米国「Car and Driver」によるキア K5(別名: オプティマ)の試乗レポートを日本語で紹介します。
かつて、キアのラインアップは影の薄い安物車ばかりだった。低価格レンタカーにしか使われないような車だったので、覚えていなくても無理はない。キアとそのグループ企業であるヒュンダイは長い時間をかけて当時のイメージを払拭することに成功した。いまやキアもヒュンダイも魅力的な自動車メーカーの仲間入りを果たしている。
キアは独創的な4ドアスポーツのスティンガーや実力派SUVのテルライドを生み出した。そんなキアから新たに発売される新型オプティマは相当にスタイリッシュで、キアのさらなる邁進に繋がる車になるだろう。
従来型オプティマと比べると、同じ企業が生み出した同じ名前の車(ただし、今回試乗したのは韓国仕様車なので、車名はK5となる)とは思えないほど変貌している。従来型オプティマもデザインが破綻していたわけではないのだが、新型は別次元のデザインとなっている。セクシーと表現してもいいかもしれない。
細いヘッドランプの外側にはジグザグのDRLが配置され、両側のライトを繋ぐのはキアの特徴でもある”タイガーノーズ”グリルだ。ボンネットやボディサイドにはしっかりとプレスラインが入っているのだが、決して過剰さはない。サイドウインドウ上部を走るメッキのラインはそのままCピラーを突き抜けてトランクリッドで左右の線が繋がる。テールランプの点灯部は心電図のような線を描いている。
新型オプティマはエクステリアだけでなくインテリアにも見どころがある。内装は過剰さがなくシンプルなのだが、使われている素材は非常に上質だ。ダッシュボード中央にはピアノブラックのベゼルに囲まれた10.3インチのタッチスクリーンがあり、メーター部分は12.3インチディスプレイとなっている。メーター画面は非常に高精細で、表示は走行モードによって変化する。インフォテインメントシステムも非常によくできており、メニューはしっかり整理されている。
ただし、物理スイッチ類が不足している点は問題だ。オーディオ用の音量調整ダイヤルはあるのだが、それ以外はステアリングスイッチか中央のスクリーン周辺にあるタッチスイッチで操作しなければならない。それはエアコンも同様だ。キアは従来の物理ボタンより直感的だと主張しているのだが、運転中に操作しても気が散らないのはやはり物理ボタンだろう。
このように欠点はあるものの、装備内容は高級車並みだし、細部までこだわりが感じられる。試乗車にはスタイリッシュなアンビエントライトや空気清浄システム、シートヒーター・ベンチレーター(これはちゃんと物理スイッチで操作できる)、実用的なヘッドアップディスプレイ、上質なレザーシート、ワイヤレス充電パッドが付いていた。
ドアポケットはやや狭いのだが、センターコンソールには小物がたくさん収納できる。トランクもかなり広く、乗員全員分の荷物がしっかり載せられそうだ。今回はフル乗車のテストなどはしなかったのだが、車内は4人がしっかり快適に座れそうだ。特にリアシートのレッグルームは広大で、格納式のアームレストも大きい。ドライビングポジションの調整幅も広く、使いやすいフットレストも付いており、アクセルはしっかりオルガン式ペダルになっている。ただ、座面をもう少し下げられるとなお良いと感じた。
新型オプティマの基本設計はヒュンダイ・ソナタに近い。プラットフォームやパワートレインの選択肢は共通しており、一部装備も同じなのだが、両者の個性はかなり違っている。今回は韓国の首都、ソウル周辺の街中と高速道路を運転したのだが、はっきり言って走りの楽しさでホンダ・アコードやマツダ6に対抗できるような車ではない。しかし、キア自身、そんな立ち位置を目指しているわけではないだろう。
オプティマはハンドリングがかなり安定しており、また快適性も非常に高い。ロードノイズや振動は最小限に抑えられており、穏やかながらも正確なステアリングのおかげでソウルの狭い道を走るのも苦にならなかった。ブレーキがソフトすぎて応答性が悪いのは気になったのだが、キアによると量産されるころには改善されるらしく、また北米仕様車はステアリングやサスペンションのセッティングが変更されるらしい。舗装の悪い道で気になった硬さも北米仕様では改善されるかもしれない。
オプティマ(K5)には市場によってさまざまなエンジンが設定されるのだが、北米仕様車には2種類のエンジンが設定され、現時点でハイブリッドやプラグインハイブリッドの登場予定はない。そして新型モデルにはオプティマとしては初の4WDが設定される。4WD車が北米仕様車に設定されるかは未定なのだが、日産 アルティマやトヨタ・カムリにも4WD車が登場しているので、期待したいところだ。
米国投入予定のオプティマGTには最高出力294PS、最大トルク42.9kgf·mの2.5L 直列4気筒ターボエンジンが搭載される予定だ。そしてトランスミッションはキア初の8速DCTが採用される。この組み合わせはヒュンダイ・ソナタ N-Lineに近い。
試乗車には米国投入予定のもうひとつのエンジンが搭載されていた。そのエンジンはソナタにも搭載される1.6L 直列4気筒ターボエンジンだ。こちらは最高出力182PS、最大トルク27.0kgf·mを発揮する。
嬉しいことに、試乗車に搭載されていたトランスミッションは最近増えているCVTではなく8速ATだった。変速は非常に素直で、スポーツモードに変更したり、あるいはパドル操作でマニュアル変速することによって変速タイミングを変えることもできる。ただ、基本的にはシフトダウンを躊躇いがちで、シフトアップには積極的だ。もっとも、そんなことを気にするような人はオプティマなど購入しないだろう。
オプティマの1.6Lターボエンジンは低回転域から力強く、性格は穏やかで、万人向けの味付けとなっている。ただし、高速道路での追い越しはそれほど楽々とはできない。
今回試乗したのはあくまで韓国仕様車のK5なのだが、今後登場予定の北米市場もほとんど変わらないだろう。新型オプティマは従来型よりも圧倒的に魅力的になっている。装備は高級車に比肩するほど充実しているし、おそらく4WDも設定されるので、競争力は非常に高い。ひょっとしたらソナタの客すら奪うかもしれない。
アメリカで発売されるとき、車名がK5に変更されるのか、オプティマのままなのかは分からないのだが、いずれにしてもコストパフォーマンスの高い実力派であることはほぼ間違いないだろう。アメリカでの発売時期は2020年後半に予定されており、おそらくは25,000ドル程度からの価格設定になるはずだ。
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