米国「MOTOR TREND」によるスバル・アウトバックの試乗レポートを日本語で紹介します。
選択の余地はない。もう後戻りはできない。私の乗るアウトバックの後ろには別のアウトバックが何台も連なっている。そして目の前にあるのは先の見えない急な下り坂だ。私はギアをDに入れ、ブレーキペダルから足を離した。
アウトバックはスバルの成功作であり、1995年の初代アウトバック登場以来、180万台以上を売り上げてきた。北米スバルは単なる進化よりも革新を求めていたようだが、日本のスバル本部は保守的な道を選んだ。
いずれにしても、新設計のプラットフォームは完成度が高く、剛性は向上しており、将来のNHTSA衝突安全基準も見越して十分なクラッシャブルゾーンが確保されている。
メンドシーノの太平洋沿岸を走るカリフォルニア州道1号線は緩やかなコーナーやヘアピンが連なっており、アウトバックの剛性の高さを証明してくれた。ある程度のロールはあるのだが、滑らかな舗装のおかげで非常に快適だった。ドアミラー位置が変更され、遮音ガラスも採用されたため、風切り音やロードノイズも最小限に抑えられている。
アウトバックにはブレーキベースのトルクベクタリングシステムが採用されている。このシステムは非常に優秀なのだが、電動パワーステアリングとの組み合わせにより、フィールは軽くて頼りない。偶然にも試乗中に親子連れの鹿が目の前に飛び出してきたのだが、制動力の高いブレーキのおかげで安心して止まれた。
インテリアの質感も向上している。シートは滑りにくいファブリックで、質感も高い。防水素材なので蒸れは心配なのだが、泥汚れには強そうだ。ダッシュボードも上質で、ステッチもあしらわれている。簡単に倒せるリアシートを倒せば広大な荷室が生まれるので、愛犬家にもぴったりだろう。
ダッシュボード中央にはタブレット風の11.6インチインフォテインメントディスプレイが配置されている。タッチの反応は良好で、音量調整や温度調整はしっかり物理ダイヤルで操作することができる。ナビや車両情報などの表示はディスプレイ中央部に集約され、上下部分にはエアコンなど頻繁に利用する機能の情報表示が固定されている。
まず最初は、最高出力185PS、最大トルク24.3kgf·mを発揮する2.5L水平対向4気筒エンジンを搭載するモデルに試乗した。このエンジンは高速域でも問題なく扱えた。
その後にターボエンジンを搭載するXTに試乗したのだが、私はこのモデルにWRXのスピリットを求めていた。新型アウトバックではターボエンジンが復活しており、最高出力264PS、最大トルク38.3kgf·mの2.4L水平対向4気筒ターボエンジンが搭載される。
残念ながら、このターボエンジンは私の期待通りのものではなかった。もちろん、自然吸気モデルよりはパワフルなのだが、それを感じるのは合流時や追越時のみだ。普通に運転しているときには2.5L車とほとんど違いが感じられない。グレードによって価格差は異なるのだが、2,300ドルから4,300ドル割高なターボ車を選ぶ意味はそれほどなさそうだ。
どちらのエンジンにもCVTが組み合わせられ、加速時にはちょっとしたラグが発生する。ただし、定速巡航時には回転数を低く抑えてくれるので、静粛性は高い。こういう性格なのでゆっくり景色を楽しみながらドライブするには適しているのだが、その走りは決して刺激的ではない。
今回の試乗コースはほとんどが未舗装路だった。私はスバルに指定されるがまま、森の中を、轍まみれの泥道や砂利道を突き進んでいった。視界が悪い場所や急坂もたくさんあった。そしてこういう場所でこそ、アウトバックの性能が光る。
新型アウトバックには全車にX-MODEが装備される。これはトラクションコントロールおよびヒルディセントコントロールを統合制御するシステムで、特に急な下り坂などではこの恩恵に与ることができる。
私はスタッフの指示を受け、ブレーキに足を添えて(踏んではいない)車を進めた。実際に下り坂に差し掛かると、どうしてもブレーキを踏みたくなってしまったのだが、しっかり我慢する。すると、X-MODEの制御が入り、それぞれのタイヤにブレーキがかかり、泥にもほとんど足を取られずにゆっくりと安定して下っていった。
下りきると車1台分の平地があり、すぐ先には右曲がりの登り坂が待ち構えていた。今度はトルクベクタリングシステムが右側のタイヤにブレーキをかけ、アウトバックは滑らかに前へと進んでいった。
他にも、私自身が運転したわけではないのだが、左前輪と右後輪が宙に浮いた状態で前へと進んでいく実演を見ることもできた。アウトバックはこのような状況でも駆動力を安定して伝えることができる。
沼地では(シュノーケルは付いていないので十分に注意しながら)浅瀬を渡る経験もした。沼底は平坦ではなく、車は傾いてしまったのだが、そんな状況でもX-MODEの制御のおかげでしっかりと渡りきることができた。
少しだけフロントバンパーを擦ってしまったのだが、それ以外は何の問題もなく悪路を制覇することができた。もちろん、ジープ・ラングラーのような本格的オフロードカーと比べれば劣るかもしれないが、アウトバックはオフロード風に偽ったクロスオーバーSUVとは一線を画している。
アウトバックは走破性が驚くほど高く、それでいて日常生活において必要な快適性や実用性もしっかりと備えている。
大変参考になりました、日本販売が待ち遠しい車です^ ^
auto2014
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