米国「AUTOWEEK」によるエモリー・モータースポーツ 356 アウトロー(1957年式ポルシェ 356A)の試乗レポートを日本語で紹介します。


356 Outlaw

最初期のポルシェなど畏れ多く、厳密に管理された空間で、手袋をはめて慎重に運転しなければならないと思っている人も多いだろう。しかし、そんなポルシェを好き勝手改造し、好きなように運転できるとしたらどれだけ楽しいだろうか。

エモリー・モータースポーツは356のレストアを行っているのだが、その完成形はかつてシュトゥットガルトの工場から出てきた姿とは大きく異なる。993のシャシに356のボディを載せ、C4のドライブトレインを搭載した車を作ることもある。それどころか、興味本位でボディに手を加えることさえある。

経営者のロッド・エモリー氏の名刺にはこんなことが書かれている。
エモリー・モータースポーツはノース・ハリウッドで設計・製造を行っています。私達はオリジナルを丁寧にレストアし、さらなるパフォーマンスを付加しています。私達の目的は、ポルシェのクラシックデザインと私達独自の信条の融合です。

世の中には純粋主義者と呼ばれる人がおり、そういう人達はオリジナルを崇拝している。一方でディスクブレーキの制動力を求める人もいる。この両者がエモリー・モータースポーツの方針に賛同してくれるかといえば、必ずしもそうとは限らないだろうが、少なくともエモリーのポルシェはサーキットで問題なく走ることができる。

我々が対面したのは1958年式の356Aクーペだったのだが、新車当時に搭載されていたエンジンの代わりに、911用の3.6L 水平対向6気筒エンジンを分解して2気筒を外し、排気量2.4Lとなったエンジンが搭載されていた。48mmのIDAキャブレターが搭載され、911用の冷却ファンを使ったドライサンプシステムも採用されている。エンジン出力は188PSで、新車当時の約75PSと比べると大幅に向上している。トランスミッションは901用の4速MTが採用され、188PSのエンジンを難なく扱うことができる。

rear

リアサスペンションも901用のものがベースで、トレーリングアームは狭幅の専用設計となっている。ホイールも専用の15インチアルミで、セラミッククリアコート仕上げとなっており、その内側にはディスクブレーキが奢られている。タイヤも最新のダンロップ SP Sport 2000(195/65R15)を履いている。中身はオリジナルとはまったく違うのだが、見た目からはそんなことなど分からない。

内装もほぼオリジナルそのままだ。昔ながらのレザーシートにはホールド性などほとんど存在しない。緑のカーペットの見た目もオリジナルとほとんど変わらない。ただし、ステアリングはナルディ製で、スマートフォン用のジャックも用意されている。

エモリーは2種類の車を製造している。見た目はオリジナルに忠実だが、中身はまったく別の車。そして、見た目も中身もオリジナルとは別物の車だ。いずれも中身はエモリーが独自に作り上げている。前車は「アウトロー」と呼ばれ、後者は「エモリー・スペシャル」と呼ばれる。

ロッド・エモリーの家系は3世代にわたって自動車に関わっている。彼の父は昔のポルシェの部品を守るための会社を設立しており、彼の祖父は1948年にバーバンクにカスタムショップを開業した。

エモリーはポルシェをいじるために生まれてきたような子供だった。彼は世代を超え、今日に至るまでポルシェとともに生きてきた。
他の子供たちがレゴや知育玩具で遊んでいるのを横目に、私はポルシェの部品で遊んでいました。10歳になる頃には父親のレストアの仕事を手伝うようになっていました。

interior

この車がオリジナルに対する冒涜なのかどうかを判断する前に、やはり運転してみないことには始まらない。エモリー・モータースポーツの356はすぐにドライバーに馴染んでくれる。昔の356や初期911のオーナーなら、この緑のシートを懐かしむはずだ。トランスミッションは少し摩耗している感じもあるのだが、それでもちゃんと変速してくれる。クラッチを繋げる感覚は懐かしく、昔を思い出す。ステアリングは軽くて正確で、素晴らしき過去のスポーツカーを彷彿とさせる。

そして走り出せば馬力の向上の恩恵を実感する。車重わずか900kgに188PSのエンジンを搭載しているので、パワーウェイトレシオはおよそ4.79kg/PSで、現代の基準でもそこそこ高性能だし、言うまでもなくオリジナルとは比べ物にならない。音も加速性能も356とは全く違う。トランスミッションもしっかり働いてくれたし、ブレーキにも安心感があった。この車は非常に楽しく運転できる。もちろんそれはオリジナルの356もそうだったのだが、それとはまったく違う車に仕上がっている。

価格は驚愕の175,000ドル~300,000ドル程度だ。値段はカスタマイズ内容によって大きく変動する。貴重なオリジナルに手を加えることを良しとしない人も多いだろうが、ある程度の数のオリジナル個体がしっかり保管されているので、少しくらいはこういうカスタマイズをされてもいいのかもしれない。