米国「Forbes」によるフォード・エクスペディション(2019年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。


Expedition

フォード・エクスペディションは船も牽引できる巨大SUVなのだが、乗り心地や操作性も悪くはない。エクスペディションにはツインターボV6エンジンとシームレスな10速ATが搭載され、強力な加速性能と高い快適性を実現している。操作性もフルサイズSUVの中では優秀だし、2.5トンという車重も考慮すればかなり頑張っている。

エクスペディションにはランボルギーニ・ウルスやポルシェ・カイエンのような派手さはない。巨大なフロントグリルと複雑なプレスラインで存在感を主張するレクサス RXと比べても地味だ。しかし、派手さよりも車自体の実力を重視している人にとってはむしろ嬉しいことなのかもしれない。エクスペディションは小手先のデザインに頼らずとも非常に魅力的なフルサイズSUVだ。

エクスペディションのインテリアはシンプルで実直で、非常に快適だ。SYNC 3インフォテインメントシステムは非常に応答が早く、また試乗車の「Platinum」にはシートヒーターおよびベンチレーター、それに前席のマッサージ機能まで装備されており、高級ブランドのSUVと遜色ない装備内容となっている。

リアビューカメラや本革ステアリング、パーキングセンサー、USBポート(4個)などは全車に標準装備される。上級グレードの「Platinum」の装備表はアル・カポネの逮捕記録よりも長い。主なものを挙げると、レザーシート、木目パネル、パノラミックムーンルーフ、8インチタッチスクリーンインフォテインメントシステム(Apple CarPlayおよびAndroid Auto対応)、サラウンドビューカメラ、12スピーカーオーディオシステム、各種先進安全装備などが付いている。

ホイールベースは3,112mmで、2列目はベンチシートとキャプテンシートが選択できるので、7人乗りモデルと8人乗りモデルがある。嬉しいことに、3列目は曲芸名人の子供だけでなく普通の大人でも問題なく座れる広さだ。2列目シートが前に倒れるので3列目へのアクセス性も良好だ。

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さらに広大な荷室が必要な人向けに、ロングホイールベースモデルのエクスペディションMAXも用意されている。MAXのホイールベースは3,343mmで、3列目シートの後ろに1,020Lもの荷室が確保されている。ちなみに、標準車の荷室容量は566Lとなる。

ただし、各座席のレッグルームに関しては標準車もMAXも変わらない。なので、どうしても荷物をたくさん載せたいという人以外はあえてMAXを選ぶ必要はないだろう。

フォード・エクスペディションはピックアップトラックのF-150と同じシャシを使っている。最近のSUVは多くのモデルが乗用車的な走りを実現できる軽量なモノコック構造を採用している。しかし、エクスペディションは昔ながらの堅牢なフレーム構造だ。

エクスペディションの標準モデルには最高出力380PSのツインターボV6エンジンが搭載されるのだが、試乗した「Platinum」は最高出力が406PSに向上している。加速性能は高く、見た目からは想像しがたいほど速い。

当然、エクスペディションは牽引能力も高い。今回の試乗で実際に何かを牽引したわけではないのだが、カタログスペック上の最大牽引重量は驚異の4,218kgだ。

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自動車評論家の中にはエクスペディションの操作性が鈍いと指摘している人もいるのだが、私はそうは感じなかった。大型SUVやピックアップトラックの中には、狭い場所で扱いづらいと感じる車も多いのだが、エクスペディションは都市部でもそれほど不便を感じなかった。そして高速道路はかなり楽に運転できる。

エクスペディションはフルサイズSUVの新しい基準にもなれる車だ。安全装備や先進装備、贅沢装備も充実しており、競合車が見劣りしてしまいそうだ。実は、エクスペディションに乗る少し前、世界に冠たる最高級自動車メーカーが作る超高価なSUVにも試乗している。その高級SUVとエクスペディション、走りが良かったのがどちらかについてはあえて明言しないが、ヒントを出しておこう。その車にはブルーオーバルのエンブレムが付いていた。

エクスペディションの最大のライバルとなるのは同じフォードグループのリンカーンから販売されているナビゲーターだろう。エクスペディションの装備内容はインテリアではまだ満足できないというなら、リンカーンを検討すればいい。