米国「Car and Driver」によるキャデラック XT6の試乗レポートを日本語で紹介します。
多くの自動車メーカーは大衆車も高級車も作っているのだが、そこに触れる人は少ない。自動車メーカーなら普通のことなのだが、それを大々的に言いふらすことはしない。GMが作るキャデラック XT6も同じだ。XT6を購入する顧客は、その中身のかなりの部分がシボレーと共通であることに気付いてすらいない。
XT6にはミドルクラスSUV用のC1プラットフォームが採用されており、トレッドは広く、ホイールベースは比較的短く設定されている。同じプラットフォームを採用するモデルの中で見ると、ボディサイズはGMC アカディアに近く、ビュイック・アンクレイブやシボレー・トラバースよりはホイールベースが短い。
XT6のデザインの原点となっているのはスタイリッシュなエスカーラコンセプトなのだが、背の高いSUVになってしまった結果、冷蔵庫と電子レンジを並べたような、エスカーラとは似ても似つかないプロポーションとなってしまった。
少なくとも、このボディ形状のおかげで効率的に人員を輸送することはできる。XT6は3列シート6/7人乗りで、居住空間はXT6より大きなエスカレード(ストレッチモデルのESVを除く)より広い。平均的な大人なら3列目にも問題なく座ることができる。ただし、3列目まで使うとその後ろの荷室にはせいぜいスーツケース2個くらいしか入らない。
インテリアデザインはエクステリアよりも魅力的だ。オプションのプラチナムパッケージを選択すると、上質なレザーが車内を覆うため、中身が大衆車と共通であることを忘れさせてくれる。プラチナムパッケージにはレザーシートやスエード調ルーフ、カーボンファイバーもしくは本木目パネルなどが含まれる。
CUEインフォテインメントシステムはダイヤルによる操作が可能となったのだが、依然としてBMWのiDriveやアウディのMMIよりは使いづらい。
XT6には最高出力314PSの3.6L V6自然吸気エンジン以外の選択肢は存在しない。カマロとの組み合わせであれば、よく回るし、優秀なエンジンであると実感できるのだが、2トン超のXT6との相性はそれほど良くない。これくらいの重さであれば低回転域のトルクに優れたターボエンジンのほうが合っているだろう。ただ、少なくとも9速ATは滑らかで、V6エンジンのパフォーマンスを最大限に活かすことができていた。
XT6は最も安価な「Premium Luxury」が53,690ドルで、4WDを選択すると2,000ドルの追加費用が必要となる。名前負けする「Sport」はそれよりさらに2,400ドル高く、こちらにはFFモデルは設定されない。「Sport」には専用ステアリングやアダプティブダンパーが装備され、後輪は左右のトルク分配も可能となっている。
キャデラックは「快適性と操作性の両立」を重視したサスペンションセッティングを目指したらしいのだが、実際は快適性寄りのセッティングとなっており、操作性はやや犠牲になっていると感じた。
遮音性は高く、1,000ドルのオプションである21インチホイールを履いてもそれほど乗り心地は悪くならない。ロールは十分に抑えられており、トルクベクタリングシステムのおかげでコーナーも問題なく進むことができる。このように操作性は決して低くないのだが、かといってこの走りを「スポーティー」と表現することはできない。
同様に、この車を「シボレー」、「GMC」、「ビュイック」と表現するべきではないだろう。
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