カナダ「Driving」による新型 シボレー・コルベットの試乗レポートを日本語で紹介します。


Corvette

ついに新しいミッドシップコルベットの運転席に座ることができた。ただし、まだしっかり運転したわけではない。ステアリングを回したり、アクセルペダルやブレーキペダルを踏んだりはしたのだが、あくまでデトロイト郊外のワインディングロードをわずか45分運転しただけに過ぎない。

それでも、C8がどんな車なのかある程度理解することはできた。少なくとも、日常的な走行条件においてどのような走りをするのかはお伝えできる。さて、前置きはこれくらいにしよう。

この車の走りは他のミッドシップスーパーカーにも似ている。フロントエンジン時代のコルベットと比べると、ステアリングは重くてダイレクト感も増している。車の中央に座っているという感覚もちゃんとある。事実、座席があるのは車の重心にほど近い位置だ。スモールブロックLT2の音はすぐ後ろから聴こえてくるので、いかにエンジンが近くにあるのかを実感する。

それだけではない。ミッドシップカーは慣性モーメントが小さいという事実がある。慣性モーメントは車の重心からエンジンなどの重量物がどれだけ離れているかに依存する。

例えば、C7コルベットのエンジンは車のかなり前方に搭載されており、トランスミッションは車の後方に搭載されている。要するに、重量物が前後に分散している。長い棒の両端におもりが付いている状態をイメージしてもらえば分かりやすいだろう。それを回すのは簡単なことではない。しかし、そのおもり2つを棒の中央に寄せたら今度はよく回るようになる。

このようにしてミッドシップカーは慣性モーメントを抑えている。この違いは常識的な速度で運転していても実感できる。C8コルベットは1,530kgという車重から想像されるよりもずっと軽やかで応答性も高い。まだサーキットでは運転していないのだが、それでもポテンシャルの高さは感じた。

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快適性も驚くほど高かった。ツアーモードでの乗り心地はこれまで乗ってきたミッドシップカー(そこにはマクラーレン GTも含まれる)の中で最もしなかやだった。ただ、磁性流体ダンパーのおかげで乗り心地があまりにもしなやかなので、従来のコルベットの顧客からすれば(ジェンダー的視点からすれば不適切な表現かもしれないが)「男らしくない」と思われてしまうかもしれない。

ただ、心配することはない。スポーツモードやレースモードにすればまさにコルベットらしい硬さが戻ってくる。それだけでなく、サスペンションの硬さ、ステアリングの重さ、スロットルレスポンスを個別にカスタマイズする機能まで付いている。もちろん、コルベットの真価が発揮されるのはヘアピンなのだが、実際にC8に乗って一番驚いたのは乗り心地の良さだった。

今回はわずか45分間しか乗っていないのだが、それでも内装の問題点を見つけてしまった。液晶メーターの表示には面白みがない。とはいえ、四角形のステアリングはうまく設計されており、おかげでメーターも見やすいし、ステアリング形状のせいで運転がしにくくなっているわけでもない。

センターコンソールには大量のボタンが並んでいるのだが、ちゃんと合理的に配列されている。運転席からの眺めはまさにコックピットという感じで、高級ブランドのスーパーカーよりも魅力的かもしれない。それに、ボタン類はいずれも見やすくて操作もしやすい。これ以上求めるものなどないくらいだ。

中央のタッチスクリーンは位置も適切だし、メルセデスやBMWのように安っぽい感じにディスプレイだけ飛び出しているわけでもない。ドライブモードセレクターの見た目も非常にスタイリッシュだ。

ただし、全体的な質感ではフェラーリどころかアウディにも届いていない。それでも、以前のコルベットと比べればパーツ間の隙間の大きさやレザーの質感が大幅に進歩しており、価格が旧型と比べてそれほど上がっていないことも考慮すれば、やはり評価すべきだろう。

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最高出力502PS、最大トルク65.0kgf·mというスペックはコルベットとしてまったく不足はない。今回の試乗ではその全力を引き出すことはできなかったのだが、少なくともポテンシャルはしっかりと実感した。ただ、エンジン音はもう少し演出的でも良かったと思う。

Z51でさえ、6.2Lスモールブロックの音は従来のコルベットほど仰々しくはなかった。ひょっとしたら今後登場するZ06に備えて余力を残しているのかもしれないが、安価なモデルでもピストンの歌声を楽しみたい。

0-100km/h加速3秒の7万ドル未満で購入できるミッドシップスーパーカーなど前代未聞だ。しかも、上述したように快適性は高く、内装も十分に上質だし、シャシの剛性も高いので、なおのこと69,998カナダドルという価格が信じられない。ナッパレザー内装の最上級グレード「3LT」でさえ、85,398カナダドルと十分に納得できる価格だ。

最も魅力的なグレードは14スピーカーBOSEオーディオシステムやシートヒーターおよびベンチレーター、ワイヤレス充電機能、各種先進安全装備が標準装備される79,898カナダドルの「2LT」だろう。これにZ51パフォーマンスパッケージ(専用マフラー、専用サスペンション、電子制御LSD、ミシュラン Pilot Sport 4S、ブレンボ製モノブロックフロントキャリパー)を装備しても価格はわずか85,798カナダドルだ。

サーキットでの走りが公道と同じくらい優秀であると仮定すると、新型コルベットは世紀のお買い得スーパーカーと言えるだろう。