英国「Auto Express」によるサーブ 9-7Xの試乗レポートを日本語で紹介します。
※内容は2005年当時のものです。
サーブの開発陣はかわいそうだ。安全性や環境性能の高さで知られるサーブは今、厳しい状況にある。GMに吸収されたサーブは、販売台数をかさ増しするため、自社開発していない車を売らざるをえない状況になっている。
最初に登場したのが5ドアの9-2Xで、こちらはスバル・インプレッサがベースとなっている。続いて登場したのがアメリカでしか販売されていないビュイック・レイニアをベースとしたSUV、9-7Xだ。
デザイナーが苦心したおかげで、アメ車らしさは薄れ、見た目はかなり欧州車的になっている。ノーズはどう見てもサーブだし、内装も上質に仕上がっている。メカニズム面にも手が入っており、ある程度オフロード性能を犠牲にして、快適性を改善するサスペンションチューニングが行われている。
9-7Xには294PSの4.2L 直列6気筒エンジンと、304PSの5.3L V8エンジンの2種類のガソリンエンジンが設定される。いずれもGMの気筒休止システムが備わっているため、そこそこの経済性と十分な性能を両立している。高速巡航時などには2気筒分の燃料噴射を行わず、これによって燃費性能を向上している。
しかしながら、じっくり観察してみるとやはりGMらしさも感じられる。試乗したV8モデルの車重は2.2トンとかなり重く、遮音材もかなり使われているはずなのだが、V8のエンジン音は車内にかなり響いていた。しかも、サーブ専用のサスペンションチューニングになっているにもかかわらず、その乗り心地はいかにもアメ車的だ。
SUVの開発にあたって、乗用車的な操作性を求めるのは当然なのだが、残念ながら9-7Xはそれを実現できていない。ただ、少なくともステアリングはレイニアよりはタイトだし、路面の凹凸への対処はしっかりできている。
コーナーではスタビライザーの効果も感じられるのだが、いくらサーブがシャシ性能の向上に努めたところで、素性の悪さは隠しきれていない。
しかし、少なくとも見た目に関してはかなりスタイリッシュだ。内装デザインも魅力的で、ツートーンのレザーシートと木目パネルの組み合わせも良い。
装備内容も充実している。アメリカ仕様だと4万ドルのエントリーグレードにスタビリティコントロール、レザーシート、カーテンエアバッグ、275W BOSEオーディオシステム(6連奏CDチェンジャー付)が付いている。さらに電動サンルーフやDVDエンターテインメントシステムも選択できる。
残念ながら、9-7Xはその場しのぎの存在としか思えない。アメリカではスバル・トライベッカのサーブ版の発売も計画されているのだが、きっとこちらのほうが9-7Xよりも走行性能はずっと優れているだろう。
しかし、GMは9-7Xの存在により、サーブの顧客が日本車などに逃げることを阻止できると考えているようだ。少なくとも今は、9-7Xより優れた後継車が登場することを期待したい。
auto2014
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