Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。
今回紹介するのは、メルセデス・ベンツ EQC400 4MATICの試乗レポートです。
最新の調査によると、サディク・カーン市長の環境保護政策は非常に効果的で、テムズ川にはカワウソが集まり、幼い子供たちが街中で鬼ごっこできるようになり、バークレー・スクエアにはミサゴが巣を作りはじめたそうだ。
ディーゼル車がロンドン市内に乗り入れする際に必要な金額がさらに高くなった2019年4月以降、巨大なポルシェやレンジローバーに乗っていた人達は自宅に車を置いて徒歩で通勤するようになったそうだ。グレタ・トゥーンベリを恐れて呼吸すら控えているらしい。
大本営発表の通り、ロンドン中心部を走る車が3月から9月で13,500台減少したのは事実なのだろう。しかし、交通量が減少した理由は、ロンドンの道がヴィーガン達によって占拠されていたからだ。
いや、それ以前に、ロンドンに来ようと思う人自体がいなくなったのかもしれない。市長は大気の構成成分にばかり気を取られ、市内の死体安置所が足りなくなるほど増加している殺人事件にはまったく興味を持っていない。
しかし現実的には、ディーゼル車の課金額が増えようと、治安が悪化しようと、甘やかされて育てられ、愛だの平和だのと理想論ばかり語る若者たちが道を占拠しようとも、大気中の二酸化窒素量は基準値を大幅に超えたままだ。
どうしてだろうか。環境保護論者たちにその理由を尋ねれば、すぐに教えてくれる。不浄な右翼のEU離脱論者たちがディーゼルのタクシーに乗り、ディーゼル課金を逃れているのがその理由らしい。それから、私のような自己中共が課金も気にせずにレンジローバーで美容院に通っているのも問題だそうだ。すべてはトーリー党が悪い。
公共交通機関が環境に悪影響をもたらしていると言うような人間はどこにも存在しない。ロンドンでは3,669台のハイブリッドバスが運行しており、他にも155台の電気バス、10台の燃料電池バスが走っているそうだ。しかし、この和をロンドンのバスの総数から引くと、5,308台のディーゼルバスがロンドンを走っている計算になる。
ディーゼルバスの燃費など1.9km/L程度だし、大抵は耄碌した老人が1人乗っているだけだ。それから、ハイブリッドカーが湧き水とスイセンを燃料に走っていると勘違いしている人のために解説しておくが、ハイブリッドのバスも軽油で走るし、燃費はせいぜい2.2km/L程度だ。ハイブリッド化による改善分は1km/Lにも満たない。
バスはブレーキやタイヤ、それに路面から微粒子を発生させるし、その巨体が道を走るたびにちりが巻き上げられる。さらに、バス専用に用意された車線のおかげで渋滞まで発生するし、酷い騒音も引き起こす。Radio 1よりも不愉快な音だ。
ロンドン市政に携わる人に提案がある。いや、ロンドンのみならず、あらゆる大都市に関係する話だ。自家用車やタクシー(今やどちらにしてもほとんどがハイブリッドだ)に対する無差別攻撃をやめ、攻撃対象をもっと大きな車に変えるべきだ。
現在、自転車と乗用車とバスがそれぞれ車線内で戦争を巻き起こしている。そもそも、狭い道路でこの三者が共存することなど不可能だ。
地球温暖化を防ぐためには、バスという制度自体をなくしてしまうべきだ。もちろん、エコ信者はこれに強く反対するだろう。しかし、彼らも時代の変化を受け入れるべきだ。バスに乗るのは諦めて、自転車を買うべきだ。あるいは、もっと真面目に働いて自動車を購入するべきだ。
メルセデス・ベンツ EQC400 4MATIC AMG Line プレミアムプラスという名前からは高級クルーザーを想像する人もいるかもしれないが、これも歴とした自動車だ。しかも、純電気自動車なのでエコ信者にとっても都合が良い。
ただし、これを購入するためにはかなり真面目に働かなければならない。これはただの5ドアハッチバックなのだが、価格はなんと補助金なしで74,610ポンドもする。これほど値段の高さに驚いたことはない。予想の2倍近い値段だ。
ジャガー I-PACEとは違い、この車は基礎から電気自動車として設計されているわけではない。既存のプラットフォームを流用しているため、車重はノッティンガムシャーとほとんど変わらない。そのため、1回の充電で走行できる距離はジャガーよりも短い。
これが大きな問題となる。私は最初、農場周辺の移動にEQCを利用していた。4WDなので悪路も走れると思っていた。ところが、EQCの履く舗装路用タイヤは濡れた路面ではまるで役に立たなかった。
その後、ロンドンに行く用事ができた。ヒューズが飛んでしまうのでコッツウォルズの自宅で充電することはできないし、ロンドンのマンションも借りているのが高層階なので車を充電することなどできない。
一応は往復できるくらいの電気は残っていたのだが、かなり際どく、不安に苛まれながら運転などしたくなかったので、バスを使うことすら考えた。しかし、バスなど使えば大切な地球を傷付けてしまうかもしれないので、代わりに自分のレンジローバーを使うことにした。
問題は他にもある。EQCのナビには最寄りの充電施設まで案内してくれる機能がある。しかし、私の農場付近の充電施設は見つけてくれなかった。EQCは自動車としては使い物にならない。
電気自動車としてはそれほど悪くないのだが、気になる部分もいくつかあった。そもそも、ラジエーターが存在しないのにどうしてラジエーターグリルが存在するのだろうか。変速機が存在しないのにどうしてパドルシフトがあるのだろうか。どうしてモーターの見た目がエンジン風に偽られているのだろうか。電気自動車にとって最も重要な航続距離の表示が、どうして老眼鏡を掛けなければ読めないほど小さいのだろうか。
けれど、EQCは速い。本当に速い。最高出力408PSなのだから、速くて当然だ。それに、安定性もかなり高い。おそらくは旅客機級の車重のおかげだろう。私はEQCの走りが気に入った。それに、車内の居心地も良かった。
基本的に車内は他のメルセデスと変わらないのだが、操作系は非常に先進的で、ただその先進性に意味が存在しない。どれだけ運転に慣れた人でもまともに操作することはできない。初めてこの車に乗った人は左折しようとして間違えてニュートラルに入れてしまうだろう。
自家用操縦士の免許を持っている人なら、きっとパイパーの軽飛行機くらい、半分寝ながらでも操縦することができるだろう。しかし、そんな人がF-35戦闘機を操縦し、空中給油までこなすことができるだろうか。取扱説明書とにらめっこしなければどうやったって操縦などできないだろう。
新しい操縦方法を学ぶ価値などあるのだろうか。もし電気自動車のあるライフスタイルが必要なら、その答えはイエスだろう。電気自動車の走りは素晴らしい。しかし、I-PACEのほうがずっと優れた車だ。I-PACEのほうが明らかに見た目が良いし、基礎からちゃんと電気自動車として設計されている。
ロンドン市長はおろか、
イギリス首相になったら、
全てが上手く行きそうですね・・・。
ブレグジットもすぐに解決
できるのではないでしょうか。
auto2014
が
しました