インド「News18」によるMG ヘクターの試乗レポートを日本語で紹介します。


Hector

94年の歴史を持つイギリスの自動車ブランドのMGがインド市場への参入を発表した時、多くの人が嘲笑した。なぜなら、インドは長らくわずか2つのブランドによって支配されてきた特殊な市場であり、どんな自動車メーカーであってもそこに分け入るのは難しいからだ。しかし、MGはインド導入第一号となるSUV「ヘクター」に持てる技術をすべて投入することで、インドでのMGブランドの確立を企てた。

しかし、果たしてその技術にはインドの国民を惹きつけるほどの魅力があるのだろうか。なにより、インドの消費者は概念的な先進技術よりももっと物理的で実質的な製品それ自体を重視する傾向にある。

MG ヘクターを目の前にして最初に抱いた感想は「なんて大きいSUVなんだ」だった。圧倒的な大きさにより、特に正面から見ると独特の存在感を主張する。六角形のフロントグリルの両側にある細いライトはヘッドランプではなくLEDデイライトだ。LEDヘッドランプはその下のコの字型メッキパーツの内側にフォグランプとともに配置されている。

サイドも目を引くデザインとなっている。ホイールベースは長く、フローティングルーフも取り入れられている。ホイールのサイズは17インチで、数字的には決して小さくはないのだが、ボディサイズがあまりに大きいので相対的に小さく見えてしまう。

リア部には左右のLEDテールランプを繋ぐようにリフレクターが装着されているため、一体感のある見た目となっている。流れるウインカーは非常に恰好良いし、スキッドプレートはブラッシュアルミ仕上げになっている。リアのデザインも個性的ではあるのだが、背の高さは気になった。

エクステリアデザインは目を引くし魅力的なのだが、ヘクターの最大の売りは車内にある。MGはヘクターのことをインド初の「インターネットカー」と呼んでいる。不思議な呼称ではあるのだが、ヘクターはAirtelのSIMカードを搭載した真っ当なコネクティッドカーだ。SIMを搭載することでスマートフォンにインストールしたiSMARTアプリを介して遠隔操作でエンジンを始動したりナビの設定を行ったりすることができる。

MGは様々なIT企業と連携してiSMART関連のサービスを提供している。音楽アプリのGaanaやナビゲーションアプリのTomTom、天候情報アプリのAccuWeatherはすべて車にプリインストールされている。

interior

マイクロソフトやアドビ、ニュアンス、シスコなどの技術も使われている。例えば、ヘクターの音声認識機能にはニュアンスの技術が使われており、100以上の機能を音声認識で操作することができる。ちゃんとインドのアクセントを認識するように設計されているし、高級車と比べても音声認識の精度はかなり高く、驚かされた。

音声認識を使わなくてもインフォテインメントシステムはかなり直感的に操作することができるし、ディスプレイのサイズは10.4インチとかなり大きい。Infinityのオーディオを装備しているため、音質も良い。

タイヤ空気圧監視システムやパワーテールゲート、前席パワーシート、パノラミックサンルーフ、アンビエントライト、360度カメラなど、装備内容もかなり充実していた。

今やMGは中国企業の傘下にあるため、品質を疑う声もあるかもしれない。しかし、内装の質感はかなり高かった。ダッシュボードにはソフトなレザーが使われており、ステアリングの触り心地も良かった。レザーシートはクッション性も高くて快適だったし、ドアも重厚感があった。

車内はかなり広々としており、特にリアは快適だった。床は完全にフラットで、トランスミッショントンネルの膨らみもない。リアシートはリクライニングも可能だし、倒せばフラットで使いやすい荷室を生み出すこともできる。ちなみに荷室容量は587Lだ。

ヘクターには3種類のパワーユニット(1.5Lガソリン、1.5Lガソリン+48Vハイブリッドシステム、2.0Lディーゼル)が設定される。今回はハイブリッドとディーゼルに試乗した。今回乗ったのは6速MT車のみなのだが、DCTも設定される。

1.5Lガソリンエンジンは最高出力143PS、最大トルク25.5kgf·mで、2.0Lディーゼルエンジンは最高出力170PS、最大トルク35.7kgf·mを発揮する。さらに、ハイブリッドモデルは48Vシステムによりトルクが20%増強されている。いずれのエンジンも性能は十分に高く、変速も滑らかだった。ただ、坂の多い試乗コースではディーゼルのほうが扱いやすく感じた。

rear.

ステアリングの応答性の高さには驚かされた。フィードバックもしっかりあったし、インドの道に合ったステアリングだと感じた。それに、ソフトでしなやかなサスペンションもインド向けだと感じた。

静粛性も十分で、特にガソリン車は静かだった。ただし、ディーゼル車は特有のガラガラ音が少し気になった。

iSMARTシステムには安全性に関わる技術も用意されている。たとえば、緊急時に専用コールセンターに繋ぐことのできる機能も付いている。安全装備としては他に、ESP、ヒルホールドコントロール、6エアバッグ、TCS、ABS、EBDが付いている。

MGにはインドで成功するために重要な要素が備わっている。94年という長い歴史に裏付けられたブランド力もあるし、ヘクター発売前にもかかわらずすでインド国内には100以上のMGディーラーが配備されている。

ヘクターは実用性の高い魅力的なSUVだし、先進技術が満載されたテスラ風のインフォテインメントシステムも装備されている。成功の可否を握る最大の鍵である価格は未発表なのだが、少なくとも現時点では、MGのインド市場への挑戦はうまくいっているようだ。