米国「MOTOR TREND」による日産 ヴァーサ(2020年モデル)の試乗レポートを日本語で紹介します。


Versa

日産 ヴァーサ(日本名: ラティオ)に乗るような人の大半は車に興味を持っていない。その安さや広い室内空間だけに惹かれて購入している。ヴァーサはカーシェアリング業者やレンタカー会社に人気の車で、価格の安さやそこそこの経済性で有名だ。

しかし、コストパフォーマンス以外の面で、ヴァーサには何の面白みも存在しなかった。デザインには魅力がなかったし、競合車のような先進技術も備えていなかった。しかし、そんな状況は新型ヴァーサの登場により一変しようとしている。全高が低くなり、全長・全幅が拡大されたことで見た目はかなり良くなり、最新の安全装備も備えている。

最大の変化はやはりデザインだ。間抜けなデザインからは脱却し、より常識的で現代的なスタイリングへと変貌した。プラットフォームは旧型と同じなのだが、全高は58mm低くなり、全幅は46mm、全長は41mm拡大されている。

日産おなじみのVモーショングリルやシグネチャーヘッドランプが装備され、テールランプやCピラーの形状はアルティマやマキシマとの共通性もある。

グレードによるデザインの違いもある。「S」は15インチスチールホイール、「SV」は16インチアルミホイールを装着し、いずれもハロゲンヘッドランプを装備する。「SR」にはLEDヘッドランプ、17インチアルミホイール、ブラックドアミラー、ダークグリルが装備される。

内装もしっかり進化している。「SV」および「SR」にはApple CarPlayおよびAndroid Auto対応の7.0インチタッチスクリーンが装備され、完全刷新されたダッシュボードは個性的だ。「SR」のダッシュボードにはフェイクレザーが使われており、「SV」ではツートーンのダッシュボードが選択できる。「SV」、「SR」にはメーターも7.0インチのディスプレイとなっており、先進性を感じることができる。

interior

「S」にも中央の7.0インチディスプレイは装備されるのだが、Nissan Connectインフォテインメントシステムは備わっておらず、Android AutoやApple CarPlayにも対応していない。USBポート(3個)、プッシュエンジンスターター、Bluetooth連携機能は全車に標準装備される。

新型ヴァーサも室内空間は広いのだが、リアシートのレッグルームは旧型モデルほど広大ではない。前席のレッグルームは69mm増加しているのだが、後席のレッグルームは152mm減少して790mmとなっている。ちなみに、ヒュンダイ・アクセント、キア・リオ、トヨタ・ヤリスはいずれも840mm以上のレッグルームを確保している。決して新型ヴァーサの後席が窮屈なわけではないのだが、旧型ほどの余裕はない。

新型ヴァーサに搭載されるのは旧型と共通の1.6Lエンジンなのだが、性能はわずかに向上して124PS/15.8kgf·mとなっている。「S」では5速MTが標準設定され、「SV」と「SR」ではCVTしか選択できない。「S」の場合、CVTを選択するためには1,670ドルの追加費用が必要となる。

走りは従来同様、それほど楽しくはない。エンジン性能には余裕がないので遅く感じる。急加速をしようとするとCVTのうなりが気になる。高速での合流加速には時間がかかるので、忍耐力が試される。アクセルを踏み込んでもCVTの反応は鈍い。日産いわく、トランスミッションは応答性が改善されているらしいのだが、実際に運転してみても違いはよく分からなかった。

乗り心地は十分に良好だった。コーナーでもサスペンションがしっかりと安定性を維持してくれるし、このクラスのセダンにしては静粛性も高い。ステアリングの応答性に関しても競合車と大きく変わらない。

新型ヴァーサにはキックスのような走りを期待していた。キックスはヴァーサと同じプラットフォームを使っていて、同じ124PSのエンジンを搭載しているにもかかわらず、かなり俊敏に感じられる。小型クロスオーバーSUVとは思えないほど運転していて楽しいし、パワフルだ。一方で、新型ヴァーサにはそのような活力が感じられなかった。

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その代わり、ヴァーサは安全装備が充実している。歩行者検知機能付きの自動ブレーキ、後退時自動ブレーキ、車線逸脱警報は全車に標準装備される。「SV」と「SR」にはさらに、ブラインドスポットモニタリング、リアクロストラフィックアラートも装備される。

クルーズコントロールも全車標準装備なのだが、キックス同様、アダプティブクルーズコントロールは設定されない。そのほか、ハイビームアシスト付きのオートライトも全車に標準装備される。

小型車には燃費性能の高さが求められるのだが、ヴァーサもその要求に十分に応えている。CVT車の燃費はシティ13.6km/L、ハイウェイ17.0km/Lで、MT車はシティ11.5km/L、ハイウェイ14.9km/Lだ。CVT車の燃費性能は旧型モデルよりわずかに向上している一方で、MT車はわずかに悪化している。

ヴァーサの基本的な性格は変わっていないのだが、デザインや先進技術、装備内容は大幅に進歩している。価格は「S」のMT車が15,625ドルで、「SR」が19,135ドルとなり、旧型モデルと比べると値上げされている。新型ヴァーサは8月下旬発売予定となっている。トヨタやヒュンダイ、キアの競合車とどう戦っていくのか、今から楽しみだ。