今回は、米国「Car and Driver」による日本市場向け日本車3台(日産 スカイラインGTS25、トヨタ・マークII ツアラーV、マツダ・オートザム AZ-1)の試乗レポートを日本語で紹介します。
マリブのマルホランド・ハイウェイ沿いに停まっている1993年式の日産 スカイラインGTS25を見かけた編集部のトニー・キローガはこう言った。
「酷い車だ。排気音も単調だし、左手で変速なんてしたくないし、タイヤの状態も良くないじゃないか。こんなの誰が買うんだ。」
しかし、スカイラインを欲しがる人はたくさんいる。特にJDMを愛する人間はスカイラインが大好きだ。日本仕様車ゆえに右ハンドルになってしまうし、取扱説明書も日本語で書かれているうえ、新しいものでも25年以上前に製造されている。JDMとはアメリカではなく日本のために作られた日本車のことだ。
カリフォルニア州サイプレスのTopRankという会社はJDMに特化した輸入中古車ディーラーだ。TopRankの在庫の中から我々が選んだのは、上述したスカイラインのほか、1993年式のトヨタ・マークII ツアラーVと1992年式のマツダ・オートザム AZ-1の3台だ。
年式が古く、タイヤの状態も良くなかったので、今回は本格的なテストをするわけではないし、3台を比較するつもりもない。今回はあくまで、アメリカで手に入る珍しいJDMとはどんな車なのかを確かめるのが目的だ。
JDMの価格はそれほど高くない。TopRankでは、スカイラインとマークIIはいずれも17,995ドルで、オートザムは15,995ドルで販売されていた。中流階級でも十分に手が届く値段だ。
ただし、JDMの中でも特に崇拝されているR32型スカイラインGT-Rの価格は状態が悪いモデルでも3万ドルはする。もちろん、走行距離が短い個体ならもっと高くなる。なので、今回は伝説的なゴジラに乗るのは諦めた。
スカイライン、マークII、オートザム、どれを見ても1990年代初頭のJDM文化の魅力が理解できる。デザイン、技術、狂気。どれも独特で魅力的だ。
キローガの言っていた問題点も、手を加えればすべて解決できる。JDM界では聖書とも言える雑誌『Sport Compact Car』でライターを務めたこともあるスコット・オールダムいわく、マフラーとタイヤさえ交換すれば十分だそうだ。
スカイラインGTS25はGT-Rの弟分的存在だ。ボディの基本構造はGT-Rと同じなのだが、GT-Rとは違い、4WDではないし、エンジンは2.5L 直6で、最高出力は180PSだ。ただ、運転してみるとスペック以上に力強く感じる。オプションでATも設定されていたのだが、今回乗った個体には5速MTが搭載されていた。
外装も内装もそれほど派手というわけではないのだが、それでも周囲からの視線は感じた。おそらく、その視線の多くはGT-Rと勘違いしていた人のものなのだろうが、GT-Rよりずっと安くこれだけの視線を集められるのは良いことなのかもしれない。
ただ、走行距離が21万kmを超えていたため、サスペンションブッシュは相当にヘタっていたようで、サスペンションはほとんど動いてくれず、タイヤの接地性はかなり悪かった。おかげで、まるでカーリングストーンのごとくリアが滑りまくった。
一方、後輪駆動のマークIIはまったく視線を集めなかった。しかし、その心臓部には滑らかな1JZ-GTE型エンジンが搭載されている。これは4代目スープラに搭載されていた2JZ-GTE型3Lエンジンの2.5L版だ。
日本では自主規制により1988年から2004年まで(少なくともカタログスペック上の)最高出力が280PS上限とされていた。ただし、280PSと表記されていた日本車の多くがそれ以上に高性能だったことは公然の秘密だ。
1JZエンジンは2JZほど有名ではないのだが、トルクはかなり強烈だ。カタログ値37.1kgf·mの最大トルクがシームレスに発揮されるため、C-130から解き放たれて自由落下しているかのような加速を生み出す。このエンジンは相当に優秀で、21世紀のエンジンとしても十分に通用するだろう。
テスト車の総走行距離は43,000km程度で、シートは当時のトヨタらしい青のファブリックで、外装も当時らしく死ぬほど退屈なデザインだ。それだけにオタクの中のオタクのための車ではあるのだが、それがこの車の魅力なのかもしれない。
オートザム AZ-1は広大なアメリカの国土など考慮せずに設計された車だ。全長はわずか3,295mmで、現行ミアータ(日本名: ロードスター)より600mm以上短い。ホイールベースは2,235mmで元NBAのマヌート・ボルの身長よりも短い。
これだけ小さいにもかかわらず、エンジンはドライバーの後部に搭載されているし、ドアは天に向かって開くガルウイングだ。要するにこれは、デロリアン DMC-12のミニチュア版だ。
ミッドシップに搭載されるのはスズキ製の4気筒DOHCターボエンジンで、最高出力は64PSとなる。ターボ付きながら高回転までよく回るエンジンだ。レッドラインは9,000rpmで、そこまで回すと車全体が振動し、リーフブロワーに乗っているような感覚になる。
乗り心地は悪いし、パフォーマンスも不足している。路面の衝撃はまるで身体が車に直結しているがごとく伝わってくる。それに、キャビンのほとんどがガラスで囲まれているため、車内はすぐに熱せられてしまう。
AZ-1はアメリカを走っている普通の車よりも、むしろアメリカで売られているラジコンカーに近い存在かもしれない。現代の車と性格がまったく違うし、だからこそ魅力的だ。今回は3台を比較するテストではないのだが、3台の中で最も個性的で日本を感じさせる車はAZ-1だった。
当時、日本の自動車メーカーはまだ進化の途中だったのだが、当時のアメリカ車、たとえばシボレー・キャバリエやダッジ・シャドウ、フォード・テンポなどと比べると、日本車のほうがはるかに優秀だった。しかし、25年というのは決して短くない歳月だ。
遠くの国から日本車を崇拝して育った私は、大人になって当時の日本車と対面し、裏切られた気分になってしまった。昔、トヨタや日産は個性的で魅力的に思えていたのだが、実際に数時間運転してみると、ごく普通の車であることを理解してしまった。結局、スカイラインもマークIIも当時の日本ではごく普通の車だった。遠くアメリカから見たからこそ、目新しく見えていたのかもしれない。
しかし、小さなオートザム AZ-1は私の心を奪う車だった。アメリカで売られていない車を購入するなら、アメリカにはないような車を選ぶのが正解だろう。
auto2014
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