米国「Car and Driver」によるスバル・レガシィ(2020年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。


Legacy

オフロード仕様の「アウトバック」誕生以来、レガシィシリーズ(2008年にはステーションワゴンが消滅)の主役はアウトバックに奪われ、そこに最近のクロスオーバーSUV人気も重なり、もはやセダンの存在感は薄まる一方だ。

それでもスバルは4ドアのレガシィを「スバルのラインアップの中でも重要なモデル」として位置付けている。そんな中登場した新型レガシィは、高い評価を得ているホンダ・アコードや個性的なデザインのヒュンダイ・ソナタ、退屈さから脱却したトヨタ・カムリなどとともに、セダンはまだ死んでいないということを証明しようとしている。

新型レガシィもいかにもスバルらしい見た目なのだが、ホイールアーチ周辺の膨らみを見ると、従来よりも筋肉質で速そうに感じる。インテリアデザインも従来通りの定石なのだが、ソフトなプラスチックも使われ、上質感はかなり増している。居住空間は前後ともに広大だ。

今回は中間グレードの「Limited」と上級グレードの「Touring XT」に試乗した。後者には上質なナッパレザーシートも装備されていた。インテリアはアウトバックと共通で、ベースグレード以外には11.6インチの縦長ディスプレイが装備される。ベースグレードは7.0インチディスプレイが2個装備され、全車Apple CarPlayおよびAndroid Autoに対応している。

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運転支援装備「アイサイト」も全車に標準装備となっている。アイサイトには、アダプティブクルーズコントロール(車線逸脱抑制機能付)、自動緊急ブレーキ、車線逸脱警報が含まれる。

新型レガシィには185PSの2.5L自然吸気と264PSの2.4Lターボの2種類の水平対向4気筒エンジンが設定される。ただし、ターボエンジンは上級グレードの「Limited XT」と「Touring XT」のみに搭載される。当然ながら全車4WDで、トランスミッションはCVTのみの設定となる。

自然吸気エンジンの性能はせいぜい必要十分程度で、あまり酷使するとエンジンが悲鳴を上げる。ターボエンジンのほうが静粛性は高く、加速性能も高いので、追い越しも楽にこなせる。ちなみに、ターボの燃費は11.5km/Lで、旧型の3.6Lフラットシックスよりも1.7km/L改善している。

中空スタビライザーやアルミ製コントロールアームを採用したことでサスペンションコンポーネンツが軽量化され、17kgの重量減に成功しているそうだ。スバルグローバルプラットフォームの採用により、構造用接着剤や高強度鋼の利用量が増加し、捩り剛性が70%、横剛性が100%向上している。

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軽量化や高剛性化に加えて、ブレーキベースのトルクベクタリングシステムや4WDシステムも手伝って、新型レガシィの走行性能は大幅に向上している。スバルいわく、新型レガシィは「レガシィ史上最高のハンドリング」を実現しているらしく、実際それは事実なのだろうが、ステアリングの機敏さや全体的な敏捷性ではアコードに見劣りする。乗り心地はアコードと同じくらい良好なのだが、運転する楽しさではアコードに負ける。

かといって、ワインディングでの運転がつまらなかったわけではない。今回、我々は南カリフォルニアのロス・パドレス国立森林公園を抜ける州道33号線を走った。ちょうど前を初代マツダ・ミアータ(日本名: ロードスター)が走っていたのだが、そのペースについていくこともできた。もっとも、ミアータのドライバーのほうがずっと楽しく運転していたのだろうが。

新型レガシィのモデルチェンジは上出来だと思う。走りに関しても、快適性に関しても、全般的にしっかり改善されている。性能面、静粛性のどちらを考慮しても選ぶべきなのはターボエンジンだろう。ただし、レガシィはスポーツセダンなどではないし、そうである必要もない。新型レガシィは快適性、居住性、燃費性能を兼ね備えたクルーザーとしてよくできている。