米国「Motor1」による日産 セントラ(2020年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。
日産の経営状況は芳しくないのだが、それでもアメリカにおける日産の自動車販売台数はかなり多い。2019年の販売台数ランキングトップ20にもローグ、アルティマ、セントラが入っている。この3台の中で最も設計の古いセントラすら、10ヶ月で173,000台以上を売り上げている。そんな中登場したのが新型セントラなのだが、この車は苦境に立たされる日産の救世主にはなれないかもしれない。
少なくとも見た目は、従来型セントラとはまったく違う車のように見える。内外装ともによりスタイリッシュになり、先進的な装備も追加されているし、エンジンも新設計となっている。しかし、それでも競合車と比べるた場合、セントラはどうしても見劣りしてしまう。
新型モデルながらも既視感を覚える人もいるだろう。実際、新型セントラのデザインにはマキシマやアルティマ、ヴァーサの要素が取り入れられている。フロントには日産の特徴でもあるVモーショングリルとブーメラン型ヘッドランプが装備され、サイドには日産では一般的なフローティングルーフが採用されている。ただ、テールランプの形状はメルセデス・ベンツ Aクラス風で、全体的なプロポーションはホンダ・アコードに近い。
ヴァーサ同様、セントラもモデルチェンジにより全高が低くなり、全幅が拡大している。全体的にプロポーションが改善したことで(新型ではルーフのみをブラックに塗ることもできる)、見た目はかなり良くなっている。特に18インチホイールを履くスポーティーグレードの「SR」は恰好良い。ちなみに、ベースグレードの「S」は16インチアルミホイールを、中間グレードの「SV」は17インチアルミホイールを装着する。
エクステリアは魅力的なのだが、セントラには2つの大きな欠点がある。ひとつ目が独自性の少なさだ。「SR」の内装にはブラックのフェイクレザーやフェイクカーボンファイバーパネルが使われているのだが、その質感はより安価なヴァーサとほとんど変わらない(ただし、セントラにはレザーシートもオプション設定されている)。
セントラの独自性はセンターパネルのサテンアルミアクセントやGT-R風のエアコン吹出口くらいしかない。試乗車に装備されていたゼログラビティシートやオプションの8.0インチタッチスクリーンも他の日産車からの流用品だ。ただ、セントラはApple CarPlayとAndroid Autoに対応している。
もうひとつの欠点が静粛性の低さだ。タイヤノイズや風切り音はかなり大きく、車内で快適に会話をするのも難しい。ただ、セントラはヴァーサより室内空間が広いので、ヴァーサよりは快適だ。セントラの前席は広大だし、リアシートは身長180cm超の私が座っても快適だった。ヘッドルーム(フロント988mm、リア932mm)とレッグルーム(フロント1,118mm、リア950mm)も競合車と比べて遜色ないレベルだ。なので、静粛性の問題はあるものの、車内の居心地は良好だ。
従来型に搭載されていた1.8L 4気筒エンジンに代わり、新型セントラには最高出力151PS、最大トルク20.2kgf·mを発揮する2.0Lエンジンが搭載される。新エンジンは従来比で最高出力20%増、最大トルク16%増となっている。トランスミッションは最新のエクストロニックCVTで、パワートレインの組み合わせは十分優秀ながらも、楽しさはない。
セントラは速い車ではない。応答性はそれほど高くないし、アクセルを踏み込めばCVTが発する金属的な不快な音が聞こえてくる。競合車に搭載されるターボエンジンと比べると、セントラの自然吸気エンジンは時代遅れに感じるし、パフォーマンスも物足りない。
しかも、日産はマキシマなどにまともなCVTを搭載しているにもかかわらず、どういうわけかセントラに搭載されている最新型CVTのフィールは従来より悪化してしまっている。このCVTはただうるさいだけでなくアクセル操作への反応も鈍い。ただ、一旦スピードが乗ってしまえば追い越し加速にも不満はない。それに、燃費性能も比較的良好だ。
「S」および「SV」はシティ燃費12km/L、ハイウェイ燃費17km/L、複合燃費14km/Lとなる。大径ホイールを履く「SR」は燃費が悪化するのだが、それでもシティ燃費12km/L、ハイウェイ燃費16km/L、複合燃費14km/Lだ。ただ、これでもホンダ・シビック(14km/L/18km/L/15km/L)やヒュンダイ・エラントラ(14km/L/17km/L/15km/L)には敵わない。
中国市場向けシルフィと共通の最新プラットフォームを採用している新型セントラはリアサスペンションがマルチリンク式に変更され、パワーステアリングはよりクイックになっている。日産によると、シルフィと比べてセントラはよりスポーティーなセッティングとなっているそうだ。
実際、セントラはアジリティが十分に高く、コーナリング中も基本的にフラットだ。ただし、ステアフィールは明らかに欠乏している。重さは適切なのだが、感覚は麻痺しており、フィードバックがドライバーの手まで届かない。
ヴァーサ同様、セントラにも後退時の自動ブレーキが標準装備される。また、ヴァーサではオプション設定の日産セーフティシールド360(ブラインドスポットモニター、リアクロストラフィックアラート、車線逸脱警報、オートハイビーム、リアドア警報)がセントラでは標準装備となっている。ただし、最新のプロパイロット(車線保持アシストおよびアダプティブクルーズコントロール)は装備されない。プロパイロットが欲しいならより高価なアルティマを選ぶほかない。
安全装備も充実したベースグレード「S」の価格はわずか19,090ドルで、中間グレード「SV」は20,270ドルとなる。「SV」にプレミアムパッケージ(ジュエルスタイルLEDヘッドランプ、サンルーフ、運転席8ウェイパワーシート、専用17インチアルミホイール、レザーインテリア)を装備すると22,730ドルとなる。最も高価な「SV」は21,430ドルで、プレミアムパッケージ付きだと23,600ドルとなる。
セントラは見た目がスタイリッシュで、室内の居心地も良い。従来型セントラと比べれば、明らかに良くなっている。しかし、新型セントラには欠点も多い。遮音性が低く、燃費性能が特別優れているわけでもないし、装備は充実しているとはいえ、なにか特別な装備があるわけでもない。優秀な競合車の多いセグメントだけに、セントラには突出したものが見当たらない。厳しい経営状況にある今だからこそ、日産には突出した車が必要なはずなのだが。
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