カナダ「Driving」によるシボレー・ヴォルト(2012年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。
※内容は2012年当時のものです。
※Voltは一般的に「ボルト」と表記されていますが、シボレー・ヴォルト (Chevrolet Volt) とシボレー・ボルト (Chevrolet Bolt) を区別するため、当サイトでは「ヴォルト」と表記させていただきます。
先日、帰宅中にラジオを聴いていて、シボレー・ヴォルトについて詳しく知る人が少ないということを知った。そのラジオのコメンテーターは日産 リーフやシボレー・ヴォルトのような電気自動車が通勤に十分な航続距離を達成できていないと語っていた。
確かに純粋な電気自動車の話ならばそれは事実なのだが(航続距離はせいぜい160km程度だろう)、ヴォルトは別だ。ヴォルトの先進的なパワートレインは最大600kmの航続距離を実現している。これだけあれば航続距離の不足など感じる人はいないだろう。
ヴォルトはいわゆるレンジエクステンダーEVであり、駆動力のすべてが正真正銘の電気モーターによるものだ。16kWhのリチウムイオンバッテリーを充電することで45km(公称値は60kmだが、現実的には天候などの影響がある)の走行が可能だ。
その後、ヴォルトは64PSの4気筒1.4Lエンジンを発電機として利用することでさらに走り続けることができる。メカニズムはディーゼル・エレクトリック方式の機関車と同じで、エンジンと駆動輪は繋がっていない。
発電機により生み出された電気だけでなく、回生ブレーキにより回収された電気エネルギーもバッテリーに蓄えることができる。この機構によってバッテリー残量が少なくなっても電気のみで駆動することが可能となり、航続可能距離の表示が0kmの表示となっても50km/h以上で走り続けることができる。
以上がヴォルトの仕組みなのだが、実際の走りはそれほど複雑ではない。スタートボタンを押すとハイテク風な音が流れ、アクセルを踏めば驚くほど軽やかに加速していく。車重1,715kgに対してモーター出力152PSというのは物足りないようにも思えるのだが、実際の加速は想像以上だった。ヴォルトのモーターは37.7kgf·mという大トルクを発進直後から発揮してくれる。おかげで、0-100km/h加速は9.8秒を記録し、80-120km/hは7.4秒でこなす。
高速道路中心に700kmほど運転したのだが、平均燃費は16.9km/Lだった。これだけ見ても凄い数値とは思えない。しかし、そこから街中に出て30kmほど走ってみると、燃費は24.4km/Lまで向上した。これは私が今まで経験した中でも最良の燃費だ。
車自体は基本的に普通だ。5人乗りで荷室は300L確保されている。ただし、ほとんどの操作系がタッチ方式になっている。真っ白なセンターパネルに表示されているアイコンをiPadのようにタッチすることで操作を行う。センターパネル最上部には7インチスクリーンがあり、同様にタッチで操作を行う。
メーターもデジタルディスプレイで、中にはボールが表示されており、そのボールが中央寄りになるほど経済的な運転となる。アクセルを踏めばボールが下に移動し、ブレーキを掛けるとボールが上に移動する。おかげで、まるでゲームをしているような感覚で運転できる。
ヴォルトは走行性能も高い。サスペンションは快適ながらもロールは十分に抑えられているし、ステアリングには十分なフィードバックがある。ブレーキフィールは普通の車と比べるとやや違和感はあるのだが、回生ブレーキ採用車であることも考慮すればそれなりに扱いやすい。
電気自動車は走行中にほとんど音を発さないため、歩行者にとっては脅威になりやすい。もちろん、クラクションを使えば歩行者にも気付いてもらえるのだが、ヴォルトの場合、そんなことをしなくてもウインカーレバーにあるスイッチを押すことで警告音を鳴らすことができる。
ただし、すべてが完璧というわけではない。こういう車なので、航続距離(燃費)を最大限に向上するためにエアコンの設定をエコモードにしたくなる。外気温が10℃以上ならいいのだが、それ以下の気温だと足先が冷え切ってしまう。このため、コンフォートモードを使わざるをえなくなる。
240Vの充電器が使えない場合の充電時間も長い。110Vの場合、12時間もかかってしまう。他にリアウインドウにも問題がある。上下二段に分割されているため後方視界が悪く、ワイパーも使えない。ただ幸い、795ドルのオプションとしてバックカメラは用意されている。
シボレー・ヴォルトは市販車の中でも最も先進的な車と言えるだろう。経済的で環境にも優しく、ガソリンと電気を組み合わせることで航続距離に対する不安も解消している。なにより、ヴォルトは普通の車のようにまともに走ってくれる。
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