英国「Auto Express」によるルノー・グランセニックとシトロエン・グランドC4ピカソの比較試乗レポートを日本語で紹介します。


Grand Scenic vs Grand C4 Picasso

ルノーはここ数年、現在のトレンドを踏まえ、利益率を上げるためにSUVやクロスオーバーに力を入れている。しかし、ミニバンのパイオニアとしての立場も忘れてはおらず、大家族向けミニバンのグランセニックもしっかり用意している。

7人乗りの新型グランセニックには実用性にこだわったさまざまな機能があり、しかもそのデザインはスタイリッシュで、実用性のために見た目を犠牲にしているわけでもない。

けれど、ルノーが成功するためには大きな障壁がある。それがシトロエンのグランドC4ピカソという競合車の存在だ。グランドC4ピカソはフォード S-MAXやBMW 2シリーズ グランツアラーなどのライバルを抑え、我々の中で最も評価の高いミニバンとなっている。では果たして、グランセニックはグランドC4ピカソを超える車なのだろうか。


ルノー・グランセニック

Renault interior

ミニバンにとって室内空間は重要な要素であり、グランセニックも室内空間をしっかり確保している。旧型グランセニックと比べると全長が75mm、全幅が25mm拡大しており、またホイールベースも35mm延長されているため、居住空間が拡大されている。

また、全高は15mm、最低地上高は30mm高くなっているため、従来的なミニバンらしいスタイリングのシトロエンと比べるとSUVのような雰囲気もある。

試乗車にはパノラミックルーフが標準装備されており、前席の開放感は高かったし、後席のレッグルームもかなり広かった。ただ、2列目シートに関しては、グランドC4ピカソが3席それぞれ独立して倒せるのに対し、グランセニックは6:4分割可倒式となっている。

また、ルノーの場合、3列目に大人を乗せるためには2列目をかなり前に出さなければならないし、それでもなお3列目はシトロエンよりも狭い。もちろん、シートを前に出せば本来開放感があったはずの2列目の居住性も悪化してしまう。

フロアもかなり高めなので、脚を快適に伸ばすこともできない。前席の後ろには床下収納があるため、C4よりも床の圧迫感が強い。ただし、シートはワンタッチで格納できるので、荷室の活用はシトロエンよりしやすい。

試乗車には8.7インチ R-Link 2 タッチスクリーンナビゲーションシステム(これを介してシートの操作までできる)やDABラジオ、Bluetooth連携機能が標準装備されていた。ナビは見た目こそ良いのだが、実際の操作感はトリッキーだ。ただ、ナビ操作に役立つアプリも用意されている。

グランセニックの乗り心地は他メーカーのミニバンと比べると硬めなので、日常移動の快適性は低い。ただし、サスペンションが硬いだけでなく、20インチのホイールまで履いているため、大型ミニバンとしては意外なほどに走りは良い。十分なグリップを確保し、ロールも抑えられているため、操舵はかなり正確だ。ただし、凹凸に乗り上げるとシトロエン以上に暴れやすい。

とはいえ、耐えられないほど乗り心地が悪いわけではないのだが、家族向けのミニバンの本質を考えると、グランドC4ピカソのほうが乗り心地と操作性のバランスは良いように感じる。


シトロエン・グランドC4ピカソ

Citroen interior

グランドC4ピカソはPSAの新世代モジュラープラットフォーム「EMP2」を採用した最初期のモデルであり、このプラットフォームのおかげで驚くほど実力の高いミニバンが誕生した。

ルノー・カジャー日産 キャシュカイと共通のCMF-CDプラットフォームを採用するグランセニック同様、ピカソも個性的な見た目と広大な室内空間を両立している。

シトロエンの室内空間はルノー以上に開放感があり、細いAピラーのおかげで前方視界はかなり良好だ。開放感の高さにはセンターメーターレイアウトも一役買っているし、そもそも絶対的な室内空間自体もグランセニックより広い。

収納空間もルノーと同程度用意されており、前席下の引き出しやセンターコンソール内の収納、リアの床下収納なども用意されている。2列目シートは3席すべてにISOFIXマウントが付いており、3席独立してのスライドおよび折り畳みが可能となっている。

3列目シートも驚くほどに広い。さすがに大人が乗ると多少は狭さを感じるのだが、着座位置はグランセニックよりは適切だし、ヘッドルームおよびレッグルームもグランセニックより広い。

試乗車には1.6LのBlueHDi 120 ディーゼルエンジンが搭載されており、トランスミッションは6速ATで、価格は28,700ポンドだ。このATは優秀で、おかげで静粛性も十分に高いのだが、MT同士で比べた場合は操作性の良いルノーのほうが魅力的だ。ただし、MTを選んだ場合、ピカソのほうがルノーよりも1,095ポンド安くなる。

ATの変速は滑らかだし、加速性能にも問題はなく、0-100km/h加速は11.0秒だった。最大トルクがルノーより2.0kgf·m劣るため、無変速での加速性能はわずかにルノーより劣るのだが、公道でそれが気になる場面はない。

操作性はルノーに負けるのだが、シトロエンのほうが乗り心地は良く、舗装の悪い道から乗客をしっかり守ってくれる。グリップ性能はセニックに負けるし、ロールもはっきり存在するのだが、それなりの速度でコーナーに突っ込んでも十分に安定を保っている。

マッサージシートやナビ、Bluetooth連携機能などが標準装備されているため、長距離の移動も苦にならないだろう。オートエアコンやキーレスゴー、パーキングセンサーなども装備されるし、コネクティビティ機能も最新のものが採用されている。


結論

Winner: シトロエン・グランドC4ピカソ
グランドC4ピカソは最高のミニバンの地位を守ることに成功した。ルノーは室内空間や万能性でシトロエンに敵わず、ランニングコストや乗り心地でもシトロエンのほうが優れている。ルノーほど運転が楽しい車ではないのだが、ミニバンに求められる要求をより叶えられるのはシトロエンのほうだろう。


2nd: ルノー・グランセニック
グランセニックも優秀なミニバンだ。驚くほど楽しく運転できるし、家族に優しい工夫も用意されている。しかし、室内空間や万能性ではグランドC4ピカソに負ける。燃費性能もシトロエンに劣るし、価格もシトロエンより高いことを考えると、シトロエンには負けるという結論になった。