カナダ「Driving」によるリンカーン MKZ(2007年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。


MKZ

MKZはもともとリンカーン・ゼファーという名前で登場し、後にMKZに改名された。「MKZ」はリンカーンの伝統に則って「マークZ」と読むのかと思っていたのだが、フォードの広報部に聞くとそのまま「エムケーゼット」と読んでいた。

ところが、バッジでは明らかに「MK」が小さく、「Z」が大きく表記されているため、ついつい「マークZ」と読みたくなってしまう。さらにややこしいことに、今後登場するリンカーンの新型SUVの名称は「MKX」になるらしく、同クラスのアキュラ MDXと間違えてしまいそうだ。

アルファベット車名はかなりややこしいのだが(今後MKSという車も登場するらしい)、少なくとも伝統のあるタウンカーとナビゲーターについては名前が変わることはないそうだ。ひょっとしたら、このような車を購入する高齢者はややこしい名前だと何を買えばいいのか分からなくなってしまうのかもしれない。

名前を覚えるのは難しいのだが、ゼファーとMKZの違いは非常に単純だ。ゼファーには貧弱な3.0L V6エンジンが搭載されていたのだが、MKZには健康体の3.5Lエンジンが搭載される。従来の3Lエンジンは性能だけでなく静粛性も低く、まさに「弱い犬ほどよく吠える」を体現したようなエンジンだった。

rear

新エンジンは最高出力43PS、最大トルク6.1kgf·m向上して267PS/34.4kgf·mとなっている。数字的にはなんの不満もない。しかも、競合車の多くがハイオク指定である中、リンカーンはこのスペックをレギュラーガソリンで実現している。0-100km/h加速は6秒台と予測され、不足を感じることはほぼないだろう。

6速ATの性能もわずかながら改善している。さすがにティプトロニックのようなクイックさはないのだが、昔ながらの(タウンカーのような)車から現代的なスポーツセダンに近づいた。

ベースグレードは最近の高級セダンでは珍しい前輪駆動だ。ただ、数千ドルの追加費用を払えば(それでも総額4万カナダドル未満だが)4WDも選択できる。こちらはボルボと共通のハルデックス製コンポーネンツを採用しているのだが、4WDシステム自体はフォードが独自設計している。開発陣いわく、この4WDシステムはホイールスピンが起こってから対応するのではなく、事前にホイールスピンを予測して対応するそうだ。

リンカーンなので当然なのだが、この車にBMWのような性能を求めてはいけない。明らかに快適志向なので、サスペンションはかなりのロールを呈する。ただ、タウンカーとは違い、コーナーに屈するようなことはないし、レクサス ES350よりは安定感がある。リンカーンの走行性能の進化は他社に後れを取っているのだが、それでも着実に前進しているのは確かだ。

interior

内装には文句の付けようがない。まるで日本車のように作りが良く、デザインだけでなく材質も一級品だ。レザーの質感は非常に高いし、ダッシュボードやドアなどにはアウディの上級車やホンダの最上級車に使われているようなソフトな樹脂が用いられている。

リンカーンはセンターコンソールやメーター、ドアパネルなどのデザインを共通化している。この共通デザインは非常に魅力的だし、ウッドパネルは光沢がなく抑えが効いている。あちこちにメッキが輝く派手な外装とは対称的だ。

価格設定も気合が入っている。2WDモデルは37,889カナダドルからで、4WDモデルとの差額もわずか2,000ドルだ。新型MKZは非常にコストパフォーマンスが高いので、エムケーゼットと呼ぶべきなのか、マークZと呼ぶべきなのかなんて議論はもはやどうでもいいだろう。