米国「MOTOR TREND」によるカンパーニャ T-REX 14Rの試乗レポートを日本語で紹介します。


T-REX

ほとんどの車はエンジン性能が10%や20%増えても十分に対応できるくらいの余裕を持っているのだが、三輪自動車のカンパーニャ T-REX 14Rは例外だ。この車には必要十分のエンジンが搭載されており、5,000rpmまで回してクラッチを繋げれば100km/hまでわずか3.9秒で加速していく。これはスーパーカーの領域であり、イタリアやドイツの高性能車も脅かせる数字だ。

T-REXは自動車ではない。製造が行われている北米(カナダ)の運輸省の規定ではバイクとして登録される。T-REX 14Rは2009年の東京モーターショーで日本初披露となったので、今回は東京南部の山道で14Rに試乗することにした。

T-REXはモントリオールの工場で手作業で製造されており、1.5インチの鋼管から作られたシャシがガラス繊維のボディパネルに覆われている。乗員の後方にはカワサキ・ニンジャ ZX-14用の4気筒1,352ccエンジン(最高出力200PS)と6速MTが搭載されている。バイクに詳しくない人のために説明すると、ニンジャは世界最速レベルの二輪バイクだ。T-REXではリバースギアが独立レバー付きの専用品に変更されている。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン式、リアがスイングアーム式となる。

T-REXへの乗り込みはかなり大変だ。身長190cmもあると可能な限り腰を曲げないと乗り込むことができない。乗り込む際には一度ステアリングを外し、右脚から入れて体を捻らせながら左脚を車内に押し込む。幸い、背もたれとペダルは位置調節が可能なので、ある程度の融通は効く。

T-REXには決して退屈しない。まるでバンジージャンプでもしているかのごとく、生々しいスリルが止めどなく押し寄せてくる。200馬力がたった1つのタイヤに伝わるため、アクセルペダルのストロークはかなり長くなっている。14Rは11,000rpmまで回すことができるのだが、最初の30分間は5,000rpmまで回して満足だった。それ以上を求めれば死に直面しそうな予感さえした。

T-REXに乗ると一から運転を学び直しているような気分になる。コーナーを、直線をクリアしていくごとに上手くなっていくことが実感できる。ステアリングからはしっかりとフィードバックがあり、車の限界を実感することができる。しかし、しばらく乗っていると(少なくとも公道では)T-REXの限界に近付くことさえできないということを悟る。

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一度6,000rpmで1速からの加速を試してみたのだが、狩猟時のチーターのように飛び出し、2速で100km/hを超えてしまい、道が尽きてしまった。9,000rpmまで回せたS2000に負けず劣らず刺激的なエンジンだった。しかも、S2000とは違い、1,400ccのエンジンは自分の耳のすぐ後ろにあるため、100%のスリルを体感することができる。

5,000rpm以上まで回すと、どのギアであっても相当に速く、特に1速と2速はエッジが効いている。グリップ性能も適度なのだが、その限界を試すならかなり慎重になったほうがいい。5,000rpm以上でグリップを失うとかなりのテールハッピーになる。その名の由来となった恐竜のように、いつ噛み付いてきてもおかしくはない。

リアには295/35ZR18のBFグッドリッチを履いているのだが、これだけ太くても簡単にグリップを失ってしまうため、ドリフトキングでもなければ扱いきれないだろう。三輪車はコーナリングが楽しいのだが、一度トラクションを失ってしまうと修正するのがかなり難しい。綺麗なドリフトをさせるのは至難の業だ。しかし、限界を超えないように操ってやれば、コーナーを二輪車以上に楽しむことができる。

ギアチェンジも非常に生々しく、バイクに乗り慣れた人なら自然に扱えるだろうが、自動車しか乗ったことのない人には慣れが必要となる。運転席からの眺めはF1カーのそれに近い。道路からわずか数センチの高さに座り、自分と外界を覆う壁もほとんどなく、あらゆる機械音が直接自分に伝わってくる。

T-REXを運転しているとき、決して穏やかではいられない。安全装備や贅沢装備に守られた最新のスポーツカーとは違い、T-REXはすべてがナマモノだ。パワーステアリングも、ブレーキブースターも、トラクションコントロールも、エアバッグも、オーディオも、エアコンも存在しない。しかしステアリングは正確で、フィードバックにも満ちており、すぐそこにある道路の状況が手に取るように理解できる。

ブレーキをかけるとウィルウッド製4ピストンキャリパーから”シュー”という金属音が聴こえてくる。ブレーキペダルフィールは慣れが必要で、十分な制動力を発揮させるためにはかなり踏み込まなければならない。

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サスペンションアームの動きも直接見ることができるので、路面の衝撃も直感的に理解できる。(少なくとも日本の法律では)T-REXの運転時にヘルメットは不要なのだが、飛び石などの対策のためにフルフェイスヘルメットの装着を推奨したい。

T-REXは公道を走行できるマシンの中でもかなり純粋な車だ。0-100km/h加速は日産 GT-Rと同等でありながら、車重はマツダ MX-5(日本名: ロードスター)の半分以下だ。実際に計算してみてほしいのだが、パワーウェイトレシオは驚異的だ。

T-REX 14Rの性能は過剰なほどだ。プロのレーシングドライバーでもない限り、T-REXの全力のせいぜい55%くらいしか引き出せないだろう。普通の道でそれ以上を出そうとしたらリアタイヤが暴れて逆向きに走ることになるだろう。サーキットでは限界に近付くことができるかもしれないが、F1ドライバーの技術と勇気が必要だ。

14Rの価格は660万円(アメリカ仕様は51,999ドル)で、この価格で唯一無二のマシンを手に入れることができる。公道でバンジージャンプやスカイダイビングのスリルを求める人にはぴったりの車だ。ただし、限界はしっかり理解しておいたほうがいい。