オーストラリア「CarAdvice」によるヒュンダイ iMax Nの試乗レポートを日本語で紹介します。
やはり考えることはみんな一緒のようだ。欧州ヒュンダイは今年のエイプリルフールにiMax NのCG画像を公開していた。しかし偶然にも、その頃にはすでにヒュンダイ・オーストラリアが本物のiMax Nの開発に取り掛かっていた。
残念ながら、408PSのツインターボV6エンジンを搭載するモンスター、「ドリフト・バス」ことiMax Nが発売される予定はない。
これまで、フォード・トランジット スーパーバンやルノー・エスパスF1といったワンオフのモンスターミニバンが登場してきたのだが、iMax Nはこの2台とは違って8座のシートレイアウトをそのままにしているため、7人の同乗者を連れて運転することができる。
もともとは内輪のノリで生まれた構想なのだが、すぐに表舞台に出てくることになった。iMax Nはシドニー・モータースポーツパークで開催されたWTAC (World Time Attack Challenge) で初公開となった。我々はそれに先立ち、シドニーの200km南西にあるマルーランのフェザントウッド・サーキットでiMax Nのステアリングを握ることができた。
まずは外観から見てみることにしよう。iMax Nのボディカラーはパフォーマンスブルーで、タイヤとホイールはi30 Nのものがそのまま流用されている。フロントブレーキは車重を考慮して4ピストンキャリパーと大径ディスク(348mm)を組み合わせているが、リアはドラムブレーキのままだ。
フロントに装着されるスプリッターには日産 GT-R用に開発されたアフターパーツの部品が使われており、リアバンパーはi30 N用のものを一部改造してそのまま装備している。そして、前後にはヒュンダイの高性能ブランド「N」のバッジが装着されている。
内装に目を向けると、シートはi30 Nの流用品で、ステアリングおよびシフトパドルもi30 Nと共通だ。リア2列のシートにも専用のステッチとロゴが追加されている。
搭載されるツインターボV6エンジンも普通のヒュンダイ車用のものをベースとしているのだが、最高出力408PS、最大トルク56.6kgf·mに強化されている。トランスミッションは8速ATで、スプールデフを介して後輪を駆動する。
もともと4気筒ディーゼルエンジンが搭載されていたスペースにV6を搭載するのは難しいため、V6エンジンおよびトランスミッション用の専用マウントを作り、ダッシュパネルが取り外されている。また、プロペラシャフトも専用品となっている。
高性能エンジンを搭載した2.2トンのバンをタイトコーナーだらけのサーキットで走らせるのは至難の業だ。最初は開発陣の運転に同乗していたのだが、そのせいで私が運転する頃にはターボが作動しなくなってしまったらしく、思ったほど速くは感じなかった。
開発者の1人がエンジン音を聞いて異常を察知したのですぐにピットに入り、Bluetooth経由でiPadを使ってECUの調整を行い、再びサーキットへと繰り出した。その後の印象は最初とは一変した。私はその狂気に圧倒された。ターボチャージャーが作動してからの加速は激烈だ。
2.2トンの巨体と格闘していると高層ビルくらいの高さのものを操縦しているような感覚に陥る。いくらハイグリップタイヤを履いてサスペンションもチューニングされているとはいえ、とてもコーナリングを楽しんでいる余裕などない。
しかも、エンジンの熱は車内にしっかり伝わってくるし、エアコンも付いていないため、車内はかなり暑い。iMax Nのプロモーションビデオでサンルーフが開いている理由もこれだ。そうしないと呼吸すらも難しい。
重さはブレーキとタイヤに負荷をかける。しばらく運転しているとうんざりしてしまう。重くて背の高いバンに高性能エンジンを載せるのはありがた迷惑なだけかもしれない。
しかし、「N」の本質は純粋な速さではなく楽しさにある。iMax Nは運転するのも一苦労なのだが、そこには突出した魅力もある。速く走らせようとなどせずに、アクセルを踏み込んでリアタイヤを消耗しつつドリフトさせればいい。この車はそのために設計されているのだから。
iMax Nの設計思想はフォードやルノーのモンスターミニバンとは違う。これは速く走るための車ではなく、ドリフトを楽しむための車だ。
auto2014
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