英国「Auto Express」によるDS 3 クロスバックの試乗レポートを日本語で紹介します。


DS 3

DS 3 クロスバックはPSAの新生プレミアムブランドから発売される2車種目のSUVだ。コンパクトSUVは競合の激しい領域なのだが、クロスバックの価格は21,550ポンドからで、アウディ Q2やミニ カントリーマンなどのモデルに狙いを定めている。

クロスバックはPSAのモデルとして初めてCMP (Common Modular Platform) を採用するモデルであり、CMPは今後登場する新型プジョー 208およびヴォクスホール・コルサにも採用されることになっている。CMPは剛性の高いプラットフォームで、自動運転レベル2や電動化パワートレインにも対応している。

実際に車と対面すると、価格の高さにも納得できそうだと感じた。上級グレードに装備されるマトリクスLEDヘッドランプの見た目は良かったし、キーレス機能の付いたモデルでは解錠したときに自動的にドアハンドルが飛び出してくる。

インテリアデザインは他のどの車とも似ていない。どのグレードを選んだとしても、クロスバックと比べるとQ2が陳腐に思えてしまう。ただし、質感はミニ カントリーマンのほうが高く、クロスバックにはドアパネルやダッシュボードの下部に安っぽいプラスチックも使われている。

ベースグレードには8インチインフォテインメントシステム(Apple CarPlayおよびAndroid Auto対応)が装備され、上級グレードでは画面サイズが10インチとなる。10インチはアウディやミニより大画面だし、見た目も良いのだが、ユーザーインターフェースはあまり優秀ではない。エアコンの操作すらタッチ操作で行わなければならないため、苛立つことも多い。

interior

大画面のヘッドアップディスプレイも装備される。こちらはグラフィックは高精細なのだが、ガラスパネルに表示されるので気になることもある。ガラスを二枚隔てて運転しているような感じだ。

全長は4,118mmで、ミニ カントリーマンより118mm短く、あまり居住性を期待するべきではないだろう。実際、ヘッドルームは十分に確保されているのだが、レッグルームはそれほど広くない。フォルクスワーゲン・ポロよりも狭く、T-CROSSとは比較にならない。ただ、荷室容量は350Lと平均以上だし、なによりボディサイズが小さいので都市部ではかなり有利だろう。

実際、都市部ではかなり扱いやすい。路面の衝撃はしっかり抑えられており、競合車と比べても乗り心地は良い。安定性の低いQ2や跳ねがちなミニと比べると、DS 3の快適性はかなり高い。

かといって、コーナリング性能が犠牲になっているわけでもない。確かに、ミニやアウディと比べるとシャープさに欠けるのだが、グリップ性能は十分に高く、そのしなやかさからは想像しがたいほどにロールは抑えられている。もっとも、運転していて楽しい車ではない。ステアリングフィールには違和感があるし、セルフセンタリング性能も悪い。

今回は自動運転技術を試すこともできた。クロスバックは車線がはっきり描かれている道路であれば、ステアリング操作、アクセル操作、ブレーキ操作を代わりに行ってくれる。ただし、このシステムは優秀とは言いがたく、ステアリング操作は杜撰になりがちだし、低速域でのブレーキ操作には余裕がない。

rear

2019年9月にはE-tenseというモデルも追加される。これは航続距離300km超(WLTPサイクル)で100kWの急速充電にも対応した電気自動車だ。それ以外はすべて内燃機関を搭載し、100PSの1.5Lディーゼルエンジンと1.2L PureTechガソリンエンジン(100PS/130PS/155PS)が設定される。

今回は155PS仕様に試乗した。このエンジンは滑らかで静粛性も高かったのだが、性能は思ったほど高くなかった。0-100km/h加速は130PS仕様と比べて1秒も差がある(8.2秒と9.2秒)のだが、現実的にその差はレッドゾーン付近まで回さないと分からない。最大トルクの差もわずか1kgf·mなので、性能差はかなり実感しづらく、1,500ポンド安い130PS仕様を選んだほうが賢明だろう。

ガソリン車のエントリーモデルには6速MTが設定されるのだが、残念ながら上級モデルではMTを選択できない。このMTは昔のPSAのMTとは違ってかなり使いやすいし、ATに余計な値段を払いたくない人にも良いだろう。

価格面では競合車と比べても苦戦しそうだ。クロスバックの155PS仕様とスペックの近いQ2 35 TFSIはクロスバックよりも安い。装備内容はDSのほうが充実しているのだが、一方で室内空間はアウディのほうが広い。そして言うまでもなく、バッジの価値は明らかにアウディのほうが格上だ。