテリアで唯一残念なのは小さすぎるステアリングだ。慣れればいいのかもしれないが、トヨタのドライビングポジションのほうがよっぽど優れているのに、どうしてわざわざプジョーのステアリングに慣れる必要があるのだろうか。


Winner: トヨタ C-HR
C-HRはほとんどあらゆる面で3008よりも優れていた。実用性面でわずかな問題はあるものの、今回の改良によってインフォテインメントシステムが改良されている。走行性能や静粛性、経済性は3008よりも優れているし、コストパフォーマンスも高い。

2nd: プジョー 3008
3008は燃費や乗り心地が悪く、パワートレインもさほど優秀ではなかったため、今回はこの順位となった。同じ3008の中でもディーゼルや1.2Lガソリンのほうがまだ魅力的だ。3008が欲しいなら、他のエンジンを選ぶべきだろう。3008はインテリアが素晴らしいので、コンパクトSUVの中で魅力的な選択肢であることは間違いない。