英国「Auto Express」によるBMW 320dの試乗レポートを日本語で紹介します。
BMW 3シリーズは43年間にわたってDセグメントのベンチマークという地位を守り続けてきた。Dセグメントの高級セダンを購入するとき、まず候補に出てくるのは3シリーズだ。そして過去6世代にわたり、3シリーズはBMWのベストセラーであり続けた。
しかし、新しい時代にBMWの象徴的存在をいかにして刷新すればいいのだろうか。もちろん、BMWには過去の実績があるのだが、G20型3シリーズに与えられた使命は非常に重いものだ。
シャシ、エンジン、インフォテインメントシステム、パッケージング、効率性とあらゆる部分を改良し、さらに革新的技術も加えることで、新型3シリーズは再びライバルに差をつけることに成功している。
新たに採用されたBMWのCLARプラットフォームのおかげで、新型モデルは従来よりも最大55kgの軽量化を果たしている。ボディサイズが拡大し、装備も増加している昨今、新型車が軽量化に成功する例はさほど多くない。
ボディ剛性もおよそ50%向上しているそうだ。それに、3シリーズの強みでもある50:50の前後重量配分もしっかりと継承され、高い走行性能を実現している。
新型3シリーズには全車に革新的なダンパーが装備されている。乗車人数が少なく、荷物も載っていないときにはダンピングレートがソフトになり、しなやかな乗り心地を実現している。
フル乗車時や重い荷物を載せているときはダンピングが重量に対応して変化し、操作性を高める。ただし、足回りが硬くなってもそれほど乗り心地が悪化するわけではない。もう少ししなやかさが欲しいと感じることもあるのだが、それでも十分にソフトだし、なにより剛性の高さは魅力だ。
試乗車には18インチホイールが装備されており、ときに不安定さを感じることもあったのだが、競合車も同様の問題は持っている。舗装の悪いポルトガルの道路でも十分に健闘していたし、なによりその代償として得られた走りのレベルはかなり高かった。
サスペンションは快適性の高さに寄与するだけでなく、俊敏で甘美なコーナリングを実現してくれる。前後ともにトレッドが広いおかげでグリップ性能も高く、ロールもさほど呈さない。
ただし、コンフォートモード時のステアリングはやや軽すぎるように感じ、またスポーツモード時だと人工的に感じられた。電動パワーステアリング採用車の多くに言えることなのだが、やはりフィードバックはそれほど多くない。とはいえ、少なくともステアリングはクイックで扱いやすいので、正確な操作が可能だ。
高いグリップ性能や正確なステアリングのおかげで、新型3シリーズは自信を持って運転することができる。他のBMW車の多くにも言えることなのだが、本当に運転していて楽しい車だ。
一方、エンジンに関しては予想通りだった。試乗車の320dには最高出力190PS、最大トルク40.8kgf·mのBMW製2.0L 4気筒ターボディーゼルエンジンが搭載されていた。踏み込んだときにディーゼル特有の音は聞こえるのだが、従来よりは抑えられているので静粛性は十分に高い。
速いとまでは言えないかもしれないが、最大トルクが幅広い回転域で発揮されるので、動力性能は必要十分だ。0-100km/h加速は8速AT車の場合6.8秒で、ATの変速にも文句の付け所はない。
パドルシフトを用いてマニュアル変速をしても変速は十分に早いのだが、オートモードの変速はかなり優秀なので、わざわざ手動変速などせずにリラックスして運転したほうがいいだろう。追い越し時などに無駄にキックダウンするわけでもなく、与えられた仕事をしっかりとこなしてくれるパワートレインだと感じた。
経済性の高さも強みだ。BMWによると、320d(AT車)の燃費は23.3km/Lで、CO2排出量は112g/kmらしい。十分に競争力のある数字と言えるだろう。
新プラットフォームの採用によりホイールベースが41mm延長したため、リアシートのレッグルームも向上している。リアシートはこのクラスとしては十分に広く、ジャガー XEよりも広い。荷室容量は480Lで旧型と同じなのだが、旧型3シリーズ自体、そもそもクラストップレベルの荷室の広さを誇っていた。
前席の質感は明らかに向上しており(小さな5シリーズのように感じた)、ダッシュボードには先進技術がふんだんに使われている。iDriveは元から優れたインターフェイスだったのだが、新型に採用されたOS 7.0はさらなる進化を遂げている。
オプションのライブ・コックピット・プロフェッショナルを選択すると12.3インチのメーターディスプレイと10.25インチのセンターディスプレイが装備される。後者はタッチパネル操作とおなじみのダイヤル操作のどちらも可能だ。
ボイスコマンド(インテリジェント・パーソナル・アシスタント)は自然な会話にもしっかり反応してくれるようになり、Amazon AlexaやSiriを使うような感覚で室温設定やナビ設定、ラジオ選局、音量調節などを行うことができる。
Apple CarPlayも標準装備されるのだが、少なくとも現時点ではAndroid Autoは装備されない。
無線でのソフトウェアアップデートも可能となっており、可能な限り最新のOSを使い続けることができる。また、オプションのデジタルキーを装備すれば自分のスマートフォンを車の鍵として使うこともできる。
装備内容は非常に充実しており、ナビやアダプティブLEDライト、シートヒーター付きレザーシート、前後パーキングセンサー、リアカメラ、クルーズコントロールはすべて標準装備となる。
価格は旧型より約2,000ポンド値上がりしており、今回試乗したATの320d Sportは36,700ポンドとなる。ただ、装備内容は増えているし、先進装備も満載されており、静粛性や室内空間も向上している。新型3シリーズもDセグメントのベンチマークとしての地位を堅持できそうだ。