「Carscoops」によるジェネシス G80 3.8 スポーツデザイン(オーストラリア仕様車)の試乗レポートを日本語で紹介します。
ジェネシス G80はつい10年前には存在すらしていなかった車だ。当時、韓国車といえばかなり地味な存在だった。品質もそれほど高くなかった。しかし、状況は当時から大きく変化している。
現在、ヒュンダイはNディビジョンから刺激的な高性能車を発売しているし、それどころか高級車ブランドの「ジェネシス」すら登場している。そして、今回の主題であるジェネシス G80はもともと2013年にヒュンダイ・ジェネシスとして登場した車で、後にジェネシスにブランド変更されている。
設計の古い高級車をわざわざブランドを変えて発売するのはなかなか奇妙な話だ。次期型の登場もそれほど遠い話ではないだろう。それでも、現行G80には独自の魅力がしっかり存在する。
今回試乗した「Ultimate Sport Design」の価格は92,900オーストラリアドルとなる。少なくとも見た目には価格に見合った高級感はある。
スポーツデザインには専用のスポーツバンパーや19インチアルミホイール(フェイクセンターロック付き)、バイキセノンヘッドランプ、ステンレススチールペダル、デュアルクロームテールパイプが装備される。通りがかりの何人かにデザインをどう思うか聞いてみたのだが、なかなか好評だった。
G80のデザインには他のヒュンダイ車との共通性などほとんどないのだが、それでもドイツ製の競合車のようなデザインとは言いがたい。
試乗車には最高出力315PS、最大トルク40.5kgf·mの3.8L自然吸気V6エンジンが搭載されていた。トルクの数字はそれなりに優秀なのだが、他市場仕様車に設定される5.0L V8エンジン(425PS/53.0kgf·m)や、G70とスティンガーに搭載される3.3LツインターボV6エンジン(369PS/52.0kgf·m)と比べると見劣りする。トランスミッションは8速ATとなる。
設計は古いのだが、エンジンとトランスミッションの制御はかなりよくできている。自然吸気エンジンながらもパフォーマンスに不足は感じないし、センターコンソールのボタンを操作すれば「コンフォート」、「スポーツ」など走行モードを変更することも可能だ。
走行モードを変えながら運転していると、この車の欠点が見えてきた。最近の高級セダン(特にエアサスペンション採用車)は走行モードを変更すると走りが大きく変わるのだが、G80は違う。コンフォートモードとスポーツモードで乗り心地の差はほとんど存在しない。ただ、もともとG80の乗り心地は良いし、アダプティブサスペンションはオーストラリアの道に合ったセッティングとなっている。
トランスミッションにも古さを感じる部分があった。DCTではないので、応答が遅く感じることもある。特に気になるのがアクセルを踏み込んだときだ。G80にはパドルシフトが標準装備されるのだが、残念なことに完全マニュアルモードにすることはできず、車が必要と判断したら勝手に変速してしまう。
G80を運転していて最も驚いたのは、外界との隔絶具合だ。110km/h程度までであればタイヤの音はまったくと言っていいほど聞こえず、長距離移動も苦にならない。完全停止・再発進対応のアダプティブクルーズコントロールシステムやリアクロストラフィックアラート、車線逸脱警報も便利だ。ただ、よっぽど安価なヒュンダイ i30とは違い、ステアリング操作を補助してくれる機能は付いておらず、こういった部分でもやはり設計の古さを感じる。
「Ultimate」専用装備のヘッドアップディスプレイは死角にいる車の情報を表示し、警告してくれる。これは運転中さまざまな場面で役に立つ。死角を確認するためにわざわざドアミラーをやたら凝視する必要もなくなる。
座る場所が前席だろうが後席だろうが、内装はよくできている。シートは上質なナッパレザーで、天井にはスエードが使われている。ダッシュボードやドアパネルには木目が使われており、センターコンソールの収納も充実している。
運転席からの眺めは良好なのだが、どうしても旧時代の香りを感じてしまう。例えば、大径の4本スポークステアリングは握り心地こそ良好ながら、どうしても古臭く見える。それに、ダッシュボードのデザインはやたら角張っているし、四角いアナログ時計はレクサスの円形の時計と比べると見劣りする。9.2インチタッチスクリーンナビゲーションも古臭く、Apple CarPlayやAndroid Autoにも対応していない。ただし、Qi規格のワイヤレス充電には対応している。
しかし、車内の贅沢装備はかなり充実している。運転席は16ウェイパワーシートで快適性は非常に高く、メモリー機能もしっかり備わっている。前席にはシートヒーターおよびベンチレーターも付いており、後席に客を乗せるときには、運転席側から助手席の位置調節を行うこともできる。
後席もセンターアームレスト内にあるコントロールパネルでリクライニングなどのシート調整を行うことができる。後席には手動式のブラインドや電動リアサンシェードも装備されており、大型のパノラミックサンルーフも付いている。
カタログ燃費は9.3km/Lなのだが、街中と高速いずれも走行した今回の試乗では平均燃費8.0km/Lを記録した。おそらくカタログ燃費を実現するのは難しいだろう。
ジェネシス G80 スポーツデザインは装備が充実しており、古さもある程度しっかり隠せている。特に長距離移動にはかなり合っているのだが、そう考えるとトランク容量433Lは少し狭く感じる。
G80は十分検討に値する車だと思うのだが、次期型モデルの登場も近いと思うので、それまで待つのも手だろう。それでも、現行G80は古臭さや欠点もあれど、独自の魅力を持っており、高級車としての実力は高い。
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