米国「Detroit Free Press」によるフォード・ポリスインターセプター ユーティリティ ハイブリッドの試乗レポートを日本語で紹介します。


Interceptor Hybrid

今回はなんと、警察車両を運転することができた。私が乗ったのは、すべての警官の憧れにして、すべてのスピード違反ドライバーの畏怖の対象でもあるハイブリッドSUV、フォード・ポリスインターセプター ユーティリティだ。

警察車両としての酷使に耐えるため、この車には強化された専用のディスクブレーキや、限界域での操作性まで考慮された専用電動パワーステアリングが装備される。ハイブリッドシステムも警察仕様となっており、追越車線を塞いでいるそこらのハイブリッドカーとはまったくの別物だ。

最高速度は220km/h、0-160km/h加速は17.7秒を記録する。この数字はミシガン州警察がテストしているV8のシボレー・タホよりも優れている。16歳の車好きがこれを読んだら、母親に同じ仕様のエクスプローラーを買わせようと企てるかもしれないが、この仕様は警察しか購入することができない。

今回、我々は一般人としては初めてこのハイブリッドSUVに乗った。幸い、手錠をかけられて後部座席に乗ったわけではなく、テストコース内で自分の手でステアリングを握ることができた。

インターセプターユーティリティのハンドリングや加速性能、パワーは、推定価格4万ドル前後の大型SUVとは信じられないほどに優秀だった。

加速性能は大排気量V8エンジンやターボもしくはスーパーチャージャー付きのV6エンジンに匹敵するレベルだったのだが、インターセプターユーティリティに搭載されるのはわずか3.3Lの自然吸気エンジンで、10速ATを介して45PSの電気モーターと繋がっている。

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カタログスペックは最高出力322PS、最大トルク44.5kgf·mらしいのだが、それ以上の力強さを感じた。この性能を持ってすれば強盗との追跡劇も子供のように楽しめるだろう。

電気モーターはスイッチを押した瞬間に最高の光を発する電球のような即時性が強みなので、エンジンとトランスミッションのトルクの不足を見事に補ってくれる。おかげでアクセルを踏んだ瞬間にしっかりとパフォーマンスが発揮される。

急ブレーキをかけると、スプリングが警察向けに強化されているとはいえ、ノーズが沈んでドライバーもシートベルトに締め付けられる。ただ、コーナーではこの強化スプリングのおかげで安定して走行することができる。

コラムシフトや小さなスチールホイールを見たらがっかりするかもしれないが、走りは良い意味で見た目に反している。駆動系は限界域で最大限のスピードとハンドリングを実現するために設計されている。

最初は平穏な感じのコースで運転したのだが、その後、フォードが開発に用いた全長2.3kmの曲がりくねったテストコースを運転した。高速コーナーでもロールは最低限に抑えられており、今にも空中に飛び立ちそうな気分だった。

ガソリンエンジン、モーター、リチウムイオンバッテリーはすべて次期型エクスプローラーハイブリッドと共通なのだが、エンジンやモーターをコントロールするプログラムは警察仕様となっている。全開走行中でもバッテリーの充電を行うように設定されているため、いつでもモーターのアシストを得ることができる。

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タイヤ、サスペンション、ブレーキ、ステアリングのチューニングはすべて専用仕様となっている。シートは防弾チョッキや警察官用ベルトに対応した専用品で、センターコンソールには警察用のコンピューター、無線機、ショットガンを置くスペースが用意されている。

1日2~3時間の稼働を想定した場合、年間走行距離は最低でも30,000kmになると想定されている。現時点で警察からのオーダーは1,000台以上受け付けているそうだ。実際に警察が使いはじめるのは2019年夏頃になるだろう。

警察車両は稼働時間の60%がアイドリング状態だ。その時間には事故の対応や待機時間、違反者探しの時間などが含まれる。こういった特性を考えると、ハイブリッドが燃費の向上に大きく貢献するはずだ。大容量バッテリーの搭載によりエンジンをかけずに無線機やコンピューター、エアコンなどに電気を供給することができる。

フォードの計算では、ガソリン1Lあたり0.73ドルで計算した場合、年間3,500ドル程度の燃料費削減が見込めるそうだ。偶然にも、3,500ドルというのはガソリン仕様の警察用エクスプローラーとハイブリッド仕様の価格差と一致する。そう考えると、この車こそが次世代のパトカーなのかもしれない。