英国「Auto Express」によるHonda e(プロトタイプ)の試乗レポートを日本語で紹介します。
高級品が必ずしも巨大であるとは限らない。しかし、レトロな可愛らしさを持つ航続距離わずか200km程度の小型電気自動車「Honda e」に本当に32,000ポンド(予想価格)もの価値があるのだろうか。今回、我々はプロトタイプモデルに試乗したのだが、そこから導き出された結論は「イエス」だ。
ダッシュボードに水平に並ぶスクリーンの両端には、市販モデル全車に標準装備となるデジタルサイドミラーの映像が映し出される。画質は粗さが気になるし、コントラストもきつめなのだが、装飾的なモデルに似合う装飾的な装備だとは思う。
シフトセレクターボタンのプラスチックの質感は悲しくなるほど普通なのだが、そんなことよりもまずは前方のディスプレイの数に圧倒される。それに、このスクリーンのメニューは分かりやすく、夜間には明るさを下げたり、あるいはオフにすることも可能だ。この内装には新鮮さがある。
走りも優秀だ。オーバーハングが短く、トレッドが広いうえ、駆動輪が後輪なので、コーナーをキビキビと走り抜け、街中での運転も楽しめそうだ。最小回転半径はわずか4.3mで、スマート・フォーツー並みのUターンができる。ボディ剛性も高く、急な姿勢変化にも問題なく対応してくれる。
今回はクローズドコースでの試乗だったので、快適性についてはあまり詳しく語ることはできない。ステアリングはぐにゃついた感覚はあるものの正確で軽く、直感的に、そして活き活きとコーナーを曲がることができる。アクセルを踏み込んだ瞬間の加速は他の電気自動車(特に同価格帯のBMW i3)ほど刺激的ではないのだが、荷室フロア下に搭載されるモーターは最高出力150PSで、十分に力強い。
回生ブレーキのモードは多すぎるように感じた。回生ブレーキの効きが穏やかなモードが4種類あり、低速域でブレーキを使わずに運転できる効きの強いシングルペダルモードが3種類で、計7種類も存在する。言うまでもなく、これによって35.5kWhのバッテリーに充電を行い、航続距離を伸ばすことができる。
回生ブレーキは滑らかで調整もしやすく、ステアリングに付いているパドルを使ってモードを切り替えることができるので、多すぎるモードに悩まされることはあまりないだろう。とはいえ、いくらなんでも7種類は多いと思うし、さらに厄介なことに、レーダーコントロールが前車との車間距離を一定にするために勝手に制動力を変化させる。
街中で使う車として考えると、実用性は非常に高い。運転手が長身でも後部座席に平均的身長の大人が快適に座ることができる。荷室はやや狭く、下にモーターを積んでいるのでフロアも高めなのだが、都市部のライフスタイルには十分だろう。
充電規格はCCSおよびタイプ2に対応しており、充電口はボンネットの黒いパネル部分にある。100kWの充電器を使えば20%から80%まで20分間で充電できる。7kWの家庭用充電器でも満充電まで6時間かからない。ただし、大容量バッテリー搭載車の追加予定はない。Honda eの開発責任者を務める人見康平氏によると、現状の技術ではこれ以上の容量のバッテリーを搭載するスペースがないそうだ。
Honda eよりも航続距離がずっと長いBMW i3やルノー・ゾエを選ばず、あえてホンダを選ぶ理由は、そのデザインや技術くらいしかない。ただ、今後登場する電気自動車、ミニクーパーSEの航続距離もHonda eと同程度らしい。航続距離の短い高級電気自動車という新しい市場が生まれるのかもしれない。
走りは素晴らしく、デザインも個性的だし、ハイテクなガジェットも満載されている。Honda eには魅力がたくさんある。しかし、愛すべきHonda eが成功するかどうかは、あるいは200kmという航続距離に顧客が満足するかどうかは、実際の価格が発表されるまでは判断しがたい。
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