米国「Car and Driver」によるジープ・レネゲード 1.4T MTの試乗レポートを日本語で紹介します。



Renegade

ジープ信者にとって、ブランドイメージの希薄化ほど嫌なものはないだろう。彼らはワクチン反対派同様、現実を受け入れることができないはずだ。しかし本当にジープ(そしてフィアット・クライスラー)にとって必要なのは、顧客を拡大するための”普通”の車だ。

ジープ信者からすれば、乗用車ベースのコンパスやパトリオットなど受け入れがたいだろうし、同様にレネゲードに対しても軽蔑の眼差しを向けているはずだ。信者達が望むラダーフレームはそこにはない。

しかし、レネゲードに限って言うなら、必ずしも悲観的になる必要性はないように思う。確かに、レネゲードはイタリア製だし、言うなれば販路拡大と環境規制対応のためのワクチンのような存在だ。しかし、ベースグレードの「Sport」には原理主義的ジープ信者すら喜ばせるほどの本質がある。

「Sport」の価格はわずか20,990ドルで、スチールホイールを履くMTの4WDだし、外装は黒のプラスチックで覆われ、DJ型ジープの面影も感じる。スパルタンな装備内容はまるでラングラーのようだ。

rear

試乗車には電動ドアミラーやアルミホイール、エアコンが装備されていたのだが、それでも価格は23,000ドルちょっとだ。内装からも伝統的なジープの雰囲気を感じるのだが、かといって安っぽいわけではない。

タッチスクリーンはオプションだが、紙の地図で代用することもできるし、ダッシュボードにスマートフォンを貼り付けてもいい。もしちゃんとしたナビが欲しいなら、中級グレードの「Latitude」を選ぶべきだろう。

エンジンは見た目に反して現代的で、最高出力162PSの1.4L 4気筒ターボエンジンを搭載し、6速MTが組み合わせられる。オプションの9速ATを選択するとエンジンは2.4Lの自然吸気エンジンに変更される。2.4Lエンジンのほうが最高出力は20PS高いのだが、最大トルクは1.4Lのほうが1.2kgf·m優れている。

装備が満載された上級グレードの「Limited」と比べると「Sport」のほうが約130kgも軽く、おかげで0-100km/h加速は0.1秒速い。「Sport」は細い65扁平のタイヤを履いているのだが、制動性能やコーナリング性能も上級グレードより優れている。

interior

走りがスポーティーとは言いがたいのだが、ジープとしては珍しく、前後バランスよくしっかり曲がることができる。

角張った見た目と4WD、そしてマニュアルの組み合わせは、子供の頃から知っていたジープそのものだ。無駄な装備もないので、運転操作や周囲の景色だけに集中して運転することができる。現代的ではないのかもしれないが、これもまた楽しい。

レネゲードに「TRAIL RATED」のバッジは付いていないのだが、それでも魅力的でジープ的な車だと感じた。この車のターゲット層である若年層がスマートフォンから手を離し、MTの操作を楽しんでくれると嬉しい。