Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのリチャード・ハモンドが英「Mirror」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。
残念なことに、僕はEタイプに乗っている。Eタイプは世界で最も美しい車だ。別に自分の車だからそう主張しているわけではなく、実際に数々のクラシックカー雑誌の読者投票でも美しい車に選ばれている。
どうして残念かと言うと、どうしてもF-TYPEと比べずにいられないからだ。F-TYPEも現代の基準で考えればかなり美しいのだが、その祖先と比べてしまうと巨大で背が高く見えてしまう。
当然、ジャガーがEタイプをそのまま復活させることはできない。当時は今のような安全基準など存在しなかった。今にも人の足首を刈り取りそうな細いフロントバンパーは歩行者保護性能など考慮されていない。当然、チャイルドシートを設置するためのISOFIXマウントなど存在しない。
F-TYPEに乗り込む前に、もう少し文句を言っておきたい。F-TYPEのドアハンドルは馬鹿げている。ドアハンドルは持ち手の反対側を押し込むことで飛び出してくる。無駄に複雑だ。
僕のEタイプには細くて美しく、手にもよく馴染む木製のステアリングが付いている。衝突安全性という視点から見るとあまりよろしくないだろうし、エアバッグを収納するためのスペースも存在しない。しかし、だからといってフランスパンくらい太いステアリングにする必要などなかったはずだ。
ともかく、実際に走ってみることにしよう。F-TYPEには3種類のモデルが用意されている。エントリーグレードには340PSの3.0L V6スーパーチャージドエンジンが搭載される。その上のF-TYPE Sには同じエンジンの380PS版が搭載され、さらに上のF-TYPE V8にはXKRと共通の5.0L V8スーパーチャージドエンジン(最高出力495PS)が搭載される。
今回はすべてのモデルに試乗できたので、読者はこの記事を読むだけで3台分の情報を得ることができる。まずは最も安いベースグレードから見てみたいのだが、それでも価格は58,500ポンドと決して安くはない。ポルシェ・ボクスターの競合車であると考えると4万ポンド台でもおかしくはないのだが、ポルシェより1万ポンド以上も高い。
スーパーチャージドV6エンジンの音は見事だ。排気システムのフラップを開くことで排気音を増強するシステムも付いている。ただ、そのシステムを使用した場合、テレビゲームの効果音のような作り物っぽさを感じてしまうこともある。
トランスミッションは8速ATのみで、マニュアルは設定されないのだが、シフトレバーもしくはパドルを操作することでマニュアル変速も可能だ。
着座位置は低く、トランスミッショントンネルとドアによる囲まれ感もあるのだが、運転席からのボンネットの眺めはEタイプほどセクシーではない。
乗り込むとXKと同じくらい大きく感じるのだが、走り始めるとそれほど大きさを感じない。ただ、車重は1,570kgなので911カブリオレより重く、ボクスターと比べるとかなり重い。
ステアリングやサスペンションはかなり出来が良く、乗り心地も良いし、ステア操作に対する反応は非常に正確だ。ダイナミックモードにすると足回りが引き締まるのだが、それでも乗り心地は悪くならない。スポーツカーほどの俊敏性はないのだが、メルセデス・ベンツ SLやXK8のような重くて巨大なGTと比べるとよっぽどスポーティーだ。
340PS仕様でも大半の顧客からすれば十分速いだろうし、特にアメリカの顧客(F-TYPEの販売の半分以上はアメリカが占めることになるだろう)はこれで満足できるだろう。しかし、最高出力が40PS向上したSに乗り換えると明らかにスポーティーさが増す。数字的な差はそれほど大きくないのだが、はっきりと速くなっていることが分かる。
さらに115PSの差があるV8モデルの性能はもはやモンスターだ。0-100km/h加速は4.0秒で、最高速度は300km/hを記録する。そしてなにより、音が素晴らしい。V8モデルの価格は79,985ポンドで、911顔負けのエンジン性能であることを考えるとコストパフォーマンスは高いかもしれない。
とはいえ、最もバランスが良いのはV6エンジンを搭載するF-TYPE Sだろう。ジャガーの予測では3モデルの販売比率はすべて同程度になるらしいのだが、個人的には中間モデルを選びたい。380PSエンジンの性能は非常に高いし、標準装着されるアダプティブサスペンションは快適性と走行性能を見事に両立している。
F-TYPEがEタイプの真の後継車であるとは言い難い。1960年代当時、Eタイプには競合車が存在しなかった。アストンマーティンにはDB5があったし、フェラーリには250GTがあったのだが、いずれもジャガーよりよっぽど高価だった。今の金額に換算すると、当時のEタイプはおよそ38,000ポンドだった。F-TYPEに木製ステアリングが付いていないのも残念なのだが、何より残念なのは当時のように安くはないことだ。
今回紹介するのは、2013年に書かれたジャガー F-TYPEのレビューです。
残念なことに、僕はEタイプに乗っている。Eタイプは世界で最も美しい車だ。別に自分の車だからそう主張しているわけではなく、実際に数々のクラシックカー雑誌の読者投票でも美しい車に選ばれている。
どうして残念かと言うと、どうしてもF-TYPEと比べずにいられないからだ。F-TYPEも現代の基準で考えればかなり美しいのだが、その祖先と比べてしまうと巨大で背が高く見えてしまう。
当然、ジャガーがEタイプをそのまま復活させることはできない。当時は今のような安全基準など存在しなかった。今にも人の足首を刈り取りそうな細いフロントバンパーは歩行者保護性能など考慮されていない。当然、チャイルドシートを設置するためのISOFIXマウントなど存在しない。
F-TYPEに乗り込む前に、もう少し文句を言っておきたい。F-TYPEのドアハンドルは馬鹿げている。ドアハンドルは持ち手の反対側を押し込むことで飛び出してくる。無駄に複雑だ。
僕のEタイプには細くて美しく、手にもよく馴染む木製のステアリングが付いている。衝突安全性という視点から見るとあまりよろしくないだろうし、エアバッグを収納するためのスペースも存在しない。しかし、だからといってフランスパンくらい太いステアリングにする必要などなかったはずだ。
ともかく、実際に走ってみることにしよう。F-TYPEには3種類のモデルが用意されている。エントリーグレードには340PSの3.0L V6スーパーチャージドエンジンが搭載される。その上のF-TYPE Sには同じエンジンの380PS版が搭載され、さらに上のF-TYPE V8にはXKRと共通の5.0L V8スーパーチャージドエンジン(最高出力495PS)が搭載される。
今回はすべてのモデルに試乗できたので、読者はこの記事を読むだけで3台分の情報を得ることができる。まずは最も安いベースグレードから見てみたいのだが、それでも価格は58,500ポンドと決して安くはない。ポルシェ・ボクスターの競合車であると考えると4万ポンド台でもおかしくはないのだが、ポルシェより1万ポンド以上も高い。
スーパーチャージドV6エンジンの音は見事だ。排気システムのフラップを開くことで排気音を増強するシステムも付いている。ただ、そのシステムを使用した場合、テレビゲームの効果音のような作り物っぽさを感じてしまうこともある。
トランスミッションは8速ATのみで、マニュアルは設定されないのだが、シフトレバーもしくはパドルを操作することでマニュアル変速も可能だ。
着座位置は低く、トランスミッショントンネルとドアによる囲まれ感もあるのだが、運転席からのボンネットの眺めはEタイプほどセクシーではない。
乗り込むとXKと同じくらい大きく感じるのだが、走り始めるとそれほど大きさを感じない。ただ、車重は1,570kgなので911カブリオレより重く、ボクスターと比べるとかなり重い。
ステアリングやサスペンションはかなり出来が良く、乗り心地も良いし、ステア操作に対する反応は非常に正確だ。ダイナミックモードにすると足回りが引き締まるのだが、それでも乗り心地は悪くならない。スポーツカーほどの俊敏性はないのだが、メルセデス・ベンツ SLやXK8のような重くて巨大なGTと比べるとよっぽどスポーティーだ。
340PS仕様でも大半の顧客からすれば十分速いだろうし、特にアメリカの顧客(F-TYPEの販売の半分以上はアメリカが占めることになるだろう)はこれで満足できるだろう。しかし、最高出力が40PS向上したSに乗り換えると明らかにスポーティーさが増す。数字的な差はそれほど大きくないのだが、はっきりと速くなっていることが分かる。
さらに115PSの差があるV8モデルの性能はもはやモンスターだ。0-100km/h加速は4.0秒で、最高速度は300km/hを記録する。そしてなにより、音が素晴らしい。V8モデルの価格は79,985ポンドで、911顔負けのエンジン性能であることを考えるとコストパフォーマンスは高いかもしれない。
とはいえ、最もバランスが良いのはV6エンジンを搭載するF-TYPE Sだろう。ジャガーの予測では3モデルの販売比率はすべて同程度になるらしいのだが、個人的には中間モデルを選びたい。380PSエンジンの性能は非常に高いし、標準装着されるアダプティブサスペンションは快適性と走行性能を見事に両立している。
F-TYPEがEタイプの真の後継車であるとは言い難い。1960年代当時、Eタイプには競合車が存在しなかった。アストンマーティンにはDB5があったし、フェラーリには250GTがあったのだが、いずれもジャガーよりよっぽど高価だった。今の金額に換算すると、当時のEタイプはおよそ38,000ポンドだった。F-TYPEに木製ステアリングが付いていないのも残念なのだが、何より残念なのは当時のように安くはないことだ。
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