i30 N

i30 Nはブランドの確立した自動車メーカーを脅かすほどの実力を持っている。i30 N パフォーマンスは29,495ポンドという価格でフォーカスSTと同等の性能、同等の装備内容を実現している。

名前の通りi30をベースとしているのだが、性能向上のための変更点はかなり多い。サスペンションはフォーカスと同じく前がストラット式、リアがマルチリンク式になっており、アダプティブダンパーもしっかり装備されている。

電子制御LSDも装備されており、最高出力275PS、最大トルク38.5kgf·mの2.0Lターボエンジンが生み出すパフォーマンスを無駄なく路面に伝えてくれる。

走行モードは多数用意されており、4種類しかないSTとは違い、様々なパラメーターを個別に設定することができる。ステアリング、スロットルレスポンス、ディファレンシャル、ダンパー、排気音、レブマッチング、ESCそれぞれ設定を調整でき、Nモードにするとすべてが最強のセッティングとなる。

このように走行モードをカスタマイズするのは非常に面白いし、それがi30 Nのような低価格な高性能車で得られるのも驚きだ。ただし、その安さには代償も存在する。

質感はフォードやホンダほと高くない。もっとも、このような高性能車を求めるような人は質感などそれほど気にしないかもしれない。ただ、そういう人にとっても、サポート性の低いスポーツシートや競合車と比べてしっくりこないドライビングポジションは問題になるだろう。

i30 interior

とはいえ、装備は非常に充実しており、8インチタッチスクリーンには必要な機能すべてが揃っている。それ以外にも、ステアリングヒーター、シートヒーター、19インチアルミホイール、各種エアロパーツ、LEDライト、クルーズコントロール、オートエアコン、キーレスエントリー、DAB、ワイヤレス充電、ローンチコントロール、高性能ブレーキなどが標準装備される。フォーカスと比べても決して引けを取らない内容だ。

ただし、走りはフォーカスSTほど優秀ではない。i30 Nの走りはフォーカスほど繊細で洗練されているわけではない。

ステアリングはフォーカスほどクイックではなく、ノーマルモードだと重さは適度なのだが、Nモードにするとやたらに重くなってしまう。フォーカス同様、ダンパーはコーナリング性能重視のセッティングとなっているのだが、非常に硬いし、フォーカスとは違って角も取れていない。

乗り心地が悪いだけでなく、走行時の騒音も大きいし、特にNモードはサーキット走行以外では使うべきではないだろう。公道ではノーマルモードかスポーツモードを推奨する。i30 Nファストバックはこれより少しソフトなので、そのセッティングをハッチバックにも採用してほしい。

電子制御ディファレンシャルは基本的にはフォードと同じくらい効果的で、コーナーを効率的に抜けることができるのだが、トラクション性能はフォーカスほど高くないので、タイヤはフォーカスよりも空転しやすい。

加速性能に不満はない。0-100km/h加速は6.3秒と十分速いし、なにより無変速での加速は驚異的だった。

i30 rear

i30 Nの最大の魅力はエンジンだろう。攻撃的で迫力のある排気音は素晴らしい。さながら小さなラリーカーのように音を響かせる。i30 Nの音には個性がある。6速MTも優秀だ。

i30 Nも優秀で楽しいホットハッチではあるのだが、限界はフォードやホンダほど高くない。他の2台と比べると運転する楽しさやダイレクト感も乏しいので、どうしても見劣りしてしまう。

ホットハッチは万能でなければならないのだが、実用性に関してはi30 Nも優秀で、荷室容量は381L確保しているし、居住空間も十分に広い。

内装はフォーカスSTほど上質ではないのだが、視界は悪くないし、取り回しも良く、パーキングセンサーやバックカメラも標準装備されている。リアシートへのアクセスもしやすく、それ以外の実用性に関連する部分(インフォテインメントシステムなど)も文句はない。

i30 NはユーロNCAPで最高評価の5つ星を獲得しており、自動ブレーキや車線逸脱警報、レーンキープアシスト、6エアバッグは標準装備となる。