カナダ「Driving」によるジェネシス G90の試乗レポートを日本語で紹介します。


G90

ジェネシス G90という車を簡単に説明すると、ジェネシスのフラッグシップセダンだ。巨大な(全長は5,205mm)G90はマイナーチェンジにより内外装ともに大幅に変更された。メルセデス・ベンツ SクラスやレクサスLSをはじめ、アウディやBMW、ジャガー、ポルシェ、テスラなどの主要な競合車に対抗するため、装備内容も見直されている。

ヒュンダイの高級車ブランド「ジェネシス」の現状はそれほど好調ではないのだが、少なくとも車自体の評価は高く、数々の賞を受賞しているモデルもある。現在、フルサイズ高級セダンの販売は縮小傾向にあるのだが、それでもジェネシスはこのセグメントに期待をかけている。現実的にカナダでの販売台数はそれほど見込めないだろうが、フラッグシップモデルの存在によるブランドイメージの向上も期待されている。

G90という車には歴史も伝統もないので、その車名にはブランドイメージはほとんど存在せず、ジェネシスもそれを理解した上で、コストパフォーマンスや安全性、品質、ランニングコストなどの改善に取り組んだ。

ジェネシスはアウディやレクサス、そしてBMW(新型7シリーズやX7は顕著だ)に倣い、巨大な五角形グリルを装備した。グリル内などには、ダイヤモンドに反射する光をモチーフとした”G-Matrix”と呼ばれるデザイン要素が散りばめられている。上下二分割の特徴的なヘッドランプも今後のジェネシスのモデルに採用されていく予定らしい。

“G-Matrix”は前後のライトや19インチディッシュホイールにも象られている。リアから翼型のエンブレムはなくなり、ボールド体で”GENESIS”と書かれているのみだ。しかし、よく見てみるとテールランプの形状自体が翼型になっていることに気付く。外装部品はルーフとドア以外すべてが刷新されているそうだ。

interior

車内に目を向けると、オープンポアウッドパネルやメッキのスイッチ類、手縫いのレザーなどが高級感を演出している。12.3インチのセンターディスプレイも刷新され、タッチ操作への反応もかなり早い。このディスプレイは横長で、画面分割機能を使えば複数の機能を同時に表示することもできる。さらに、Apple CarPlayとAndroid Autoにも対応している。

高性能なパワートレインは従来から変わっていない。エンジンは変わらず2種類設定される。標準搭載されるのは最高出力426PS、最大トルク53.0kgf·mの5.0L V8エンジンで、最高出力370PS、最大トルク52.0kgf·mの3.3L ツインターボV6エンジンも選択可能だ。トランスミッションは8速ATで、走行状況に応じて前後のトルク配分を変更できる4WDシステムも装備される。

今回試乗したのはV8モデルで、オンタリオ州のナイアガラ・エスカープメント近くの道を運転した。しかし、そこに到着する前にはトロント中心部の渋滞や喧騒に耐えなければならない。G90にはスピーカーを使って不快な音を打ち消すアクティブノイズキャンセリング機能が付いており、遮音性も高く、かなり快適に運転することができた。

同乗者に運転してもらって後席でも過ごしてみた。リアシートは運転席側が12ウェイ、助手席側が14ウェイの調節が可能となっている。座面のスライドと連動したリクライニング機構が付き、ランバーサポートやヘッドレストなども細かい位置調節が可能となっている。シートヒーターおよびベンチレーターも付いており、シートの設計にはかなりこだわっているようだ。22ウェイ調節が可能な運転席も含め、すべてのシートがドイツ脊椎健康推進協会 (AGR) の認証を受けているそうだ。

運転席に戻り、エンジンの性能を確かめることにした。自然吸気V8エンジンは非常に扱いやすく、2,250kgの車体を十分以上に加速させる。アダプティブコントロールサスペンションも非常にしなやかだ。

rear

G90にはスマート・ポスチャー・ケアという機能も付いている。これはドライバーの身長、体重、股下に基づいて人間工学的に最適な着座位置を提案してくれるシステムだ。ドアにあるボタンを押すとディスプレイにパラメーターが表示され、腕をまっすぐ伸ばさないとステアリングに手が届かないところまで勝手にシートが後ろに下がってしまった。同乗者もこの機能を試してみたのだが、やはり不自然な運転姿勢になってしまった。

カーブの多い道だったのでスポーツモード(他にはエコ、コンフォート、カスタムがある)にしてみたのだが、それでもG90の走りはかなり穏やかだった。高速道路でエコモードにすると最大1.2km程度の間エンジンとトランスミッションが切り離され、燃費を改善することができる。個人的にはステアリングが重くなり、路面の状況がわずかながら伝わってくるスポーツモードが気に入ったのだが、そもそもこの種の車は長距離を快適に移動することが最大の目的だ。

ジェネシスはまだ市場からの評価を十分に獲得できていない。2020年には2台の新型クロスオーバーSUVも登場し、販売台数は間違いなく増えるだろう。今のところジェネシスの存在感は薄いのだが、G90を知れば、高級車を作れるのはヨーロッパ、アメリカ、日本だけではないということを理解できる。

G90には装備が満載されている。G90は1グレードのみの展開で、価格は89,750カナダドルだ。この値段には、コンシェルジュサービスの”Genesis at Home”や点検サービス、コネクテッド機能、地図更新も含まれる。ちなみに、ツインターボV6を選択すると3,000ドル安くなる。