フィリピン「Autoindustriya」によるホンダ・ブリオ 1.2 RSの試乗レポートを日本語で紹介します。


Brio RS

個人的に2014年に登場した初代ブリオのことは気に入っていた。取り回しやすくて燃費が良く機敏なブリオはちょっとした移動を楽しくこなせる小型ハッチバックだった。しかし、快適性や静粛性、室内空間はブリオの弱点で、内装の地味さやシートの座り心地の悪さ、値段の高さも欠点だった。

それから5年が過ぎ、ついにフィリピン市場にも新型ブリオが導入された。見た目だけでなくパワートレインも刷新され、トヨタ・ウィーゴスズキ・セレリオ、キア・ピカント、三菱 ミラージュなどの競合車に挑んでいく。

しかし、これまで他社と比べると小型車領域で出遅れ感のあったホンダが、果たして競合車以上の車を作ることに成功したのだろうか。

まずはエクステリアから見てみよう。初代ブリオのデザインは今でも好きなのだが、新型のデザインは大きく変わっている。新型のほうが成熟した印象で、より滑らかでシャープなデザインになった。プロポーションも改善しており、存在感も増している。

フロントフェイスはマイナーチェンジ後のモビリオにそっくりなのだが、ブリオもちゃんとこの顔が似合っている。ヘッドランプはモビリオと共通なのだが、グリルやバンパーは専用設計なので、しっかり個性も感じられる。テールランプはブリオの元となったRSコンセプトそのままだ。

今回試乗した「RS」には専用の外装パーツも装備されていた。15インチアルミホイールや専用リアバンパー(ディフューザー付き)はRS専用品だ。残念ながら全面ガラスハッチではなくなってしまったのだが、新しいハッチも見た目は良い。初代ブリオと比べると保守的なデザインになってしまったのだが、おかげで室内空間は拡大している。

インテリアも刷新されている。レイアウトはジャズ(日本名: フィット)やBR-Vに近く、それほど個性的ではないのだが、初代のような好き嫌いの分かれそうなデザインではなくなった。他のホンダ車との共用パーツだらけではあるのだが、だからといって別に問題にはならないだろう。

interior

エアコンの操作系からインフォテインメントシステム、12V電源(センターコンソール内)にいたるまで、あるべき場所にあるべきものがちゃんと配置されている。車内には硬いプラスチックも使われてはいるのだが、このクラスならそれも当然だろうし、逆にだからこそ細かいことを気にせず酷使できそうだ。上級グレードにはインテリアにオレンジの差し色が入り、良いアクセントとなる。

ブリオのインフォテインメントシステムはAM/FMラジオやBluetooth, USBに対応しており、スピーカーは6個搭載される。そのディスプレイの下にはエアコンの操作系が配置されている。エアコンは基本的によく効くのだが、猛暑日には物足りなさを感じる。

初代ブリオのフロントシートはサポート性が不足しており、快適性も低かった。幸い、RSのシートは新設計となっている。クッション性が向上し、ヘッドレストも独立してより快適になったので、長距離移動も従来ほど苦痛ではなくなった。しかし、残念ながらRS以外のグレードだと従来と同じヘッドレスト一体型のシートとなる。

新型ブリオの全幅および全高は初代と同一なのだが、後席の居住性や荷室容量は向上している。全長は190mm伸びて3,800mmとなり、ホイールベースも2,405mm (+60mm) となっている。その結果、後席のレッグルームが向上しただけでなく、荷室容量も84L拡大して258Lとなった。リアのベンチシートを倒せば荷室容量は700Lまで拡大する。

エンジンは1.2L 4気筒 i-VTECで、型式はL12Bとなる。初代のフィリピン仕様車には1.3LのL13A型エンジンが搭載されていたのだが、新型では排気量がわずかに小さくなっている。最高出力90PS、最大トルク11.2kgf·mを発揮し、CVTを介して前輪を駆動する。従来より最高出力10PS、最大トルク1.8kgf·m低下しているため、実際に乗る前には性能に懐疑的だった。

実際のところ、新型ブリオの車重はわずか992kgなので、小排気量でもほとんど不足は感じなかった。確かにスペック的には10PS低下しているのだが、普段の運転ではその差はほとんど分からないだろう。かなり軽く感じるし、エンジンはどの回転域でも(特にCVTのスポーツモードでは)扱いやすい。

山道ではエンジンの性能をしっかり引き出せるので楽しいし、コーナーを速く抜けることもできる。ステアリングは軽く、おかげで俊敏性はかなり高い。しかも、RSにはエコタイヤではなくブリヂストンのPOTENZAが装着される。エコタイヤとPOTENZAではハンドリングやグリップが大違いだ。

rear

しかし、追い越しをしようとするとブリオの弱点が見えてしまう。L12Bはよく回るエンジンなのだが、排気量がわずか1,199ccなのでトルクはそれほどない。高速道路や地方道で追い越しをするためには忍耐力や勇気が必要だし、十二分にタイミングを見計らう必要がある。

エンジン出力が低下した代わりに、燃費性能は向上している。新型ブリオの街中での平均燃費は1人乗車時で9.0~10.0km/L程度だ。ただし、渋滞路だと7.5~8.0km/L程度まで悪化する。一方、高速道路では18.0km/Lを記録した。ちなみに、燃料タンク容量はわずか35Lなので、給油は頻繁に必要となる。

ブリオの乗り心地はさすがにシティ(日本名: グレイス)やジャズには劣るのだが、それでもかなりしなやかだ。路面が悪い場所だと跳ねることもあるのだが、このクラスの車としてはかなり乗り心地が良い。NVH性能もかなり高く、100km/hでも普通に会話できるし、あるいはエアコン全開時は60km/hで声を上げずに会話することもできる。

ブリオの最上級グレードであるRSは727,000ペソで、このクラスのハッチバックに必要なものは基本的にすべて手に入れられる。実用性、装備内容、燃費性能、どれを見ても十分な実力がある。初代モデルに不足していた快適性もちゃんと改善されている。

競合車と比べると依然として価格は高めなのだが、苦労してようやく手に入れたマイカーとして、十分満足のいく内容になっていると思う。RSは見た目もスポーティーだし、車内の居心地も良く、燃費性能も良いので、コストパフォーマンスは十分に高いと言えるだろう。

ちなみに、ブリオで最も安価なモデルは585,000ペソで購入できる。しかし、ただの移動手段として選ぶのではなく、見た目も重視するのであれば、ブリオRSを検討する価値はあるだろう。