カナダ「Auto Trader」によるリンカーン MKZの試乗レポートを日本語で紹介します。


MKZ

今の時代、車に高級なバッジが付いていようとも、隣の家の車より馬力があることの証明にはならないし、使っている革の品質が高いことの証明にもならない。こういったブランドの問題が、まさに今、リンカーン MKZに降り掛かっている。リンカーンというプレミアムブランドが販売するMKZが使用するのはフォードのプラットフォームだ。

SUVのリンカーン MKCとは違い、MKZに潜む問題の根は深い。今の時代、セダンを売るのは年々難しくなってきており、特に高級車ではそれが顕著だ。非プレミアムブランドが低価格で高級車並みの装備を持つクロスオーバーSUVを登場させており、高級セダンはその煽りを食っている。

こういった問題に対処するため、MKZは2つの戦略を打ち出した。ひとつが車のデザインの刷新だ。一時代のリンカーンを支配していたデザイン言語である左右に分かれたフロントグリルは廃止され、新型コンチネンタルコンセプトから採用されている新しい角丸四角形のメッシュグリルが採用された。サイドからリアにかけてのデザインはあまり変わっていないのだが、その結果、新しさと古さが不思議なハーモニーを奏でている。

従来のフロントグリルは賛否両論あったのだが、新しいグリルはアウディやジャガー、ボルボなどにも負けない存在感を持つ。結果的にデザインの洗練度は増しているのだが、世界的なトレンドに倣った結果、リンカーン独自の個性を失ってしまった感もある。

インテリアはフォードとの差別化の努力が感じられ、従来モデルよりも改善している。新しいインフォテインメントシステムはフォードと共通なのだが、コンソールやメーターパネル、それにタッチパネル式から物理ボタンおよびダイヤル式に変更されたオーディオおよびエアコンの操作系はリンカーンらしい上質なものだ。

interior

SYNC 3となったインフォテインメントシステムは使いやすくなっており、応答性が悪く、操作も分かりづらかった従来のSYNCシステムに辟易していた顧客には喜ばれることだろう。

試乗車はフル装備で、内装には上質なレザーが使われていたため、従来のフォードに毛が生えた程度の内装だったMKZからは明らかな進歩を感じた。ドアパネルや足元付近のフィット&フィニッシュには問題点もあったのだが、初期モデルであることも差し引いて考えるべきだろう。

新型MKZの走りは、リンカーンらしい「穏やかな高級車」を求める顧客に最適化されたものだった。車内の騒音は高速域でも最低限に抑えられており、サスペンションは路面の衝撃を最大限抑え込むようなセッティングとなっている。

エントリーグレードに搭載される2.0L 4気筒ターボエンジンの性能(248PS/38.0kgf·m)は必要十分なのだが、車重は1,769kgもあるので、気軽にいつでも追い越しができるような車ではない。トランスミッションは6速ATで、全車4WDなので冬でも安心だ。

環境性能を重視する人向けに、ガソリン車と同じ価格のハイブリッドモデルも用意される。つまり、42,000ドルで、4気筒ターボモデルか191PSの2L自然吸気エンジンを搭載するハイブリッドモデルの好きな方を選ぶことができる。

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ハイブリッドはFFしか選択できないので、グリップ性能やエンジン性能はターボ車に劣るのだが、ハイブリッドモデルは17.5km/Lという優秀なカタログ燃費を実現している。

そして、最上級グレードには最高出力406PS、最大トルク55.3kgf·mの3.0L V6ツインターボエンジンが搭載される。こちらにはトルクベクタリングシステム付きの高性能4WDシステムが搭載される。近年のリンカーンとしては最も高性能なモデルだ。

高性能なツインターボの採用をもってしても、新型MKZの未来は楽観視できない。リンカーンというブランドの立ち位置は、日産やトヨタ、そしてフォードなどの大衆ブランドと、ビュイックやアキュラ、レクサスなどの高級ブランドの狭間にある。

しかし、新型MKZやMKC、そして新型コンチネンタルの登場により、リンカーンはこれまでの停滞からの脱出を果たすことができるのかもしれない。