オーストラリア「Drive」による新型 トヨタ・ハイエースの試乗レポートを日本語で紹介します。


Hiace

オーストラリア市場ではこれまでに累計335,000台ものハイエースが販売された。従来型ハイエースは設計が古くなっていたし、競合車も増えてきているのだが、今でもハイエースはクラス最高の売り上げを保ち続けている。

安全基準が厳しくなる中、新型ハイエースは真四角なデザインをやめ、セミキャブオーバーへと変身した。これにより、安全性だけでなく乗員の快適性も向上している。

新型ハイエースには3種類のモデル(ロング、スーパーロング、コミューター)が設定され、エンジンは2種類、トランスミッションも2種類設定される。

価格はV6ガソリンエンジン+6速MTを搭載するLWBモデルが38,640豪ドルからとなり、ATを選択するとベンチレーテッドリアディスクブレーキが標準装備となり、価格は2,000豪ドル上昇する。また、ディーゼルエンジンは3,500豪ドル高い。最上級グレードのコミューターGL(全車ディーゼル+AT)の価格は70,140豪ドルとかなり高価だ。

ディーゼル車にはハイラックスと共通の2.8L 4気筒ターボディーゼルエンジンが搭載される。最高出力は177PS/3,400rpmで、最大トルクはAT車が45.9kgf·m/1,600-2,400rpm、MT車が42.8kgf·m/1,400-2,600rpmとなる。ただし、マイクロバスのコミューター(全車AT)のみエンジンスペックが異なり、最高出力163PS/3,600rpm、最大トルク42.8kgf·m/1,600-2,200rpmとなる。

ディーゼル車の燃費はAT車が11.9~12.2km/Lで、MT車が13.3km/Lとなる。トランスミッションはAT、MTいずれも6速だ。

ガソリンエンジンはクルーガーのユニットと基本設計を同じくした新設計の3.5L 自然吸気V6エンジンだ。最高出力281PS/6,000rpm、最大トルク35.8kgf·m/4,600rpmを発揮し、ディーゼル同様、6速MTおよび6速ATと組み合わせられる。

ガソリン車の燃費はMT車が8.1km/Lで、AT車が8.3km/Lとなる。燃料タンク容量は全車70Lだ。

rear

新型ハイエースの安全性は飛躍的に向上している。ANCAPでは五つ星を獲得しており、全車に歩行者・自転車検知機能付きの自動ブレーキが標準装備される。

外見ですぐに目につくのはやはりフロントのボンネット部分だ。これにより、街中での存在感も大幅に増している。

LWBの全長は従来より570mm延長して5,265mmとなっており、ホイールベースは640mm延長して3,210mmとなっている。トレッドはフロントが200mm、リアが205mm増加していずれも1,670mmとなり、全幅は255mm増加して1,950mmとなっている。実際に新旧並べてみても、大きさの違いは明らかだ。

SLWBは全長が535mm、ホイールベースが750mm延長しており、全幅も70mm増加している。荷室容量も増加しており、LWBの荷室容量は6,200L、SLWBの荷室容量は9,300Lとなっている。

運転席に乗り込むと、現代のバンに要求される装備はすべて揃っている。全車に7.0インチのタッチスクリーンナビが装備されており、DAB+デジタルラジオやUSBポート(バンは1個、コミューターGLは6個)も用意されている。

現時点ではスマートフォンとの連携はできないのだが、2019年内にはApple CarPlayおよびAndroid Autoに対応する予定だそうだ。

メーター内には4.2インチのカラーディスプレイが装備され、カメラにより認識された制限速度もそこに表示される。クルーズコントロールやパワーウインドウ、両側スライドドア、前後パーキングセンサー、リアビューカメラも標準装備される。

グレードによってはデジタルルームミラーも装備される。これによりルームミラーにカメラからの映像が映し出されるため、荷物が満載になっている状態でもちゃんと後ろを確認することができる。

interior

開発にあたってはオーストラリア国内でのテストも過去5年間にわたって行われたそうだ。室内の天井部分にはしごを搭載できるようになったのもオーストラリアでの開発の成果だ。これにより、わざわざ屋根の上まで登ってはしごを載せ、ストラップで固定する手間がなくなる。

新型ハイエースに乗って最も驚いたのはその走りだった。従来のハイエースはドライビングポジションが非常に不格好で、ドライバーはエンジンの上に座らなければならず、脚の間にステアリングトンネルを挟んで運転しなければならなかった。

新型ハイエースはフロントにエンジンを搭載することでこういった問題点を排除し、着座位置が低くなり、乗り降りもしやすくなった。ステアリングのアシストは依然として油圧式なのだが、従来よりもずっと操作しやすく、また応答も正確になっている。

前輪の最大切れ角が45度なので、最小回転半径はLWBが5.5m、SLWBおよびコミューターは6.4mと十分に抑えられている。

実際に走り出してみると、静粛性が明らかに改善していることにすぐ気付いた。特にガソリンV6エンジンを搭載するモデルの静粛性はかなり高かった。

今回はAT車とMT車の両方に試乗したのだが、いずれも優秀で、エンジンのトルクをしっかりと活用してくれる。MT車はクラッチが軽く、変速時のレブマッチング機能も付いているため、気張ることなく運転することができる。

AT車にはマニュアルモードが付いており、特にガソリンV6エンジンとの組み合わせでは活躍してくれる。ガソリン車の最大トルク発生回転数は4,600rpmとそれなりに高いのだが、音も良いし、運転していて驚くほど楽しかった。

残念ながら最大牽引能力は旧型モデルとほとんど変わっておらず、モデルによって1,500~1,900kgとなる。また、観音開きドア仕様も設定されない。フォークリフトを使って荷物を載せる場合、基本的にサイドドアからの積み下ろししかできないため、使い方によっては不便かもしれない。

Commuter

今回は都市部と郊外部の両方で試乗を行った。走りは非常に優秀で、車幅が増加したおかげで走行安定性も向上していた。

ステアフィールもブレーキペダルフィールも良く、ディーゼル車に装備されるアイドリングストップ機能もほとんどラグなく作動していた。もちろん、この機能をオフにするスイッチもちゃんと用意されている。

前方視界、側方視界は良好だし、デジタルルームミラーも運転を助けてくれた。デジタルルームミラーは標準装備されないグレードにも1,000豪ドルのパッケージオプションとして装備することができる。このパッケージを選択するとミラーが自動防眩となり、カラードドアミラーおよびバンパー、ハロゲンフォグランプ、メッキ加飾が追加装備される。

新型ハイエースは非常に優秀なバンだ。なにより安全性の向上を重視し、トヨタが本気で良い商用車を作ろうとしたことが伝わってきた。走行性能は非常に高いし、装備内容も充実しており、オーストラリア市場のことを考慮したアクセサリーも用意されている。

安全性を重視する事業者なら、是非ともハイエースを検討するべきだろう。どんな企業であろうと、安全性は決して妥協するべきではない要素だ。

トヨタによると、現在観音開き仕様の追加も検討しているそうだ。もしこれがどうしても必要なら、もう少し待つ価値もあるかもしれない。しかし、そうでないなら、今すぐにでもハイエースの検討を始めるべきだろう。新型ハイエースは従来とはまったく違う車に仕上がっている。